なぜタ行はサ行とナ行の間なのか

ネコプロトコル - タ行には今よりもっとふさわしい場所があるんじゃないだろうか?

タ行には今よりもっとふさわしい場所があるんじゃないだろうか?


「アイウエオ」の基本的な発声に、舌・喉・歯・唇で空気の流れを妨げるオプションをつけることで五十音が成立する。「アカサタナ…」と声に出して読み上げていくと、段々響きの粘度が濃くなっていくが、それはちょうど流れの閉鎖度に歩調を合わせている(「アイウエオ」も同様)。「ア」ではスムーズに空気が流れ、「ン」では口からの流れは完全に途絶えてしまう。


「サ」と「タ」と「ナ」を、英語の発音とか音楽の発声の練習でもするように、おおげさにゆっくりと発音してみよう。すると、「スーサァー」「ッタァー」「ゥンナァー」という感じになる。母音の「ア」の空気の流れを、歯で狭くする(サ)、舌で一旦空気の通り道を塞いでから勢いよく流す(タ)、喉〜口の経路を舌で塞いで鼻から流す(ナ)、という風に分かれている。空気が流れ出すと音声は母音に合流する。これをローマ字で見れば、「s+a」「t+a」「n+a」というように組合せが一目瞭然である。


さて最初の問題提起に戻ると、「サ行」と「ナ行」の中間の位置が相応しいかどうか、というものだった。たぶん(シュールな)イメージを問題にしているんだろうが、ここでは音の問題意識に限定する。「カ」「サ」「タ」と発音してみると、他の行より軽い音であることに気付く。「ナ」「マ」「ン」などは鼻から響く音があるので重い。「カ」「サ」「タ」は「空気を一旦止める(サは漏れるが)」という共通の構造がある。その上で、喉で止めるか(カ)、歯で止めるか(サ)、舌で止めるか(タ)、という違いがある。


ここまでで「カ」「サ」「タ」がなんとなく同じグループに属していそうなことは分かった。途中にナが挟まるのは不自然だ。しかし「カ・サ・タ」という並びでなくてはいけないのだろうか。「サ・カ・タ」や「タ・カ・サ」でもいいのではないか。ところが違う。「タ」と「ナ」は発声する口の形が近いのである。「カ」や「サ」を発声しようとする口の形で「ナ」を言うのはやや無理があるが、「タ」は近い。ついでに言うと、「サ」と「タ」も近い。つまり、「サ」「ナ」と構えを共有しているがゆえに、「タ」は「サ」と「ナ」の中間に位置しているのであろう。