映画『テケテケ』 ――都市伝説は疾風とともに訪れる

概要

テケテケ 1&2 デラックス版 [DVD]

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情報

映画『テケテケ』&『テケテケ2』公式サイト

紹介

口裂け女”、“こっくりさん”、“トイレの花子さん”に並ぶ知名度ながら、いまだかつて映画化されていない最後の都市伝説“テケテケ”が遂に実写映画化!
映像化不可能とされてきた異形の悪魔を、この世に送り出してしまう!!
AKB48の中心メンバー大島優子と、トップセールスを誇るグラビアアイドル山崎真実が、“テケテケ”出生の謎に迫る!

物語(あらすじ)

注意:以下、ネタバレあり)

大橋可奈(大島優子)のクラスメイトである関口綾花(西田麻衣)が、下半身のない死体で発見された―。

この事件を機に、学校では“テケテケ”の話しで持ちきりである。この噂は、可奈の耳にも入ってきた。
“テケテケ”を見た者は、72時間以内に必ず死ぬ。可奈は、都市伝説について調べるため図書館へおもむくが、そこで偶然、可奈の従兄弟であり、女子大生の平山理絵(山崎真実)と出くわす。理絵は、大学の心理学科に通い、都市伝説に関する卒業論文をまとめていた。
理絵の話によれば、“テケテケ”のルーツは、兵庫県加古川で、戦後間もなく起こった女性の鉄道投身自殺にあるという。
2人は早速、加古川へ向うことにする。加古川で2人は、地元の大学を訪れ、理絵の教授から紹介された行方教授(螢雪次朗)と助手の武田慎(阿部進之介)から鉄道投身自殺した“カシマレイコ”という女性について話を聞く。許された時間は72時間。そう、可奈は“テケテケ”を見てしまっていた・・・。

解説

都市伝説は疾風とともに訪れる

 「テケテケ」は「映画化されていない最後の都市伝説」だったという。CGが発達した今聞くと、「映像化不可能とされてきた」というのは、大げさに聞こえる。が、下半身がないという設定上、「トイレの花子さん」のような他のキャラクターより困難ではあるだろう。

 元ネタの知名度の高さは、ユーザが見る動機になる。が、見る前にすでにネタがバレているわけだから、そのぶん期待はずれになりやすい。だから、テケテケをどのように登場させるのかは難しいところだ。

 そこで、本作の導入部では、低いカメラアングルで、疾走するカットを見せていた。これは素晴らしい演出で、見せ方に成功していると思う。なぜなら、視点が低いことでテケテケの主観視点だと、何も説明せずに観客に伝わるからだ。

 たとえば、これが小説なら説明抜きは無理だ。また、これが普通の二本足の妖怪では、視点の低さと速さに説得力がない。まさに、映像ならでは、テケテケならではで、正解の演出だろう。そして、テケテケ本体を見せず謎を温存したまま、殺人者が迫る緊張感を表現している。

 テケテケは一言も喋らず、非人間感が強い。黙ったまま、被害者を上下真っ二つに切断して、殺してしまう。そのことによって、ホラー邦画のウェットな恐怖というよりも、ホラー洋画やホラーゲームのクリーチャーのようなドライな恐怖に近くなっている。

 テケテケが出現する前に歩行音がするのは、「テケテケ」というのが擬音・擬態語であるため、当然の演出だろう。しかしさらに、テケテケ出現前には一陣の風が吹くというのも、「来るぞ来るぞ」という期待を高める適切な演出だ。

 テケテケは比較的新しい都市伝説だが、「怨念を抱いて死んだ女性の幽霊」という根本的な部分では、やはり日本の伝統的な幽霊像にのっとっている。テケテケ誕生の経緯からすると、女性ばかり襲うのも謎だが、女性が真っ二つに切断されるのは、ショッキングで絵になる。

 『リング』の七日の呪いのように、テケテケの呪いを解く期限を三日と定め、サスペンスを明示的に構成した。このことは緊張感をもたらしていて良い。また、これも『リング』がそうであるように、供養によっては解決しないのは、かつての怪談と異なるJホラーのパターンである。

 ただ、少し気になるところがあった。棚ぼた式に得られた情報*1を、可奈(大島優子)のケアレスミス*2で間違えてしまう。さらに、結果的には自分たちの誤りなのに、理絵は助手に当たり散らす。そこは、可奈が真摯に対応したため助手が情報を教えてくれたとか、当時と地名や地形が変わったとか、正攻法で臨んでも良かったと思う。

 たしかに、ホラーでは、主人公への感情移入やドラマ的感動が、必ずしも要求されない。しかし、イライラする展開とハラハラする展開は微妙に異なるのだ。どちらも先が気になる状態だが、必然性が低いと前者になる。主人公たちにはなるべく、最善の行動を取らせたい。そうしたほうが、エンディングの絶望感もより深刻になるだろう。

 演技面を見ると、ホラーだから怖がるのみ、という点を差し引いても、AKB48大島優子の演技は自然。全体的に手堅く作られた作品だ。妖怪をモチーフにしたホラーは、なにかとユルくなりがちだが、本作は最後までスピード感を保って駆け抜けた。

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*1:映画中、1948年(昭和23年)12月11日付けの新聞に、事件が掲載されている。それによると、10日夜、加古川市三笠町一丁目で、鹿島礼子(24)が、上半身と下半身が切断された状態で発見された。警察は状況から、鹿島礼子が投身自殺した際、電車にひかれたものとみている。そして、彼女の慰霊碑が倒れたことがテケテケ出現の原因だと、助手は推測する

*2:そういうミスをした前例があるという、「アウストラロピテクス」の伏線は入っているものの