映画『呪怨2』(劇場版) ――時間を超えた呪い

概要

情報
紹介

かつて夫に妻・伽椰子が惨殺されたり、そこに住んだ人々に次々と不幸が起きた家。その噂をききつけたテレビクルーが、この“幽霊屋敷”にホラーの女王と呼ばれる女優・京子を連れて取材へ。そんなクルーたちにさまざまな呪いがふりかかっていく……。
天井から逆さになって登場するなど、前作よりもさらにパワーアップした伽椰子の怨霊が撒き散らす悲劇が描かれる。前作はお化け屋敷らしい“脅かし”の恐怖が際立っていたが、今回は女性らしいネチネチとした恐怖感がいっぱいなのがポイント。特に京子が伽椰子の生まれ変わりをはらむくだりがかなり陰湿だ。それと面白いのは前作でも描かれたSF的タイムラグ。未来と現在が伽椰子の呪いで入れ替えになったりするのだが、そのアイディアが今回は十二分に生かされているゾ!(横森 文)

解説

時間を超えた呪い

注意:以下、ネタバレあり)

 本作で最も上手いと思ったのは、朋香の部屋の壁を叩く音の正体、というストーリーである。音だけではあるが、時間を超えた世界を設定する必然性があるので、これには感心した。

 それに比べるとやや地味だが、コピー機のシーンでも、コマ送りという形でズレた時間を描いている。

 もちろん、時系列を前後するオムニバス構成は、第1作のビデオ版『呪怨』からずっと採用されているし、前作の劇場版『呪怨』でも、タイムスリップは描かれていた。空間を固定する代わりに、時間を操作するという意識は、シリーズを通して一貫している。

 だが、前作での時間移動が表現したものは、「怖さ」というより「不思議さ」だった。たしかに、小学生の娘が成長した姿を見てしまうのは不思議だが、それが直接的な怖さにつながるわけでもない。

 それに対して、今回の壁の音は、サスペンス的にもホラー的にも、有効に機能している。

 いっぽう、子宮を借りて転生するモチーフも興味深い。生まれ変わるというのも、寿命をリセットする、一種の時間的操作と捉えられるからだ。

 また、伽椰子の呪いが時間を超えることの理由付けには、過去への後悔(俊介への執着)を据えるといいと思う。

 輪廻といえば『らせん』にもあるモチーフではあるが、それぞれの物語での位置付けは異なる。『らせん』の遺伝子へのSF的な興味に対して、本作ではあくまでホラー的な興味から描いている。

 というのも、伽椰子は貞子と違って既婚であり、生前に俊雄を産んでいる。そして、俊雄の出生を巡る疑惑が、剛雄が自らを殺す理由になっている。だから、伽椰子の死の原因となった、妊娠・出産の反復を通じて復活することに意味がある。

 「呪怨」とは呪いの連鎖だとしておきながらも、本作までの「呪怨」シリーズは、ほとんど伽椰子*1の呪いになっている。しかし、伽椰子をメインにするなら、出産は「連鎖」の表現にとって、適切なモチーフなのだ。

物語(ネタバレ)

(時系列順にできごとを再構成しています。本編視聴後の閲覧を推奨します)

 テレビ番組『心霊特番』のレポータを務めるタレント・三浦朋香は、自宅で同番組の台本を読んでいたときに、壁から聞こえる不審な物音に気付く。

 そして、首を吊った男の幻を見てしまう。以降、毎晩0時27分になると、壁の音が聞こえてくるようになった。

 『心霊特番』の撮影日、「ホラー・クイーン」の異名を持つ女優・原瀬京子は、テレビ局員たちとともに、旧・佐伯家を訪れる。

 番組の収録中、スタッフ以外の声が、収録された音声に混入していると発覚した。また、テレビディレクター・大国圭介は、佐伯伽椰子の日記を発見する。

 その夜、朋香は自宅で、首を吊って死んでいた恋人・山下典孝を発見。その後、朋香も同じ首吊りで死ぬ。

 夜の首都高速では、京子と彼女の婚約者・石倉将志が乗った自動車が、事故を起こす。将志は意識不明の重体になる。京子は子供を妊娠していた。

 いっぽう、メイク担当・大林恵が、TV局のメイク室から失踪する。圭介は、朋香、カメラ担当・渡辺、音響担当・相馬と連絡を取ろうとするが、行方が分からない。

 その後、京子は、映画の撮影で公園に来る。映画のエキストラとして、女子高生の千春、宏美が参加。撮影終了後、千春は公園で死ぬ。

 それから病院に寄ると、子供は流産しておらず順調に育っている、と京子は医師に告げられた。その夜、京子の母・原瀬亜紀が、自宅内で死んだ。

 いっぽう、宏美は、千春らの死亡や行方不明について調べ、佐伯家の事件に行き当たった。それから悪夢を見始める。

 京子が将志を見舞いに病院へ行ったとき、圭介から関係者が消息を絶ったと知らされる。また、行方を消していた恵が、京子の家に現れる。

 その翌日、京子は旧・佐伯家で千春を目撃。宏美も千春を目撃したが逃亡。いっぽう、圭介は京子を見つけた。

 京子が病院で出産。医師たち、圭介、将志は行方不明に。翌日に将志の母・薫が、後に将志の父・和正が、自殺した。

 その後、京子は、自ら産んだ子(伽椰子)に、歩道橋から突き落とされた。子供は、転落した京子を置いたまま、いずこかへと去っていくのだった……。

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*1:俊雄や、いづみの友達の女子高生たちなど、幽霊は他にも出るが