ラノベ「SAS スペシャル・アナスタシア・サービス」

第一回ノベルジャパン大賞優秀賞。優秀賞だが文章・構成が上手い(大賞よりも?)。主人公の妹が実は王女で、そのボディガードに外国から特殊部隊の三人娘が来るという、某フルメタ的なミリタリーもの。

題名のSASは同名の特殊部隊をモチーフにしており、序盤から多くの銃の説明と少しのドイツ語が飛び交う展開になる。アクションシーンではわりと良質な文章で描写がなされ、物語の構成がしっかりしている。物腰は柔らかいが軍人で外人という闖入者との、少しギクシャクした非日常的距離感を保つことで、対比的に妹との関係の親密さを印象付けることに成功した。

ただ、安易に人死にを物語のダシにしないのは非常に好感が持てるのだけど、全体的にどこかシミュレーションっぽく感じた。また、わりと生真面目な展開だが、本来の任務を隠蔽した学園生活という題材――例えば草木でカモフラージュする場面は、ありがちだけどイラストも手伝って印象的だった――は、もう少しユーモアを含ませる余地がある。イラストは表紙が萌え格好良い。