ベイズ理論は確率2.0か

FIFTH EDITION: ベイズの定理と3囚人問題、モンティ・ホール問題を言葉だけで納得してもらう方法を募集。

プレイヤーは、三つのドアを見せられる。ドアの一つの後ろにはプレイヤーが獲得できる景品があり、一方、他の二つのドアにはヤギ(景品がなく、ハズレであることを意味している)が入っている。ショーのホストは、それぞれのドアの後ろに何があるか知っているのに対し、もちろんプレイヤーは知らない。

プレイヤーが第一の選択をした後、ホストのモンティは他の二つのドアのうち一つをあけ、ヤギをみせる。そしてホストはプレイヤーに、初めの選択のままでよいか、もう一つの閉じているドアに変更するか、どちらかの選択権を提供する。プレイヤーは、選択を変更すべきだろうか?

Wikipediaに書いてある下の説明が既に分かりやすいでしょう。イラストの方も分かりやすいですが、「言葉だけで」という条件に反しますね。

また、ドアが3個ではなく100個である場合を考えるとより直感的に分かりやすくなるだろう。プレイヤーが一つのドアを選んだのち、モンティは後ろにヤギのいる98個のドアを開ける。明らかに、モンティが開けなかったもう一つのドアに景品がある可能性が極めて高い(正確には 99/100)。


これもWikipediaに書いてありますが、司会が当たりのドアが分かっていてそれは開けないという条件が重要になります。もし司会が分かっていない場合、当たりのドアを開けてしまう場合も当然あるので、何も情報を与えず、確率は1/3のまま変わりません。上のドア100個の場合でも、司会が分からないまま、たまたま当たりにぶつからないまま、ドアを98個開けた場合、当たり外れは1/2でしょう。


ベイズ推定に分かりにくいところがあるのは、「不完全な情報から規則を推測する」ということは表面的な現象に現れず、(観測者の情報・主観としてある)現象間の関係でしかないからです。つまり不可視なんです。まあ頻度も不可視ですけど、主観は観測者の間で異なるため、もっと不透明なんです。


あのビルゲイツベイズ理論が21世紀の技術に重要であるというようなことを言ったらしいですが、主観的な確率観であるベイズ統計は、情報の分野に親和性があるのか、実際にベイジアンフィルタ(例えばスパムフィルタ)のような技術が、既に導入され使われていますね。よく知らないですけどウィンドウズのソフトでも使われているらしいですよ。


更に応用を探ると、マクロ経済学における「合理的期待形成理論」も、ベイズ理論的なエッセンスがあります。フィリップス曲線のように、インフレと失業の間には相関関係が存在することが分かっています。ここでケインズ派が貨幣が不足しているから不況が起こると考えるのに対して、合理的期待論では、貨幣そのものは経済に影響を与えないが、観測者の錯覚(貨幣錯覚)が影響を与えると考えます。ただし、長期的には錯覚が消えていきます(自然失業率への収束)。


だから個々の経済的主体が完全に合理的に行動すると、金融政策は意味をなさないことになります。これを逆の視点で見ると、騙される者も行動で事実を作る、つまり嘘から出た真、ということになるでしょうか。この動的生成・誤配の論理には受け入れがたいところがありますが、冒頭のモンティ・ホール問題と同じような、直感的な判断を拒否する枠組みなのでしょうか。