セミナー「20代で身につける! 営業力の高め方」(ジョブナス)

概要


 2010年8月5日(木)、東京・赤坂の会場で、ジョブナス事務局とPR TIMESが、第5回ジョブナスセミナー「20代で身につける! 営業力の高め方」を開催した。

 セミナーでは、株式会社セレブレイン・代表取締役の高城幸司氏が、20代で営業力を身につける方法を講演。営業職はもちろん、それ以外の職種にも求められる、ビジネス・コミュニケーションを築く基礎が伝授された。

 また、看板制作に特化した広告業のアイワ広告株式会社から、代表取締役の小山雅明氏を招いている。小山氏によって、屋外広告という分野の解説がなされた。

 さらに、高城氏と小山氏との対談、来場者とのディスカッションや質疑応答が行われた。ふたりの経営者によって、ビジネスの現場を明らかにするこの講演会。それを筆者は実際に受講してきたので、さっそく会場の様子をお伝えしよう。

講演「20代で身につける! 営業力の高め方」(高城幸司)

リクルートトップセールスマンが語る営業


▲株式会社セレブレイン・代表取締役の高城幸司氏。(※クリックで拡大)

私の体験 セールスパーソン
(取り扱い商品:情報通信関連)

  • 1987年 リクルート入社
    • 同期800名入社と競争の激しい環境
    • 編集職希望だったがセールスに配属
    • 「仮説力」を磨いて入社1年目からトップセールス
  • 1988年 リクルート事件
    • 会社の看板が「向かい風」環境を体験
    • 新入社員を10名以上面倒見ることになる
    • 人間力」で信頼を得るセールスを学ぶ
  • 1989年〜
    • 成功体験が認知されて周囲から仕事が舞い込む
    • 入社から6期連続で通期トップセールスを獲得
    • 「企画力」で大型の契約が相次ぐ

リクルートのトップ営業マン日記 (中経の文庫)

リクルートのトップ営業マン日記 (中経の文庫)

 セミナー前半は、高城氏の講演。高城氏は、リクルートに入社後すぐ、トップセールスマンとなった。現在は、株式会社セレブレインの代表取締役社長になっている。この辺りの経緯は、巻末の関連記事により詳しい。

 じつは、入社時の高城氏は、旅行雑誌の編集職を希望していたが、営業に配属された。そこで、早く営業を抜け出して、やりたい職種になるために努力した結果、営業成績でトップを取ったという。

 そのように高城氏は、営業は辛い仕事だ、という認識を持っていた。しかし、営業から外れて留学をしたときに、営業を通じて成長できた面があることに、思い至ったらしい。そこで、今度は自分の意思で、営業職に戻ったのだ。

 高城氏にとって営業職とは、大変だが得る物が大きい、というものだという。得る物というのは、営業実績を上げれば、管理職になりやすいという、実利面でまずある。また、社外の人間と会うことで、人間的に成長する、という精神面でもある。

営業受難の時代

営業受難の時代=お客様のガードが固くなった

  1. ただ動きまわるだけでは仕事にならない
    • 競合が増える
    • 会社のガードが堅い(職場までは入れない)
  2. 何事も説明に合理性が求められる
    • 人間関係だけで難しい
    • (信頼されることと面識のあることの違い)
  3. メールやネットが普及した
    • 誰もが情報収集が容易くなった
    • いい加減なことを言うと、あとで痛い目にあう

 だが、現在は「営業受難の時代」なのだという。上記のような理由から、面識があるというだけで仕事を依頼することが、今はなくなってきたからだ。

 まず、個人情報保護、セキュリティ意識、コンプライアンス重視という大きな潮流にあって、企業内への立ち入りが難しくなった。また、企業の合理化や成果主義化が進んだことで、人脈だけではなく見積もりの比較が求められる。そして、ネットが普及した現在、誰でも情報収集できるので、相対的に営業への依存が少なくなる。

 だから、ただ漠然と「顔が広い」とか、その場の「ノリ」だとかでは、営業で成功できない時代になった。そこで、単なる面識だけでなく、信頼を得ることが重要になる、と高城氏は言う。

営業で差が付くポイントは、関心と話題

どこで差がつくのか? ポイントは?

  • 「お客様に関心を持つ」の行動
    • 「状況がよくわかっている」と思わせる
    • これまでの経験から人柄を【想像】する
  • 「打ち解けられる話題を提供」の行動
    • 「話を聞きたい」と思う、きっかけをつくる
    • 【心の窓】が開く、話題を準備する

 それでは、営業で信頼を得るには、どうすればいいのか。高城氏は、相手の立場に立つことと、相手との接点を作ること、という2点を強調した。

 自社製品の説明ができるといったことは、営業マンならできて当たり前であって、その上でさらに顧客の気持ちが分かり、顧客と打ち解けることが求められる。

 ただし、「野球」「趣味」「食事」など「プライベートな側面は相手次第」、「あまりに一般的な話題は無意味」だから「新聞を見ればわかる話はバツ」だという。あくまで仕事なので、過去の経歴や得意分野など、仕事上の接点を見出すのが良い、としたものだ。



 ここで、来場者が実際に自己紹介する時間が設けられた。それを見て高城氏は、「身振りや態度が(印象の)7割」「情熱を伝えることが意外と大事」とアドバイスしている。

 そして、「自分が何者か」「具体的な仕事の内容」「トピックス(現在やろうとしていること)」の3つを織り込んだ、1〜2分程度のスピーチを日頃から用意しておくとよい、と高城氏は結んだ。

ジョブナス利用企業の会社紹介(小山雅明)

看板業界のカリスマが語る広告


▲アイワ広告株式会社・代表取締役の小山雅明氏。

プロフィール 小山 雅明(こやま まさあき)

 1956年神奈川生まれ。コピーライター、SPプランナー、広告代理店営業などの職を経て、 1984年に27歳で広告代理店を起業。 1993年より広告媒体の中でも、特に広告効果における費用対効果の高い看板業に事業を集中特化し、 企画・デザインから製作・施工までの自社一貫体制を作り上げる。 看板視認性の改善、SI(ショップ・アイデンティティ)による 集客コンサルティングの第一人者として、全国で活躍している。
(アイワ広告の公式サイトより)

儲かるお店は「見た目」で決まる ランチェスター法則式SIがわかる本

儲かるお店は「見た目」で決まる ランチェスター法則式SIがわかる本


 高城氏の次は、アイワ広告の小山氏が講演。

 講演の前にまず、読売テレビ大阪ほんわかテレビ 仁鶴の話のねた』「人間心理をたくみに利用! 客を呼び込む看板術」(2007年1月放送)という番組の一部が映し出された。

 「講演会は年間50回以上! 看板業界のカリスマ」とテロップで紹介された小山氏は、「95%の店では看板を正しく設置していない」と発言。

 番組では、東京・千代田区にある「ステーキ くに」という飲食店の改装を取り上げている。まず、遠くから店舗が何か視認できず、したがって歩いている途中で入店しようかという判断ができない、という問題点があった。

 小山氏は「徒歩の場合も7秒離れた地点から店の看板が見えなければいけない」「ビジネス街の場合15m手前が目安」だとするが、同店舗ではそれが実現できていなかった。

 その他の問題点として、「色の統一感が欠けている」、「暗いところに入る恐怖感が入店のハードルになっている」、「希望に沿って肉をカットするオーダーカットが最大の魅力」なのにそれが伝えられていない、といったものも挙げられている。

 著作権上の問題で画像がないので分かりにくいかもしれないが、番組を見るとたしかに改装後の方がスッキリと分かりやすい店構えになっていた。

 結局、改装には「総費用220万円」が掛かったが、「(看板改良後の売り上げは)20%増以上」になったという。

屋外広告の威力


▲左のインホーム型メディア(印刷・電波・通信など)では、広告を見た後に、店まで行く必要がある。それに対して、右のアウトホーム型メディア(看板・外装など)では、店の近くで広告を目にするので、集客効果が高い。

 小山氏によると、アイワ広告は、広告代理店とも看板屋とも異なっているという。

 従来の看板制作では「クライアント→広告代理店→デザイン会社→看板製作会社→加工業者→施工業者」のように、別の業者に投げていく。しかし、アイワ広告では、企画営業・デザイン・製作・加工の全てを自社で行う。

 そして、そのように一環した体制にしているのは、看板広告にはマーケティングコンサルティングの余地が意外と大きい、という理由があるようだ。小山氏は「看板には威力がある」と語る。

 2009年1月、日経レストラン編集部は、「あなたは飲食店をどうやって選んでいますか?」という、インターネット調査を行なった。それによると、「インターネットの飲食店検索サイト」(28%)や「チラシ」(20%)よりも、「店頭看板」(40%)の方が多い。

 そのようにアウトホーム(屋外)型広告は強力だが、「研究している人はほとんどいない」という。そこで、小山氏は独自の道を進んだ。

 また、屋外広告という分野は、実益だけでなく、売上が増したことで依頼側から「ありがとう」と感謝されることが多いのだという。

 そして、そのように相手に感謝される関係は、社内でも見られる。じっさい、JTBモチベーションズのワークモチベーション調査をアイワ広告で実施したところ、平均より20点高い90点(100点)を取った。同社が、利益の追求だけではなく、社会的奉仕や人間的成長も、経営理念に掲げ、そして実践している結果だろう。

高城氏×小山氏による対談会

 ここまでの講演を踏まえて、高城氏と小山氏が対談した。主に高城氏が質問して、小山氏が答える形となったが、高城氏は答えを上手く引き出すような質問をしたと思う。

 小山氏は応答の中で、「30件に1件成約が取れる場合、29件のマイナスを見るか、1件のプラスを見るか」「(営業)目標からマイナスに考えない。ゼロから考える」「(大切なのは)A君とB君の比較ではない。今のA君と1年前のA君だ」「成果は数字だけではない。もちろん組織にとっては業績(が大事)だが、チームにとっては活性化であり、個人にとっては学習と成長(が大事)だ」など、プラス思考が営業に大事だと語った。

ディスカッション・質疑応答

 質疑応答の時間に入って、筆者は「プラス思考は大事ですが、日本には減点主義的な風土もあるでしょう。事業立ち上げの難しい時期には、「出る杭は打たれる」ような場面もあったかと思われますが、どのようにして乗り切ったのでしょうか」と質問した。

 小山氏は「なぜ、ここまで来られたのか。それは、あきらめなかったから」と力強く答える。そして、「成功の反対は、失敗ではなく、何もやらないこと」「何もやらなければ、成功も失敗もない」「やり続ければ、いずれ成功する」と続けた。

 この回答はどこか、愛の反対は憎しみではなく無関心だ、ということに似ている。これまでの講演者ふたりの話にも出ていたが、情熱や関心やモチベーションといったものが、ベンチャーの立ち上げには必要なのだろう。

 この他にもたとえば、「営業に向く、向かない、というのは何か」といった質問がある。それに対して、小山氏は「向かないとすぐ考えるのは食わず嫌い」と、未知の分野に挑戦する積極性を求めた。

 一方の高城氏は、「結果を出すのに焦らない。最初のうちは周りの人に聞く」という慎重さと、「営業は多少の図々しさが必要。特に事務や経理から転職する人は、前に出て動く必要がある」という自主性を求めている。

感想

 高城氏の話に「営業受難の時代」というのがあった。そこには、人間関係抜きで成立する方向に向かう社会が、より大きな背景にあると思う。たとえば、コンビニエンスストアやファーストフードがそうだ。そして、ネットが普及して、さらにバーチャル化している。

 社会の機能のいくらかが、ネット上で仮想化できるようになると、ヒトやモノの交換可能性が高まる。たとえば、価格比較サイトで最安なら、その店がどんな店舗だとか、どんな店員がいるかというのは、ほとんど関係ない。Googleアドセンスの広告にしても、Amazonのリコメンド(おすすめ)機能にしても、中間のヒトやモノを抜く方向の発想だ。

 ところが、この日の講演では逆に、「営業」「看板」など、リアルなコミュニケーションを重視しているところが面白い。少なくとも今のところ、仮想化できずに残るリアルなヒトやモノがある。それが「営業」や「看板」なのだろう。

 小山氏の話は、営業より広報の側面が強い。しかし、営業も広報も結局のところ、社外コミュニケーションだから、幅のある話が聞けて良かったと思う。結果的に、営業職以外の者にも興味深い講演になったと思う。

 ところで、アイワ広告の公式サイトは、詳しく、見やすく、分かりやすい。サイトに掲載されている自社ビルも、看板が視認しやすい。そして、社長の講演も、簡明かつ平易、明朗かつ快活だった。

 つまり、自社が仕事を通じて「やろうとしていること」「言わんとしていること」を、実践している。パフォーマンスとしては最高で、これも営業力のうちだと言えるのではないか、と思った次第だ。

 ここには、分量的に全て載せられなかったが、小山氏は味わい深い名言を連発していた。文字では伝わらないニュアンスもあるので、実際にセミナーに来て声を聞くと勉強になる。

 そういうわけで、また次回ジョブナスセミナーが開催される際は、ぜひお越し頂きたい。また、転職時に「サイン・オン・ボーナス」が出る転職サイト「ジョブナス」もご利用下されば幸いだ。


[PR by ブログタイムズ]