格差社会の部分と全体

若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か

部分と全体の視点

その中学を辛うじて卒業した私は、暫く土方として働いていた。(…)

要は、最下層の人が上流層に入れるプロセスだけわかっていればいいのです。
堀江貴文「稼ぐが勝ち」から)

確かに、赤木は、「希望は、戦争。」とか言っちゃう辺り隙だらけだし、本の印税が入れば本人は本当のワーキングプアではない*1だろうし、説得力に欠ける部分もあると思う。ただ、dankogaiさん(とホリエモン)側のロジックも少し気になる。

dankogaiさんの成功物語自体は素晴らしい話だけど、それを社会全体に適用したらいけないと思う。賃金体系がピラミッド状になっているとして、底辺から頂点に登れるから構わない、ではなくて、ピラミッドの底辺自体が沈んで窒息しそうだ、というのが問題なわけ。

もちろん、話の中の同級生の物差しはくだらない。中卒の土方だったdanさんも、経営者のdanさんも、職業としては平等だ。収入の高低が職業の高低ではないからだ。あるいは、仕事に大小があるとしても、それらはみな必要な仕事なのだ。人の役に立たない仕事はない。

これは奇麗事ではない。労働は対価を伴うが、必ずその対価を払う他者がおり、もちろん金を無駄にしたくないから、役に立つことに金を払う。だから、人の役に立たない仕事はない*2

そしてもちろん、人の役に立つのだから、ちゃんと働いていれば、中卒の土方でもどんな職業でも、最低限は喰える社会にすべきだ。経営者になれればいいけど、なれなかったら喰えない、ではすごく困る。今はそれが怪しくなってきている。最低限生きられればいいかというと、ちょっと病気をしたりするとすぐ転落してしまう、というのが問題なのだ。

私は、社会全体を見る視点なので、成功者・成功物語に注目することはしない。一部が成り上がれるから後はいい、ではなくて、全員を救うシステムを考える。ただ、赤木は、アイデンティティの問題にするところがある。社会システムは飯を喰わせるまでが使命で、尊厳の問題は自分で何とかするしかないとは思う。

*1:そう大金ではないかもしれないが、少なくとも当面は希望がある

*2:ただし、競争が正常に働いていればの話

まず、あなた自身が他人を甘えさせてあげてください

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子供は他者

しかし、大人になってもまだ、この真理がわからないひとは大勢いる。

 ひとは、ひとに頼ってもいいし、甘えてもいい。泣いても、わめいてもかまわない。不完全でも、不十分でも、他人に迷惑をかえてもいい。そのままで生きていっていい。ただひたすらに耐えてばかりいると、心が歪み、たわみ、ねじ曲がっていってしまうから。

もし、上の主張を単体で出してきたら、ずいぶん賛否が分かれそうな内容だ。だが、引用元では、小学二年生の作文に代弁させることで、批判を免れている。子供はともかく、子供を利用する大人は感心しない。

確かに、完全に自力で書いたなら、天才児だとは認める。ただ、邪推ではあるが実際には大人の手が入っていそうで、その場合は、ずいぶんベタな感動話に仕立て上げたなとは思う。

それなのに、かっこうにだめなじぶんを見せられて、そのだめなじぶんにカッとなって、そのむしゃくしゃをかっこうにぶつけてしまったんだと思います。

これは、投射による防衛機制のロジックだ。心理学を学べば誰でも知っている。

いや、大人は関係ないとしても、全国の作品から選ぶコンクールは、優秀な作品を選別する機能がある、ということだろう。それ自体は別に悪くない。ただ、そのごく一部(優秀賞)の子供は優れているけど、子供全員が同じということでは決してない。

それに、あくまでも子供が書いたからすごい、ということだ。だって、オッサンやオバサンが、同じようなことを言ったら、感動しないでしょ。しますか? ほんとうに? TV界では子供と動物は視聴率を稼げるから好まれるけど、そういうことだ。

子供は他者のポジションにある。もし自分で言ったら叩かれてしまうことを、他者である子供に代弁させて、感動のリビドーに変えてしまう。そうした感情貿易は、電通が大の得意の手法である。つまりはそういうことだ。

「生きる」

しかし、大人になってもまだ、この真理がわからないひとは大勢いる。

 ひとは、ひとに頼ってもいいし、甘えてもいい。泣いても、わめいてもかまわない。不完全でも、不十分でも、他人に迷惑をかえてもいい。そのままで生きていっていい。ただひたすらに耐えてばかりいると、心が歪み、たわみ、ねじ曲がっていってしまうから。

こんなことを言うと、また「ポジティブな生き方を否定する〜」だとか言われかねない。だが、先手を打って言っておくと、それは間違っている。むしろ逆だ。引用元が言っていること自体はきわめて正しい。だから、否定しているわけではなく、むしろ「ポジティブに生きればいいよ」、実践しろという肯定的な後押しなのだ。どういうことか。

…あなたが最近一番頭に来た迷惑な状況で、憎たらしい相手に甘えさせることができるか。できますか? ほんとうに? 私もそうですが、まっぴらごめんじゃないですか。そして、私やあなたが別の誰かに同じように思われている可能性もあるでしょう。だから、助け合える世の中にしたければ、まず人に甘えさせて見本を見せる必要があります。

小学生の作文にポロポロ泣くような虚構に感化されやすい人が、現実では「他人様に迷惑をかけるな!」「いい歳して甘えるな!」と、周囲に怒鳴り散らしている可能性はないか。いや、「自分も他人も甘えない」か「自分も他人も助け合う」状態を目指すなら、相互性と一貫性があるので全く構わない。だが「自分は甘えるが他人は助けない」という状態は最悪だ。

もちろん、人を決め付けるようなことはしない。(読んだばかりなのでこれからで構わないが)感動したからと各自が実践するのであれば、それはとても立派なことだから、全く文句のつけようがない。ただもし、明日からコロッと忘れて、「これはお話だから…」ということなら、ああ現実への適用じゃなかったのだなと思うしだいだ。

最初の記事のはてブが伸びるのは、リーズナブルな方法だからだ。でも、現実で他人に甘えさせるのは、そのうち何%か。たぶん、コンクールで優秀賞を取るくらいの確率なんだろう。そして現実はたぶん変わらない。それはつまるところ、「生きる」の終盤と同じことなのだ。大人の感動には凡庸な幻想があるが、その幻想を通り抜けたところに、歴史に残る名作がある。

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ダメプロに対する客の視線

全く賛成できない。「本気で作る」という看板を掲げているが、プロとしてはずいぶん意識が低い発言だ。「やるきがなくなってめいわくだから、ひはんしないでください」って、どこの幼稚園のお遊戯会だろうか。

そりゃあ、明らかに的外れだったり、批判者の自己満足的な、ダメ批判はたくさんあるだろう。愛があるとか胡散臭そうなことを言いながら、偉そうにこきおろして満足するだけ、そういう批判は確かになくなった方がいい。再批判されて淘汰された方がいい。批判はフェアであるべきだ。

だが、批判自体を全て回避しようというのは、客から金を取っているプロの言動とは思えない。職業倫理的な立場から認められない。単に商売上の都合だけで通っては、タクシーの乗車拒否(近距離)とか、そういうこともいいのかということになる。

出版社としては、読者がつまらなかったからといって、「金返せ」と言われて返さないだろう。「読者の立場になって考えろ。愛があろうがなかろうが、駄作は迷惑だから、金は取らないでくれ」というロジックは認めないだろう。そうしたら、同じことだ。

ところで、「無断リンク禁止」に似たものに「批判禁止」を掲げているWebサイトをたまに見かけるが、これは馬鹿じゃないかと思う。自分は好き放題言うけど、相手には良いことしか言ってはいけない、というのはナンセンスだ。

というか、そもそも、批判と批評の区別もついていないのはどうかと思うが…。今回は怒りを通り越して呆れた。とにかく、あまりにもレベルが低過ぎる。甘えがあると思う。

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