『新文学』コミティア・発表レポート

概要

新文学 - 萌え理論word

11月16日(日)、東京・ビッグサイトで開催された「コミティア」で、批評同人誌『新文学』を発売しました。当日は相方の松平さんも来て頂き、持ち寄った二人分の二十数部を完売しました。そして、おかげさまをもちまして、献本分を除くとこれでほぼ、印刷した500部完売いたしました。完売御礼申しあげます。以下、当日のレポートをお伝えしたいと思います。

ゼロアカ道場外伝

泉さんの原稿は、僕ならもっと上手く生かせる
文学フリマゼロアカ道場第四関門が終わった後、講談社BOXを統べる太田克史部長はそう言い放つ――

道場破りの天野年朗は、その圧倒的な言葉の重み、存在感に打ちのめされ、大地を覆いつくす闇夜のような、見事なまでの革ジャンに目を奪われていたが、やがて彼の編集した武器たちに思いを馳せた。そう、実は『ファウスト』や『パンドラ』は本ではない。武器だ! 新時代を生き抜くためのテクスト・ウエポンだ!!

はるか古代の戦士たちは、『ファウスト』や『パンドラ』を片手にコロシアムで戦い、投石器につめて投げては敵の城砦を破壊したという。紙の兵器が空中を華麗に舞う幻想的な光景を想像して欲しい。それは時を経た現代の論理戦闘(ロゴスバトル)であるミステリにも生きている。凶器が見つからない殺人事件で、実はその角で撲殺していた、という読者の誰もが驚愕した、あの斬新なトリックはもはや伝説だろう。

そして、それだけの武器を作ってきた手練の太田部長の言葉に、天野は一言も反論できず秋葉原を去ったのであった……。

☆ ☆ ☆

そして一週間後のコミティア。自ブース完売後のビッグサイトで、あの日の敗北を噛み締めながらも最萌えのエロ同人を求め彷徨っていた天野は、突如、信じられないような強烈な闘気に身を引き裂かれる!

「危険な新人」泉和良。新刊を出したばかりの作家特有の気高き闘気=オーラを身にまとう。彼が、ブースを取得しているアンディー・メンテジスカルドと同一人物であることは、CIAやNASAなどごく一部の機関しか知らない機密情報で、あのキラといえど知るよしもなかったのである*1

「泉先生、こちらにおわしましたか。『新文学』には玉稿を拝受いたしまして恐悦至極に存じます。実はわたくし、太田様から……」
天野は、一週間脳裏から離れず悩まされていた、太田部長の言葉の謎を、それではどう編集すればよかったのか、を相談しようと思っていた。が、返答のかわりに差し出されたのは、燦然と輝くコピー誌「フリーゲーム・クリエイターズ」。

コピー誌特有の割高感*2が伴う薄さだったが、ひとたび目を通せば『ファウスト』や『パンドラ』と同じアツいものを感じた。「ぼくらは何故、フリーウェアゲームに不完全性を求めるのか。」といった、あくなき「フリーウェアゲームスピリット」を求める鮮烈な論考群に、天野は思わず「これはヤバイね!」とつぶやく。

刹那、ロマサガ2のように頭上に巨大な電球が出現した! 『新文学』の「泉和良×ジスカルド対談」は、「最も危険な新人×最も危険な同人」と煽りをつければよかった! そのような煽動文言(キャッチコピー)が、シナプス・ネットワークを駆け巡った! 「あのときの自分に欠けていたのはこれだったんだ!

☆ ☆ ☆

天野がハッとして我に返ると、いつの間にやら、BLグッズ「おやじ抱き枕」が展示されたブース付近へと迷い込んでいた。あれはうたかたの夢だったのか? ファウストの魔法だったのか? もしやこの編集力の気づき=アハ!体験すらも、すべて仕組まれたことだったというのか? わからない。だが、この異様な経験は、パンドラの箱に残された一縷の希望のように、彼を導いていくことだろう。

注:このレポートは一部脚色しています

*1:思わせぶりだが何の伏線でもない描写

*2:といっても、フリーで頂きました。ありがとうございます