映画『呪怨 黒い少女』 ――人と霊との戦い
概要
- 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
- 発売日: 2009/09/21
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情報
紹介
伝説の恐怖ふたたび! あの「呪怨」が、さらに恐ろしさを増して復活!!
口コミで「とにかく怖い…!」「一生のトラウマになった!」と、その問答無用の恐怖描写で評判になり、今や伝説と化したビデオ版「呪怨」。その製作から10周年となる今年、「呪怨」の生みの親である清水崇×一瀬隆重の手によって、原点の恐怖に回帰した新たな「呪怨」が誕生した!両氏の“呪い”を受け継いだ2本の映画「呪怨 白い老女」「呪怨 黒い少女」がそれだ。10年もの間、日本のみならず全世界の人々に“未だかつて経験したことのないケタ違いの恐怖”を体感させてきたホラー映画の最高傑作「呪怨」が、さらに恐ろしさを増して復活した。
2009年、「呪怨」がふたたび伝説の恐怖を蘇らせ、新たなる戦慄を呼び起こす・・・・・!!
物語(あらすじ)
(注意:以下、ネタバレあり)
産まれてくることのできなかった者の怨み――。それは想像を絶する“怒り”となって人々を呪い殺す・・・。看護師の裕子(加護亜依)は、芙季絵という少女の担当を任されてから、奇妙な体験をするようになる。検査の結果、芙季絵の体内に「嚢腫」が発見される。生まれてくることのできなかった者の怨みが少女を蝕み、やがて周囲の人々を呪っていく。裕子の隣人は黒い少女によって捉えられ、芙季絵の父は殺人を犯し、狂っていく。芙季絵の母・季和子は霊力を持つ妹・真理子にすがり、除霊は成功したかに思えた。しかし、それは最悪の「呪怨」の始まりだった……。
解説
人と霊との戦い
シリーズの「呪い続けて10周年」を記念して、『呪怨 白い老女』と同時上映された。俊雄はカメオ出演するが、伽椰子は登場しない、外伝的な位置付けの作品。
ちなみに、「黒い少女」というキャラクターの元ネタは、『怪談新耳袋 ふたりぼっち編』「ふたりぼっち」から。この時点ですでに、奇声を発する幼女というモチーフが登場している。この話の監督も、本作と同じ安里麻里。
注目の出演者は、元「モーニング娘。」の加護亜依。看護士の裕子を演じたが、自然体の演技で違和感がない。彼女はこれが映画初出演というわけではないが、映画女優として活躍する可能性を感じた。
ストーリーを見ると、今までのシリーズになかった「人と霊との戦い」という、サイキック・スリラー的要素を持たせている。霊に対抗できる霊能者が出ると、話の前提が覆ってしまう危うさはあるが、終盤の除霊シーンは盛り上がった。
芙季絵が倒れてけいれんする冒頭の無音シーンや、芙季絵が奇声をあげるシーンには、やはり女性的な感覚が見られる。どのあたりが女性的なのかといえば、まず何が起こっているのか分からず、「状況を想像する恐怖」を描いたところ。
これは、本シリーズにあまり見られなかった表現だ。逆に言うと、「伽椰子がとつぜん出現する」というパターンは、一目で分かりやすいとも言える。
また、「真実を言葉で伝えられない」という恐怖は、『白』で連呼される「すぐ行きます」のように、「言葉が真実になってしまう」*1という男性的な恐怖とは対照的。
ストーリー中、壁の音のシーンは怖いが、前作『呪怨 2』にも同じモチーフがあったので、もうひとひねり欲しかった。いっぽう、『ブラックジャック』にも出てくる「奇形嚢腫」の話は、寄生やボディスナッチの恐怖を描く。
ただ、「転生」というよく似たモチーフが『呪怨 2』にもあったので、方向性の違いを明確化して欲しい。たとえば、伽椰子は赤の他人だが、こちらは親族だという点に着目し、たんに憎しみだけでなく愛憎を描くとか。
もっと具体的に言うと、水子霊が芙季絵、もしくは季和子に愛情を寄せているが、何かのきっかけで反転して、一気に憎悪に変わるだとか。相対的に『白い老女』よりも、精神的な恐怖を描いているので、そのように心理を描写する手はあると思う。
画面構成を見ると、倒れた芙季絵の上目遣いのクローズアップが、鮮烈で非常に良いショットだ。構図を工夫しただけで、CGや特撮よりも印象に残り、かつ、それらを使わないことで、嘘くささを感じさせない。
シリーズ初の女性監督ということで、「白い老女」以上に新鮮な印象がある。シリーズに新風を吹き込んだ。
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*1:まあ、『黒』にも、「女を殺す」という予言があるが