(読者数的に)もはやブロガーは作家と変わらないか?

ブロガーは平均的作家に相当するか

 「Something Orange」の先月のアクセスは40万弱、ユニークアクセスでも33万くらい。ということは、1日平均でも1万人以上の読者がいるわけで、もはや平均的な作家と比べて、そう読者数は変わらないんじゃないかと思う。

 もちろん、無料だからこそ読まれるわけで、単純に作家と比較するわけには行かない。

元記事の本筋の議論から外れるが、引用部分の発言を取り上げよう。「平均的な作家」の定義や読者数は不明だが、ここはリンク元記事に従い、月間40万PV弱・33万UU程度のブログ/ブロガーと、同等の読者数を持つのが平均的作家だ、という定義だとしておく。結論から言うと、それでは商業・専業作家としては成立しないレベルになると考える。検証しよう。

まず、40万PVで33万UUというのは、読者一人辺り1.2ページ*1しか読んでいない。作家*2が1万部の単行本を出したとして、それだけで200ページなら200万PV、300ページなら300万PVに相当する*3。さらに、ミリオンセラーともなれば、億単位のPVに匹敵するだろう。

現時点でリンク元ブログの総更新日は920日なので、おおよそ二年半*4で350ページ・一万部の単行本一冊、あるいは、少し薄いが175ページで二冊出した*5、という位の水準だろう。これでは専業作家としては、とても成立しない*6のではないか。それでも、駆け出しの新人作家となら同等だと言えるかもしれない。

しかし、元記事でも「無料だからこそ読まれる」と言っているように、有料読者とは直接比較できないだろう。そこで、ブログを有料メルマガに移行するとか、何らかの方法で有料化した場合を想定してみよう。もし無料読者が全員、有料読者に移行するとしたら、どうなるか。例えば、毎日発行の月額100円の有料メルマガで購読者数1万人の場合、全購読料は月100万円にもなる…。

もちろん、そんな風に上手くはいかないだろう。フリーソフトやネットゲームの有料化の例を見ても、確実に減衰すると予測できる。だから、メルマガの例で考えると、有料読者に相当するのは数百人、甘めに見積もっても継続購読読者は1000人程度*7が妥当なところではないかと考えている。これでは、商業出版なら印刷すらしてもらえない水準*8だろう。

ブロガーは同人作家に相当する

ここまで、ブロガーと作家を同等に見るのは、過大評価なのではないか、という議論だった。それに、社会的ステータスのようなものは考慮せず、ただ市場での規模の話しかしてこなかったが、まだまだ紙媒体の方が権威があるだろう。しかしでは一方、全く取るに足らないものとしてしまっても、過小評価になると考える。どういうことか。

私としては、ブロガーと同人作家を同等に見るのは、可能だと考える。有料購読する読者が数百人単位というのを、コミックマーケットなどの同人流通で考えれば、毎月即売会イベントに参加して、毎回コンスタントに数百部捌ける*9というのは、決して「壁」ではないものの、そこそこの大きさのサークルに相当するだろう。

無料読者と直接比較できないのではなかったか。しかしここで広告の存在があるので、印刷費が掛からないことも考慮すると、大雑把には同じに見てよいだろうと思う。翻ると、ブログでも一日1万PVあってうまく広告を貼れば、同人作家やさらには、商業でも新人作家で部数が少ない単行本の印税に相当する収入になるのではないか*10

再び、無料読者と直接比較できないのではなかったか。確かに、有料化すれば読者が減少して上手くいかないだろう。だが、アフィリエイトなどWeb広告の出現によって、無料のままでも収益を上げることを可能にした。それと、印刷・流通で大半が飛ぶ出版と違い、流通コストが劇的に低いネットによって、ロングテールが浮上することが可能になった。

だから比喩としては、魚が陸に上がったら泳げないので直接比較はできないが、速さとしては同じというイメージだろうか。水中で身体が浮くように、ネットでも経費が浮くのである。そしてまた、商業・同人の両方で書いている水陸両用のマンガ家も大勢いるだろう。コミケもネットも規模が拡大しており、水位が上昇しているように思うのだ。*11

*1:ただし、長文のブロガーであれば書籍より字数が多いだろう

*2:後で重要になるが、ここでの「作家」は、小説だけでなくマンガなども含める意味で使う

*3:ただし、返本があるだろうし、買っても読まないこともあるし、二回以上読むこともあるだろう。図書館やマンガ喫茶のような場所に置かれた場合、複数回読むのはかなり大きくなりそうだが、その回数はPVのようには反映されない。また、書店での立ち読みの回数も反映されない。ブログは無料だからこれは不当な比較でもないだろう

*4:更新日ではなく開設時からの単純な経過日数で考えると約五年

*5:もちろん、現在のアクセス水準で計算すれば違うが、ブログ開設一日目から一日一万人訪れるという仮定は極端だろう

*6:統計データがないので何とも言えないが、「平均的作家」は専業作家ではなく兼業作家だった、という場合もありえるかもしれない

*7:ブログ形式での有料化なら月3万UU

*8:もちろん、もっと読者数の多いブログは別だし、実際書籍化もされている

*9:もちろん、「とらのあな」などの同人書店を含めても構わない

*10:一例としては、一万部×500円×印税率10%=50万円。これが7000部だと35万円、7%でも35万円。300万PVでそれくらいの広告収入を出すのは可能な範囲ではないか

*11:今回は表現の内容面には触れないが、二次創作という形式と、トラックバックによる言及の連鎖が、構造的に共通する部分があるのではないか、ということは指摘しておく