テキストの重みで潰れない、連載型エロゲという可能性

テキストの重みで潰されそうなエロゲ業界

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  • ああかむゲーム制作日記: エロゲのボリュームってどう思うよ?

(個人的意見その1)
(個人的意見その2)
(個人的意見その3)

モノーキー:エロゲの商品力の低下はエロゲ市場が確立されてしまった証拠。
萌え理論Magazine - 数字で見るこの界隈:その2:エロゲのテキスト量
grevグループ - tmp:キャラのバラ売り


「テキストのボリュームが増えすぎたというエロゲ業界の問題」に関しては上記が詳しいです。以下ではこの前提を踏まえて、ではどうすればよいかについて、素人的な立場から私見を述べます。単純にボリュームを小さくして値段も抑えた作品は既にありますが、どうしても小粒な印象は免れません。そこで連載制によって、その弱点をカバーします。どういうことか、早速見てみましょう。

連載/単行型エロゲという方法論

提案

連載型エロゲというのは、その名の通り連載していきます。何回かに小分けにすることで、ボリュームインフレのリスクは回避しつつ、大きな世界観を構築することも可能にします。長編はコケるリスクがあり、短編では小粒になってしまうので一長一短でしたが、反応を見ながら続けていけば、両者の良いところを取れるというわけです。つまり、受けなかったら短く、受けたなら長くします。


それだけではなく、雑誌連載を単行本にするように、連載ゲを単行ゲにします。書き下ろしとか追加CGとか追加キャラとか、色々パワーアップしたものにします。連載は配信で単行はパッケージ、とすると良いでしょう。配信は手元に残らないので、単行ゲを買う必要が出てきます。もちろんその分連載の配信は安くするわけです。一つの作品が二度売れて、しかも配信とパッケージとか違う場所で売れば違う客層が見る可能性も出てきます。


連載は各企業のサイトでパラパラ見るよりも、既存のエロゲ情報サイトを使うか、エロゲ会社が集まってポータルサイトを作るといいでしょう。データはそれぞれの会社のサーバにあるので、そうデカイ鯖が必要でもありません。今でも体験版やデモの配布はありますが、ユーザはより雑誌を読んでいるような感覚で遊べます。


しかし、本当にそんなに上手くいくのでしょうか。次で検証してみましょう。

検証
  • 小分けにすると利益が低くなるのではないか

確かに、8800円のソフトを1100円で8回に分けて売るとキツそうです。8回分パッケージを作って流通させるのは無駄ですし、ユーザ側も8回ショップに行って買うのは面倒です。そこでどうしても連載は配信・DLに限られるでしょう。ネットなら小分けにしても手間は変わらないし、ユーザもブクマしておけば家で見られます。配信のエロゲはさほど前例を見ないですが、一応「みずのかけら」とかあります。DLのエロゲはベクターとか色々なところがやり始めたので、市場が成長していくことはありえます。

  • スタッフの作業は小分けにできないのではないか

例えば、スタジオは一日単位で借りるだろうから、声優の録音はいっぺんにやらないと非効率ですよね。でも、連載時は声なしでもできないことはない。音楽は凝らなければ使いまわせるでしょう。プログラムはどうでしょうか。一般的なゲーム(例えば戦略SLGとか)だと、システムを遊べるまで作り込むのは大変です。小分けはノベルゲームに限られるでしょう。ただし、戦略SLGのシステムは使いまわしてキャラが変わるというようなことは考えられます。原画は、シナリオと異なり分担することが困難で、途中で人が変わってしまうとかなり違和感が出ます。途中で切られるかもしれないし、いつまで続くのかも分からない契約を結ぶことになりますが、ここら辺に問題がありそうです。一つの会社に雇われていて、ある連載が終了したら別の連載に携わる、という形なら問題はなさそうです。全体の進行管理とかも考えると、ここら辺がネックになりそうです。

  • ユーザが納得しないのではないか

特に途中で打ち切りになった場合、確かに納得できない部分があります。ただ、これは人それぞれかもしれませんが、8800円で買ったけど冗長で投げ出したという事態よりは、かなりましなのではないか、という考え方もあります。

  • 途中参加しにくくなるのではないか

それを嫌った場合、並列型のシナリオにすればいいと思います。8人いたときに一本道に全員出てくるのではなくて、別々に攻略するようなタイプですね。好きなキャラだけ遊びたいという需要は意外とありそうです。例えば、メガネっ娘が好きだみたいな。

  • 最後が破綻するのではないか

ジャンプのマンガはろくな終わり方をしないみたいなことですね。連載中その場その場を盛り上げようとして、最後に辻褄が合わなくなると。ただ、パッケージの場合はいついつまでに出すと決めると期間が足りなくなる恐れがありますが、連載の場合は常に一定の期間があるわけです。

  • エロゲの性格上小分けに出来ないのではないか

エロゲはHシーンがメインになるので、序盤にHシーンを出してしまうと、もうそのキャラは用済みみたいな感じになってしまうし、といって引き伸ばすと連載を途中で見るのを止めてしまうかもしれない。確かに難しいところです。アダルトアニメは既に連載型ですが、大抵メインヒロインを後回しにする形にしています。

  • 小分けにしても全体のボリュームは変わらないのではないか

単行ゲにした時点で、それまでのエロゲと変わらないボリュームになるでしょうが、連載時に途中で淘汰されるものがあるので、エロゲ業界全体としては、ボリュームインフレが解消するだろうということです。だから元の木阿弥にはなりません。

結論

要するに連載型というのは負荷分散の仕組みですが、実現する上での様々な障害にも関わらず、将来的には有望なのではないかと考えます。というのは、PCや通信の性能が向上していくので、配信・DLの現実味が増していくからです。配信・DLに際して、プロテクトや認証の技術が色々必要になるでしょうが、今でも既に共有ソフトが脅威なのだから、手間を掛けても導入するだけの動機はあるでしょう。問題は作り手や受け手のヒューマンな部分にあると思いますが、いったんそういうものだとデファクトスタンダードが出来上がってしまえば、抵抗も少なくなるでしょう。


では、実現可能性は抜きにして、もしそういう連載型エロゲが出来たときに、今までより面白くなるのかという本質的問題を最後に考えましょう。一つは、配信型のエロゲの可能性があります。例えばある選択肢を選んだら、同時に他の選択肢を選べないという形にすれば、実際にボリュームを増やさなくても、不在の選択肢が想像の余地を作り出します。蓋を開けてしまえば、Aの選択肢はガムが貰えるだけでBの選択肢はチョコが貰えるだけなんだけど、プレイヤーの想像ではもっと違うものがあるという。更に一つのゲームにつき一人しか攻略対象を選べないとかも面白いですね。浮気できないようにする。どうしてもしたい場合は単行ゲを買わないといけない。


もう一つは、ユーザとのインタラクティブ性があります。例えば配信なら、プレイヤーがどの選択肢を選んだかという情報を送り返して、プレイヤーがどんな方向を望んでいるのか、一番ゲームに近い形のアンケートが取れるわけです。また、最初は全員がサブヒロインで、どの娘を攻略したいかという人気投票でヒロインの出番が決まってくるといったシステムも面白そうです。現実的にはシナリオで帳尻を合わせるのが大変だと思いますが、そういうキャッチボールで作っていくやり方が今までにないものを産み出すかもしれません。