「決断力」書籍レビュー

決断力 (角川oneテーマ21)

決断力 (角川oneテーマ21)

少し前の本だが、売れているし、好みなので紹介する。前回が「続ける」ことなら、今回は「決める」ことに関する本である。著者の羽生善治は将棋の天才的なトップ棋士で、プロの将棋は時間との戦いなので、決断力は重要になる。なぜなら、将棋には一手指すために何時間も考える局面があり、秒読みの中で逆転する手を探す局面もあり、しかも「待った」「最初からやり直そう」「明日決めればいいや」ということが絶対に許されないからだ。ただし、平易に書かれていて将棋の知識はなくても問題なく読める。そして、この本の表現は簡明だが思考は単純ではない。例えば、帯の「直感の七割は正しい」という言葉にしても、逆に言えば三割は正しくないということだ。他にも「経験は、時としてネガティブな選択のもとにもなる」など、「〜しさえすればよい」という思考とは異なり、物事を単純化しながらも、多重決定されることを考慮に入れている。全体の七割はビジネス系のポジティブシンキング本にありがちな「常識を打ち破る天才児」というイメージの期待に沿っているのだが、丁寧に読むと面白い細部が見つかるだろう。関連書籍にはライバル棋士の谷川が書いた「集中力」を挙げておく。

関連:集中力 (角川oneテーマ21 (C-3))