ツンデレのディレンマ(ツンディレ)

ヒロインデレ ヒロインツン
主人公デレ
主人公ツン


主人公とヒロインが「ツン」か「デレ」の行動を選択すると、
四通りの結果になる。それを上図のように行列で表した。
主人公もヒロインも、双方ツンツンしているDよりは、
双方デレデレしているAが本当は良い。だが、どちらかが裏切ると、
Cは主人公に、Bはヒロインに大変不都合だ。そこでDで均衡する。


具体的な例を想定しよう。
主人公もヒロインもプライドが高い/恋愛に対して臆病だ。
すると、カップル行動チャンスで本当はデレデレしたいが、
片方が「お前(あなた)がどうしてもって言うんなら」と
自分だけツンでいようとするので、「こっちこそ」となり、
結局はツンツンで安定する。このパターンはよく見かける。


この構造を「ツンデレのディレンマ」と定式化し、
(元ネタはゲーム理論の「囚人のジレンマ」)
この状態のツンデレを他と区別するために「ツンディレ」と呼ぶ。
ツンデレ」のエンジンは「表ツン・裏デレ」であり、
更にその最深部のコアが「ツンディレ」にほかならない。


ここから興味深いことがいくつか分かる。
まずツンディレが成立しやすい原則から。
1.主人公と同年代で対等な立場
2.思春期くらいの年齢(中高生)
3.プライドが高いか恋愛に臆病


ロリ妹や、年上教師との間でツンディレは起きにくい。
また淫乱・誘惑型の女性とも起きにくい。
そして主人公側も同じ条件が要求される。
だから弱みを握る陵辱物はツンディレに向かない。


ツンディレには主人公側の行動も影響する、というのは重要だ。
双方が対称的な存在であるとき、ディレンマが成立するからだ。
つよきす』の主人公レオはエロゲの主人公だが髪が長くない。
脇役の男の書き込みも含めて、確かに必要なことかもしれない。


らんまの乱馬とあかね、エヴァのシンジとアスカ、ラブひなの景太郎となる。
しかも、あかねは東風、アスカは加持、なるは瀬田という年上に憧れている。
また赤松はネギまの明日菜で同パターン(年上好きツンデレ)を使っている。
年上は喧嘩しないので、ディレンマにならず、ツンディレ的には理想なのだ。
ちなみに「不器用」「暴力」という特徴は、ディレンマの構成に向いている。
またネギは教師だが同時に「お子様」なので、パワーバランスは取れている。


ツンディレを軸に「ツン→デレ」も理解することができる。
つまり、例えばロボ娘なら感情がないので、上図Aを指向しない。
しかし、感情が芽生えた後は、ツンディレの図式に移行する。
これは一般的に「ツン→ツン・デレ」の図式である。


更に「ツンディレ」の導入によるツンデレ論の展望を大まかに述べておく。
まず、「二人とも好きなら告白すればいいじゃん。
でもそれだと終わっちゃうから、やっぱお話なんだ(大意)」(『サルまん』など)
という常識も実は違うという、驚愕の結果になる。


ツンデレはシミュレーションだ。現実/虚構ではなく、現実/モデルで理解しよう。
現実では見ないからといって、リアリティがないとは限らない。
真空中なら鉄球と羽が同時に落ちるというのは、見慣れないが、現実の一部である。
例えば米ソは史上最凶のツンデレ(ツンディレ)カップルである。


次に、囚人のジレンマなどのゲーム理論的限定状況は、
ポストドラゴンボールの、能力より戦略のマンガでよく見る。
意外だが実は「カイジ」「レベルE」「デスノート」などとツンデレは通底している。
大きな物語以後の個と全体のパラドックスは、一つの大きな問題系である。


また、「あ、あんたのために〜してるんじゃないからね!」というのは、
言表の内容のレベルでは否定、行為のレベルでは肯定(見え見え)という、
ダブルバインドだと考える。自らのディレンマを体現している表現なのだ。
それに、ディレンマ=葛藤は物語一般の駆動力だから、潰しが効きそうだ。


これらは大げさに見えるかもしれないが、ツンデレという名前は最近でも、
それが事後的に指示している作品群自体は、かなり昔から存在している。
ツンデレの問題系は意外とでかいのだ。だから取り上げているわけだが、
ツンデレという視点で整理すると、色々面白い事が見えてきそうである。