萌魔導士アキバトロン(25)・一章終

「もう朝か……?」
身体を揺すられて志朗が起きると、そこは夢の中だった。無数の白人形に囲まれている。
「あんたはそこで見とき」
ロンがチャイナドレスを着て、あの廊下に立っている。
「まかしときいな」
そう言って素手のまま白人形に単身突っ込み、鮮やかな蹴りで片端からなぎ倒す。功夫だ。燕青拳か。柔軟な肢体を優雅な歩法で運用する。スマートで長い足が蹴るたび高く上がった。
「身体が軽いわあ。マッサージの甲斐あったな」
息も切らさず楽しそうに語る。白人形が次々壁や床に吸収されて消えていき、最後の一体を倒すと、あの黒人形が来た。
「あんなもん小ボスや小ボス」
突進した彼女はもの凄いで蹴りを繰り出す。身体が何回も舞って一方的に叩き込む。そして最後に廻し蹴りを叩き込むと、あの巨体が宙を舞った。床に叩きつけられると染みとなって吸い込まれていく。
「やった!!」
しかし、いきなり視界の外から平手打ちを食らう。
「な、なぜ??」
あの仮眠室で再び目覚めた。朝日が差し込む。制服のままだ。隣にはロンが体操着で抱きつくように寝ている。そして、目の前には眼を潤ませた萌が仁王立ち。
「もう、バカ! バカ! バカメロン! ボクは……」
彼は現実世界の方でピンチを迎えた。


   (二章へ続く)