映画『呪怨 白い老女』 ――人が人を殺す恐怖

概要

呪怨 白い老女 [DVD]

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情報
紹介

【解説】
伝説の恐怖ふたたび! あの「呪怨」が、さらに恐ろしさを増して復活!!
口コミで「とにかく怖い…!」「一生のトラウマになった!」と、その問答無用の恐怖描写で評判になり、今や伝説と化したビデオ版「呪怨」。その製作から10周年となる今年、「呪怨」の生みの親である清水崇×一瀬隆重の手によって、原点の恐怖に回帰した新たな「呪怨」が誕生した!両氏の“呪い”を受け継いだ2本の映画「呪怨 白い老女」「呪怨 黒い少女」がそれだ。10年もの間、日本のみならず全世界の人々に“未だかつて経験したことのないケタ違いの恐怖”を体感させてきたホラー映画の最高傑作「呪怨」が、さらに恐ろしさを増して復活した。
2009年、「呪怨」がふたたび伝説の恐怖を蘇らせ、新たなる戦慄を呼び起こす・・・・・!!

物語(あらすじ)

注意:以下、ネタバレあり)

【ストーリー】
一家惨殺事件。首を切られ惨殺された、かつての親友・・・。少女が絶望の中で見たものとは・・・。
ある家で、司法試験に落ちた息子が家族5人を次々と惨殺。自らも首を吊って死んだ。死ぬ間際に彼が録音したカセットテープには、「行きます。すぐ行きます・・」という彼の声とともに、少女の不気味な声が録音されていた。それは、今は高校に通うあかね(南明奈)が小学生の頃に親友だった未来という少女の声だった。未来は一家惨殺の被害者だったのだ。そして、幼い頃から霊感が強かったあかねの前に、黄色い帽子をかぶり赤いランドセルを背負った未来が姿を現す……。

解説

人が人を殺す恐怖

 シリーズの「呪い続けて10周年」を記念して、『呪怨 黒い少女』と同時上映された。俊雄はカメオ出演するが、伽椰子は登場しない、外伝的な位置付けの作品。

 ちなみに、「白い老女」というキャラクターの元ネタは、『怪談新耳袋 劇場版』「姿見」から。この話の監督も、本作と同じ三宅隆太。「姿見」の時点ですでに、バスケットボールを持っている。

 予告編の映像に「白と黒、どっちが怖い?」といったコピーがある。「赤いきつね緑のたぬき」のようなもので、どちらが怖いかは好みだろう。ただ、『白』が男性的、『黒』が女性的な恐怖、という違いは見られる。

 すなわち、『白』のほうは男が凶器で殺し、『黒』のほうは女が憑依する*1、という恐怖を描く。『白』は「人が人を殺す」という、サイコ・スリラー的な恐怖を前面に押し出してきたところが、今までのシリーズと違った新味だ。

 上映時間が1時間と、今までの劇場版より、コンパクトにまとまっている。物足りないかとも思ったが、『呪怨』シリーズは複雑な謎解きをしないので、これくらいの長さのほうが、飽きずに見られるとも感じた。

 また、やはり時系列を混ぜるオムニバス構成だが、最後まで見るとスッキリ謎が解ける。先を読みやすいということでもあるが、相対的に『黒』より分かりやすい。

 終盤の連続殺人は迫力があった。直接カメラで殺害する現場を映さないものの、殺人犯が被害者を残虐に殺していく。その殺人犯は、何を考えているか分からない感じで、殺人マシーンのように淡々と殺害を実行する。

 ただ、あえて欲を言えば、せっかく「人が人を殺す」展開にしたのなら、殺人犯に負の感情が蓄積していくプロセスがもっと欲しい。そうすれば、たとえば『シャイニング』のような、サイコ・スリラー的恐怖がより増すだろう。

 長く続いたシリーズだが、新監督が新風を吹き込んだ。本作冒頭で「手が離せない」という言葉がループするシーンは、新鮮な印象だった。

 それも含めて、『呪怨』の恐怖演出は時間軸の操作が多い。そこで、たとえば後悔した行為は繰り返されるといったように、呪怨時空に関するルールが欲しくなる。

 そういうわけで、長く続いている本シリーズだが、世界観を構築する部分では、まだまだ開拓の余地があると思ったのだ。

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*1:ただ、霊が打撃で殺しているが