映画『呪怨2』(ビデオ版) ――伽椰子へのリアクションが登場

概要

呪怨2 [DVD]

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情報
紹介

2000年に清水崇監督が手掛けた、劇場版の原点となるVシネマ呪怨」シリーズの第2作。前作で血なまぐさい惨劇の舞台となった佐伯家は、事故物件として処理され、怨念は消えたかに見えた。しかし、新しい入居者に再び伽椰子の呪いが降り掛かる。

解説

伽椰子へのリアクションが登場

注意:以下、ネタバレあり)

 劇場版と独立したビデオ版第2作。本編の前半部分に、前作ビデオ版『呪怨』のダイジェストが、約30分程度、収録されている*1

 ビデオ版と劇場版では、物語が別に展開するだけでなく、撮影条件も違う。劇場版のほうが、フィルムの粒状感によって、商業映画らしい質感に仕上がっていた。だが、ビデオ版の平板な映像にも、疑似ドキュメンタリー的*2な触感がある。

 本作は、続編ならではの工夫がある。それは、何も知らずにばったり出会って殺されるパターンだけではなく、伽椰子に対する登場人物の反応を描いたことだ。

 前作では佐伯家の事件が物語の主軸だったが、今作は鈴木家の事件が軸になる。

 あるとき、霊感のある鈴木響子が、日本酒の味から、佐伯家の霊障を感知した。兄・達也はそれに対して半信半疑だ。父・泰二は「もってかれっぞ」と不安を煽る。こうしてストーリーに変化をつけて、飽きさせない工夫をしているのだ。

 しかし、欲を言えば、呪いを掛けられた人物の生死が分かれたほうが、どの人物が生き残るか予想する楽しみが生まれる。現段階の『呪怨』だと、時系列は複雑でも、どのみち佐伯家に関われば、全員死ぬのではないか、という予想が立つ。

 『呪怨』には、助かるルールがない*3。そのため、助かるかどうかのサスペンスがない。とくに続編に入って、なんでもありの世界になっている。たとえば、鈴木家の実家の両親は、佐伯家に立ち入ってないのに、呪われる理由が分からない。

 また、学校など家以外の場所に、伽椰子が出現することに違和感*4を覚えた。やはり、殺害のトラウマを反復する場所としては、家が最もふさわしい。

 それから、作中、伽椰子が同時に複数出現するシーンがある。そこには、パニック映画的な驚きはある。ただ、幽霊を含めた人物が複数化すると、視聴者が感情移入しにくい、というよりそれ以前に人格を想定しにくいという問題*5が生じる。

 しかしまあ、『呪怨』とは幽霊屋敷であり、幽霊の大盛り定食的な安定感がウリであった。今回も、出し惜しみなく伽椰子が出てくる。天井に出たり、椅子の下に出たり、強引に出現するので、やはり驚いてしまう。

 伽椰子がどのようなシチュエーションで出てくるか、想像しながら見ると、より楽しめるかもしれない。

 なお、今回も時系列をシャッフルしたオムニバス構成になっている。参考のため、時系列順に整列したストーリーを載せておく。

物語(ネタバレ)

(時系列順にできごとを再構成しています。本編視聴後の閲覧を推奨します)

 不動産屋・鈴木達也は、妻・鈴木しのぶと離婚し、子・鈴木信之を引き取った。そして、小林夫妻が住んでいた集合住宅の部屋へ引っ越す。

 いっぽう、達也が働く鈴木不動産では、元村上家(旧・佐伯家)の物件を公開。過去の事件のこともあって達也は、霊感がある妹・鈴木響子を、旧・佐伯家まで連れて行く。響子は、入居者に清酒を飲ませて、霊障をテストするよう忠告した。

 だが、達也は、旧・佐伯家を下見に来た北田夫妻に、いちおう清酒は飲ませたものの、妻の反応を無視して、物件を売却してしまう。

 達也から北田一家の入居を知らされた響子は、旧・佐伯家(現・北田家)へと赴く。そして、友人の佐藤から、旧・佐伯家と旧・小林家での事件を聞いた。

 響子は、鈴木不動産の事務員から住所を聞き、鈴木家(旧・小林家)へ向かう。鈴木家では、信之の異変と、佐伯剛雄が小林真奈美を殺害した光景を目撃。響子は病院に入院した。

 いっぽう、北田家(旧・佐伯家)に、佐伯俊雄の絵と佐伯伽椰子の日記が届く。それを見た妻・北田良美は、夫・北田洋をフライパンで殴打。洋は蒸発扱いに。

 響子は、信之を連れて実家に帰ってきた。しかし、父・鈴木泰二と母・鈴木ふみが死亡。達也の元妻・しのぶが死ぬ。達也は、北田家を訪れた後で行方知れずとなる。

 それ以降、旧・佐伯家に関係した人物は、次々と死亡か行方不明になる。

 村上崇が入院先から失踪。良美が行方を消す。北田家を捜査していた吉川刑事が辞職。吉川夫妻が自宅で死ぬ。神尾、飯塚両刑事が、警察署内で死亡。同行していた婦警は入院。そして、信之は学校で消息を絶つ。

 数年後、女子高生・遠山いづみは、友人の千晶、沙織、綾乃と共に、旧・佐伯家で胆だめしをする。だが、友人たち3人は、天井裏で消えてしまうのだった……*6

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*1:1作目から見ている者にとっては不要だった。2作目から見始める視聴者には便利かもしれないが、そのような視聴習慣がどれくらい普及しているかは分からない

*2:映画らしい画面より、一般に普及したビデオカメラの映像に近いほうが、身近なリアリティはある

*3:助かった人物はいるのだろうが、その理由が偶然以外にあるのかが分からない

*4:前作のビデオ版『呪怨』で、俊雄が学校に出現するが、俊雄は学校に通う子供なので、そのぶん違和感は減る

*5:ただし、「ドッペルゲンガー」というのもあるし、人物の複数化への不安自体は、ホラーの題材になる

*6:劇場版『呪怨』へとつながる