ラノベ「カッティング Case of Mio」

カッティング ~Case of Mio~ (HJ文庫 は 1-1-1)

カッティング ~Case of Mio~ (HJ文庫 は 1-1-1)

第一回ノベルジャパン大賞佳作。佳作だが出来が良い(大賞よりも?)。リストカットセカイ系という、ライトノベルにしてはヘビーなテーマとスタイル。

タナトスとエロスが交差する――というのもヒロインは途中で死んでしまうから――中盤が一番の見所だろう。無感動系のヒロインとの外傷的な性行為を描く部分は、成功している。ヒロインは、ナイフとペニスを、傷つけるという点で、ほとんど同列のものと見なしており、「傷つける性」の享楽を魅力的に印象付けた。

ただ、全編に渡って描写しているので「痛み」の感覚はよく伝わってくるが、そればかりなので読んでいて痛々しい。また、全体的によくまとまっているものの、心理学的説明や陰謀論的組織だとか、エヴァのフォーマット――シンジとカオルがレイを奪い合うような感じの展開――を超えていない点は、これからの作品に期待か。イラストは感傷的で繊細な雰囲気が非常に合っている。