「俺の屍を越えてゆけ」ゲームレビュー

俺の屍を越えてゆけ PS one Books

俺の屍を越えてゆけ PS one Books

このゲームレビューは、少し前のゲームを中心に紹介していく方針だ。次世代機が話題の今に昔のソフトを紹介するのは少々気が引ける。しかし、このブログの広告の方では、ほとんど常に最新作を取り上げているし、ゲーム市場の特徴として廉価版化で安くなるので、万人向けの超大作ではないが、手頃な値段であれば一度プレイしてみてもいいだろう、というソフトを紹介してみたい。

作品の方、世代交代RPGという珍しいジャンル。中世日本を舞台に、短命の呪いを掛けられた一族が鬼に復讐するという設定。ドラマ性が薄い代わりに、キャラクタを育成する楽しさが本作の主眼になる。ふつうのSLGなどでは、大事なキャラクタは死なせたくない、という感情がゲームバランスを難しくしてしまうが、この作品ではなんと数回ダンジョンに行くと寿命が来てしまう。RPGでは好みのキャラクタだけ使うことでレベル上げが単調な作業になりがちだが、流動的に入れ替えながらパーティのバランスを取っていくところに面白さがある。感情移入を適当な所で抑えることでキャラを駒化し、SLG+RPGのシステム的な魅力を中心にしている。

上の発売日は廉価版化したときのもので原作の発売日はもっと古い。グラフィックはポリゴンが普通になった今見ると見栄えがしないだろうが、2Dでエフェクトにこだわらずサクサク進むのはかえってストレスがなく心地よい。また全体的に素材の使い回しが多く、決して大作ではないのだが、書き割りに魂を入れる手腕は見物。例えば、終盤の方でダンジョンのボスが、負けたときに「家族」に言及するところなどは、「主人公の方は大勢でずるい」という感覚を逆手に取っている。そういう、ほんのちょっとした細部を印象的にするのが上手い。制作者の枡田省治は広井王子と共に「天外魔境」を手がけたこともある。制作者の主張を随所に入った結果、全体的にユニークな作りになっている。マニュアルで私的な語り口をしてみたり、そもそもパッケージも制作者の家族の写真だ。またテーマ曲の「花」はよく合っていると思うが、EDでちょっと肩透かしを喰らったのと、挿入されるアニメなどがやや悪趣味だ。同志の芝村ほどアクが強くはないが、良くも悪くも個性的である。

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