キャラクターは確定記述に還元できない

この「流動性」が何かを考えていくと、可能世界論になる。
固有名は確定記述に還元できないという記述理論批判がある。
同様に、キャラクターは確定記述に還元できないのではないか。


例えば「綾波」を綾波らしい属性(無口など)で記述したとして、
そのような特徴を持たない綾波を想定できるからだ。しかもこの場合、
エヴァの終わり近くで、実際に「転校生」という形で実現している。


固有名とキャラクターは、いずれも可能世界を要請する。
無意識の領域を持つことで、欲望を喚起する対象になりうるのだ。
ただし、固有名やキャラクターAがn個の記述で構成されているとして、
その全てをいっぺんに変えてしまうことは現実的にできないだろう。


それは「綾波」は「サザエ」のキャラクターの一つだ、という位無理がある。
ただし、Aの記述を残しておけば、「サザエ+綾波」というキャラクターは可能だ。
その考えを更に進めていくと、「クラスター(記述群)」の話になるだろう。


キャラクターの記述は等価ではなくて、いかにもそのキャラクターらしい
特徴がある。具体的にはよく模倣されるものだ。(シンジなら「逃げちゃダメだ」)
そのようなプロトタイプ的な特徴は、ここでの定義では「キャラ」になる。


キャラクターは複数の登場人物を単数にまとめている単位だ。
キャラも複数のキャラクターをまとめられるが、同じではない。
一つのキャラクターが複数のキャラで構成される場合があるからだ。


キャラクターは固有名にほかならないが、キャラは主体の単位ではなくて、
複数の記述群なのだ。これを「キャラスター」とでも名づけておこう。
これは、「○○のキャラ入ってる」というように、無意識の内に流通できる。