映画『ひとりかくれんぼ 新劇場版』 ――ネット時代の都市伝説

概要

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情報
紹介

 「現代のコックリさん」と呼ばれる都市伝説「ひとりかくれんぼ」を題材とした、ホラー・オリジナルビデオの劇場版第2弾。女子高生・栞(しおり)が、失踪した兄を探すうち、降霊術「ひとりかくれんぼ」が起こす怪奇現象に巻き込まれていく。アイドルグループ「AKB48」のメンバー・増田有華が初主演を務めた。監督は、前作『ひとりかくれんぼ 劇場版』でもメガホンをとった山田雅史。

物語(あらすじ)

注意:以下、ネタバレあり)

 ある朝、女子高生・栞(増田有華)は、通学定期をなくしたことに気づく。翌日、栞の通う高校では、降霊術「ひとりかくれんぼ」を誰かがしていたという噂が。

 その日、アルバイトのために、母の見舞いに行けなくなる栞。そこで、兄・元也に代わりに行ってもらおうと電話するが、連絡がつかない。

 不審に思う栞は、元也が住むアパートを訪ねるが、姿が見あたらない。栞が部屋のパソコンを調べると、「ひとりかくれんぼ」に関するネット掲示板を見つける。

 その「ひとりかくれんぼ」について、アルバイト先のマンガ喫茶で調べる栞。そんな栞のもとに、元也の幼なじみ・白石が訪れ、ともに元也を探すと約束した。だが、「河西元也、白石龍二……呪い殺す」と書かれたネット掲示板が見つかる。

 そして、栞と白石は奇怪な現象に巻き込まれていくのだった……。

解説

ネット時代の都市伝説

 主人公の女子高生・栞を演じるAKB48増田有華。彼女が本作の華になっているだけでなく、演技も申し分ない。彼女は演技力も歌唱力*1も新人離れしている。

 ホラーだから演技に感情の機微は求められず、ひたすら怖がればいいというのはある。しかし、演技で気になったのは、むしろ脇役のほうだった。アイドル映画だと、主演の演技力のなさを脇役が脇を固めてカバーするということはよくある。が、本作は逆で、増田有華におんぶにだっこである。

 演出はしっかりしている。少なくとも、アイドル映画だからホラー面はグダグダ、ということはなかった。とくに冒頭は、緊張感があって優れた導入だと思う。また、飛び降りのシーンは、妙な迫力があった。画面の端で落ちる構図は、予測できない事件が突然起きた、という印象を与える。

 それは、Jホラーの核である、実話怪談や疑似ドキュメンタリーから来た手法だろう。心霊写真において、霊は端に映っている。事件映像では、犯人や被害者は端に映っている。つまり、カメラの視点から予測できないと感じると、映像の衝撃性が増す。

 ただ、全体的に暗い感じなので、明るいシーンを入れて、緩急をつけてもよかった。生と死や日常と非日常の落差を出すためにも、アイドル映画としての価値を出すためにも、主人公の栞が笑顔でいるシーンが、少しくらいあってもいいと思う。

 「ひとりかくれんぼ」というのは、「現代のコックリさん」と呼ばれる新しい都市伝説だ。近年、ネットで流行しているということで、作中にも掲示板が登場していた。ネットやケータイはJホラーによく出てくる。科学文明の利器だからそぐわない気もするが、通信相手の匿名性はホラーにとって利点である。

 しかし、タイトルにもあるこの「ひとりかくれんぼ」が、冒頭のシーンに出てくるくらいなので、もっと中心にすえて欲しかった。途中から、白い服に黒い髪の幽霊が追って来る話になっている。これだと、貞子や伽椰子など他のJホラーの幽霊と、ビジュアルで差をつけにくい。

 いや、降霊術という設定だから、そういう展開でも辻褄は合っているかもしれない。だが、登場人物が「ひとりかくれんぼ」をして、発生した怪奇現象から逃げたり隠れたりする、という筋書きを期待していた。

 これが回を重ねているなら、マンネリを避けるのも分かるが、まだ『新劇場版』というタイトルなのだから、「ひとりかくれんぼ」に焦点を絞って欲しかった。映画は尺が決まっているので、脚本でいかに話の要点を絞り込むかが重要になる。

 逆に言うと、この設定はまだ絞り尽くされていない。「人形」「かくれんぼ」というモチーフも、素朴なようで意外と新鮮だった。まだまだ見せ方の余地はあると思うので、今後の続編にも期待しよう。

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*1:TVアニメ『一騎当千 XTREME XECUTOR』オープニングテーマ「Stargazer(スターゲイザー)」を歌っている