映画『山形スクリーム』 ――パロディ山盛りのご当地B級ホラーコメディ

概要

山形スクリーム(2枚組) [DVD]

山形スクリーム(2枚組) [DVD]

情報

「山形スクリーム」オフィシャルサイト

紹介

俳優、映画監督として異彩を放つ竹中直人成海璃子主演で贈る笑撃のホラーコメディ。女子高生の岡垣内美香代は、歴史研究会の合宿で山形県・御釈ヶ部村を訪れる。ところが、観光キャンペーンのイベントで掘り起こされた祠から平家の落ち武者が甦り…。

物語(あらすじ)

注意:以下、ネタバレあり)

 女子高生・岡垣内美香代(成海璃子)は、歴史研究会のメンバーたちとともに、山形県御釈ヶ部村まで、研修合宿にやって来た。

 その御釈ヶ部村では、村長が、村おこしのためにテーマパークを建設しようとしていた。村のほこらを守ってきた床屋・与藻須賀三太郎(AKIRA)は工事を阻止しようとする。が、結局ほこらは倒されてしまう。

 その夜、800年前の「壇の浦の戦い」で源氏と戦った平家の侍頭・葛貫忠経(沢村一樹)が甦る。山崎田内左衛門(竹中直人)ら、彼の家来たちも忠経のもとに集まった。

 そして、この村で落ち武者狩りにあった忠経たちは、生前の恨みを晴らすため、村人たちを殺害する。殺された村人たちも、ゾンビ化して、生き残った村人を襲う。御釈ヶ部村は地獄絵図のような光景になっていた。

 だが、そんな中、美香代を見た忠経は驚く。彼と夫婦になる約束をした建礼門院の官女・光笛(成海璃子)に生き写しだったからだ。美香代は、妻にしようとする忠経にさらわれてしまう。

 はたして、美香代たちは、生きてこの村から出られるのか……。

解説

パロディ山盛りのご当地B級ホラーコメディ

 山形を舞台にしたB級ホラーコメディ。タイトルは『スクリーム』のパロディだが、もちろん、洋画『スクリーム』とは一切関係ない。

 監督は竹中直人。彼の「笑いながら怒る」芸のような、奇妙なハイテンションで終始進行する。このユルくてクドいノリが合うかどうか、好みが分かれるだろう。が、暗くシリアスなホラー映画ばかり見ていると息が詰まる。肩の力を抜いて気楽に見られる、こういう作品もたまにはいいだろう。

 配役を見ると、まず、監督の竹中直人が自ら出演している。他の映画だと彼の演技が浮き上がってしまうこともあるが、この映画では暑苦しい演技で合っている。落ち武者はハマリ役。彼ほど落ち武者が似合う役者もいないだろう。その時代錯誤感が、本作の世界観を体現しているのだ。

 女子高生たちを演じる、成海璃子、紗綾、波瑠、桐谷美玲は、コメディの中にあってもチャーミングだ。また、チャッピー役でカメオ出演している篠原ともえに注目したい。なんと、この映画ではあのテンションがちょうど良く見える。

 ナイスキャストだが、それだけに、彼女の出番が少ないのが惜しかった。というのも、女子高生たちは、カワイイのはカワイイし悪くないのだが、やはり普通のアイドルだ。ハイテンションコンビの竹中直人篠原ともえが掛け合い、際限なく悪ノリして弾けるところが見られれば、まさに夢の競演だった。個人的には、これが最も見たかった。

 演出面についてJホラーとの関連で言うと、あえて怪物の肉体感を強調して、骨抜きにするという手法を取っている。具体的には、御釈ヶ部ゾンビの眉毛を太くしたり、「ギョイ(御意)」と言わせたり。だから、この逆をやると怖くなる。たとえば『リング』ラストで、無言で見下ろす貞子のまつげのない眼をクローズアップしたように。

 ストーリー面では、もっとグダグダになるかと思ったら、意外と話の筋が分かりやすい。平家の怨霊に関するバックストーリーを導入でさらっと説明してしまい、主役の美香代と忠経の部分にギャグを混ぜなかったのは正解だろう。

 ただ、三太郎の祖母の子守歌があのような力を持つこと*1の理由が全く分からない。おそらく、『マーズ・アタック』のパロディなのだろうが、作品内での理由付けは欲しい。

 ラストはにぎやかで楽しい。変に深刻にならず、あのようにカラッと後味良く終わるのが正解だろう。B級コメディなのだから、文化祭や学園祭のように、ユルい一体感や連帯感が重要なのだ。

 全体を通して見ると、マイコ演じる女教師が「ちんすこう」と叫ぶ場面をはじめ、バカバカしくて笑えるシーンがある。カメオ出演している役者や、他の映画のパロディなど、ネタを探して見ると飽きないだろう。

 本作は、怖がるというより、面白がって見るための作品だ。怖さのみを期待すれば、期待はずれになる。が、面白がる見方ができるなら、楽しめるだろう。

関連作品

「山形スクリーム」オフィシャルガイドブック

「山形スクリーム」オフィシャルガイドブック

山形スクリーム (小学館文庫)

山形スクリーム (小学館文庫)

山形スクリーム 1 (サンデーGXコミックス)

山形スクリーム 1 (サンデーGXコミックス)

*1:光笛のミイラがあのような場所に隠されてあったこともよく分からないが、こちらはなんとなく想像できる