ネット表現の三幅対(ISR分析)

前回までの議論

シナリオ演出のISR分類法
ショタ・百合・ふたなりの三つ巴(ISR分析)

ISR分類 I→S S→R R→I
ジャンル ノスタルジー ミステリー スペクタクル
アイテム 形見 暗号 呪物
ヒロイン 約束の女 謎の女 誘惑の女
同性愛 ショタ 百合 ふたなり


ISR分類・分析とは、記号萌学のツールで、物語の諸要素を、
イメージ(I)・シンボル(S)・リアル(R)の、
三つの座標軸で分類する方法です。
今回はそれをネットの表現に応用します。

ISRに振り分ける

ISR分類 I→S S→R R→I
ネット表現 雑談 議論 引用


雑談はイメージ(のシンボル化)の世界です。
しばしば自己の身辺にあったことの回想という形を取り、
広義のノスタルジーの枠組みになっているわけです。


議論はシンボル(のリアル化)の世界です。
専門的なキーワードを組み合わせて、何が
現実的な解なのかという謎を解くわけです。


引用はリアル(のイメージ化)の世界です。
これは端的にはAAを含むコピペのことです。
しばしば発言者をキモオタなどのAAにするように、
現実世界を仮想して、それをイメージ化します。

雑談(I→S)

雑談にはリアルが欠けています。


ノスタルジーというのは、雑談からしばしば世代論に発展することです。
ブログでもそれは一手法としてありますね。参考のためにその論破法は、
Sの統合(みんなそうだった)を拒否することですね。どういうことか。


具体的には、若年層の犯罪が増えているというような議論の多くが、
実はイメージに基づいていて、実際に統計を見てみると、逆だったりする。
I→S(個人的回想→社会全体)に飛躍がないか見ていくわけです。

議論(S→R)

議論にはイメージが欠けています。


ミステリというか、ある問題があって解くというのは議論の基本です。
スペックや価格や何々を最適化するのはどういう方法かと推理します。
ここでの謎とは、要するにRが何なのか、ということになるでしょう。


男の方が議論好きなのは、Sが男性社会・縦社会の論理だからです。
しかしすると、百合がS→Rなのとどう整合性をとるのでしょうか。


これは女性を排除した集団(軍隊や刑務所からネットまで)で、
ホモセクシュアルな表象(2ちゃんの「やらないか」など)が
出現するのと裏表になっています。リリアン「女学院」でしょ。

引用(R→I)

引用にはシンボルが欠けています。


AAが文字をイメージ化してるというのは
見たまんまなんで説明の必要がないですが、
そこでコピペ改変の方を説明してみましょう。


議論はシンボリックなので要約しても
重要な情報は失われないのですが、
コピペやコピペ元を要約しても
非常につまらないわけです。


ネットワーク的に感染し増殖し合体し変化するのが、
R→Iのパターンでしたが、コピペも殆ど同じです。
コピペやパロディ一般が、可能な派生を反復し続け、
もともとの起源の文章をバリエーションに貶めます。


コピペというのは表層だけを変化させますが、
その裏面としては、チェシャ猫のニヤニヤ笑いと同じで、
文脈や読者側の印象を物象化しようとします。

研究参照と三つ巴論

全体的に印象を語っているふしがあるので、ここで松村真宏氏の研究を参照しましょう。
2ちゃんねる研究 改訂版
2ちゃんねる+ Vol.3 コアムックシリーズ 222 にも一部掲載された)


松村氏は、2ちゃんねるの五千以上のスレッドを、8指標で分析しました。
その詳細はリンク先を見てもらうことにして、ここでは三つの表現に注目します。

比較表
ISR分類 I→S S→R R→I
ネット表現 雑談 議論 引用
2ちゃん研究 議論発散傾向 議論深化傾向 定型的表現傾向


松村氏自身の主張とは異なっていますが、
キーワードだけを重ね合わせるとこうなります。
私が付加する論点は、ジャンケンのような三つ巴性です。


あるスレッドで雑談をしている内に意見が分かれて議論になる。
議論が深まるにつれ、多数が話題から弾き出されていき、
AAやコピペなどの引用に移行する。引用はすぐ飽きられるので、
「そういえば〜」と再び雑談に戻っていく…という循環です。


もちろん議論スレ、雑談スレなどスレごとに棲み分けられるのがふつうです。
しかし、雑談スレでは議論が起こりやすく、議論スレではAAで荒れやすく、
引用スレ(何々の画像を貼れとか)では雑談に移行しやすくなっています。


これは、I→S・S→R・R→Iの図式通りですね。