下克上ヒロイン

メインのヒロインよりもサブキャラの方が萌える場合がある。例えば、コメットさんよりメテオさん、マジカルナースよりマジカルメイド、ジブリールよりミスティメイ、といった具合だ。最近ではハルヒより長門、も含まれる。これはまだ、主人公よりライバルの方が人気が出るのと同じ図だろう。しかし、ギャルゲの場合は攻略キャラとそうでないキャラとの差は画然としている。エロゲともなればなおさらである。


作品中でサブキャラに割かれているテキストやグラフィックの分量は決して多くないのにも関わらず、逆にそのことによってますますサブヒロインの価値が高まる。攻略できないキャラを攻略したいというのは、手に入らないものは欲しくなるというのと同じだし、あまり描かれていない分そのキャラを自由に妄想できるという側面もある。それが下克上の力になる。


そうしたサブヒロインへの需要はロングテールに相当するかもしれない。「脇役が主役を喰う」現象は昔からあったが、ネットやコミケのようなロングテールをすくい上げるシステムがあることで、サブがメインになるチャンスは以前より増した。ネットは検索が効くしコミケは商業の制約に縛られない。


しかし、サブをメインにしてしまうと魅力が失われることも多い。それは言わば、正妻より愛人の方に情がいきやすいのと同じことだろう。それはつまり、キャラが立っている立場・場所が前景化しているということだ。


実はこの力学は、物語において既に利用されている。それは典型的には変身系のストーリーだ。「スーパーマン」はとても分かりやすいが、魔法少女ものにもそういう一時的な活躍という面が含まれている。


ところで、サブヒロインの属性にはツンデレがよく合う。一度に複数攻略できないというギャルゲエロゲの性質とよくマッチしている。あるキャラの攻略ルートに入るということは、そのキャラがサブ→メインに変換されるわけだが、それにツンデレを重ね合わせると効果的で大変理に適っている。