萌魔導士アキバトロン(24)

「ちょっと待って」
「なんや。怖気づいたんかいな」
ベッドに備え付けられた頼りない灯りに壁まで照らす力はなく、室内のほとんどは暗闇の支配に屈服していた。会話が外に聞こえはしないだろうが、後ろめたいかのように声を一段低くして、志朗はささやく。
「こういうのはちょっと」
「勘違いせえへんといてな。Hするわけやないで」
話がうますぎるので、何かの罠ではないかと疑う。そもそも夢の中での戦闘からして、ただの厄介事とともいえる。ではもし、何も落とし穴はなかったとしたら、喜んで裸を見せてもらうのか。自問する。何か萌に申し訳ないような。でもなぜ彼女に遠慮しなくてはいけないのか。
「ああ、もう、肝っ玉の小さい奴やな」
「……ごめん」
「じゃ、体操着の上からでもええわ」
彼女はベッドの上で横になり、そのしなやかな肢体をしばらくの間、身じろぎもせずにじっと彼は見つめていた。
「ちょ、退屈やな」
「そう?」
「マッサージしてえな」
なんだ。それなら確かに筋肉のつき方が分かるかもしれない。美術を習っていた先生が石膏像を撫で回していたことを思い出す。視覚は先入観に影響されるが、触覚はより直接に立体を把握できるらしい。恐る恐るロンの腕を触ってみる。
「くすぐったい?」
「んーにゃ」
肘から下を撫で回してみる。やはり女の子の華奢な身体だ。でも腕は細いけれどしまっていて、鍛錬されていることが分かった。刀を振り回す絵理や銃を撃ちまくるLiloとは、また違う強さを秘めているのかもしれない。撫でている部分の感触は良いのだが、中腰の姿勢で腰が疲れてきた。
「ここ」
シーツの空いている面積をぱんぱん叩く。もうどうにでもなれ。考えるのが面倒臭くなり、誘いに乗ってしまう。それでも緊張しながらベッドに転がり込む。近くに身体が迫り緊張する。
「足も」
ぶっきらぼうに彼女は言う。志朗は生唾を飲み込む。ただのマッサージと思えば大丈夫だと思ったら、やっぱりドキドキしてきた。


   (続)