春期アニメ感想決算

今までも一話ごとの雑感は記していましたが、ここら辺で4〜6月のアニメ作品の感想を整理して記しておきます。まだ最終回が来ない番組もあるので、月末ギリギリにやった方が収まりがいいんですが、月末にタスクが集中しちゃうので今やります。基本的に、萌えからの視点で解説しています。60本以上あったのでそこは割り切って。絞ってもまだ量があるので、細かく作品の内容を追うことができず、すごく大雑把な話になってしまいますが、雑でもいいから大量のアニメを整理しておきたいので、まとめてみました。

1

祭り型アニメを代表する作品。話題を提供しつづけて大ブレイク。12話で祭りからライブに進化した。アイドル・バンドものでも及ばない圧巻のライブシーン。複雑奇怪なシャッフル構成の一方で、ふつうは手を抜くEDに至るまで丁寧な仕事ぶり。でも素朴にアニメだけ見たら、やっぱりよく分からないような。よく分からないと言われる全体の枠組みはポストエヴァと捉えるとすっきりする。また思考の現実化テーゼはひぐらしFateとも共通するし、くどい一人称もパッとしない主人公型かもしれない。インタビューによると構成会議には原作者も加わって、やはりかなり綿密に計画を立てていたようだ。長門は仁王立ちしないとか、長門よりハルヒの方が歩幅が大きいとか、言われてみるとなるほどと思う。そういう細部までよく神経が行き届いている。

前に解説したように、OPの印象が鮮烈。歌もいい。ダイジェスト版のように切り詰められた本編だが、次のFateも含め大長編化したノベルゲーム原作がみな抱える問題点か。粘着的な長いテクストによって生じる雛見沢の土着性とか、キャラの関係性のようなものまで描く余裕がない。本編でも同人的なドタバタは退屈だったしいらないと思うけど、重要な説明とか感情まで端折られている部分も。鬼隠し編での手紙の文面とか時系列的に矛盾してたような。また原作と絵柄が全然違うが、頭がデカイキャラデザは合ってるかも。怖いシーンでホラーマンガみたいな顔になるのはどうか。圭一がイケメンなのも合ってる。原作組の視聴者には謎解きは関係ないけど、とにかく絵が動いて声がつくだけでかなり見でがある。ところで原作者インタビューによると、各編を重ね合わせると矛盾が出るという立体視的構成らしいけど、アニメだとそこまで見る余裕がないような。

OPのdisillusionが良い。とにかく主人公がよく死ぬ。一話に二回死んだりとか。ゲームと違ってアニメは選択とか操作も出来ないし、主人公への一体感があまりない。特にイリヤの城に向かうときのセイバーは、お姫様を助けに行くナイトのように見えた。前半はゲーム的設定の面白さに対しての主人公の足手まとい感があって、つまり設定に遅れを取っていて、後半は設定全部がブラフで主人公だから打ち破っちゃうよ感があって、つまり設定を追い越していて、遊戯王じゃないけどゲーム的な設定と一応熱血な主人公とのバランスが実は悪いのではないかとも思える。ゲームのように二週目に入ったり他のルートを選ぶわけにもいかないので、結末はあれが必然なのか、さらにグッドなエンディングが欲しい、という感想はあるかもしれない。とにかくセイバーが萌える。まあ元ネタはアグリアスかもしれないけど(ブギーポップは露骨)、二次創作が源流に勝つこともあることだし。

2

これもラノベ原作組。ふつう主人公は近接戦闘型が多いんだけれど、そこをあえて不動+飛び道具にしたパターン。ガーゴイルが動かない分を若本喋りでカバーしてるが、どうしてもサブキャラの方が印象に残る。そもそも狂言回しで周囲のキャラはよく動くからそれでいいかもしれないけど。動かないキャラとアニメーションの衝突の処理があまり上手く言っていない。ただ一回過去に飛んだときの犬神がはまっていて、本編全体がこれの二次創作かと思わせる位で、解けた氷が涙みたいに見える演出が、動かない不満を解消していた。原作を継承した幼い絵柄は魅力的。白いタキシードとかがいい。

  • 女子高生 GIRL'S-HIGH

生活感があると萌えない。下ネタも萌えとは違う。おまけにコギャル的キャラ造形は萌え界では鬼門。そんな中で眼鏡の娘は普通の萌え文脈に入っているけど、あっさり彼氏が出来ると萌えが薄れる。眼鏡→勉強→禁欲という連想が眼鏡萌えの根底にあるので、何か欲求不満があると光る。その点では、まじぽか鉄子が身体とか記憶とか手に入らないのは適切なエピソードだった。文化祭でエスカレートして風俗っぽいことをやるシーンとかも、やはり青年誌的感覚。あとどうでもいいけど文化祭でメイド喫茶のパターンはいい加減飽きた。ハルヒなんかは1話で劇中の主人公だったみくるを、ミスディレクション萌え(この回の目的かのように)でメイドとして配置してたけど、何かひねりが欲しい。

関連に「プリンセス・プリンセス」。男の子にチヤホヤされるパターンでは「フルーツバスケット」の前半ギャグ・後半泣きみたいな切り替えがポイントだと思う。メイド喫茶と違って執事喫茶は雰囲気も重要みたいな話があるけど、そんな風に女性は自分がお姫様みたいに扱われていることが重要なのだ。この事情のために女性向けのコメディやギャグの感覚は、男のそれとは一線を画する。どんなにドタバタしても根底に「構ってくれる感」がないと不満なのである。女の子を放って置いてはダメなのだ。まあ題名に「ホスト」とあるから自覚的だと思うけど。

3

323絵ファンタジー。剣戟戦にそれほど迫力がない。しかしOPがとても爽やか。この透明感は323絵に合っている。ただ323絵は萌力があるけれど、次のSoulと合わせて血なまぐさい話にはどうも向かないようだ。「IZUMO」とかもそうなんだけど、異世界で戦う設定、それもアニメに移植するのは難しい。それはアニメではモブを一行で済ましてしまうわけにはいかないし、尺が決まってるのに大人数を捌かないといけないしで、結構大変だからだ。ただ、カミュが夜中に飛んでるシーンとか、キャラをポンと提示するシーンが結構いい。それでやはり戦争的緊張状態を描いてしかも維持するのは昔から難しくて、SAMURAI7みたいに7億掛けるか、あるいはゲド戦記みたいにドンパチがメインかと思わせといて全然違うみたいな、そういうかわし方か。

323絵SF(ちなみに、本家に比べると少し線が硬い)。銃撃戦にそれほど緊迫感がない。一番最初の模擬戦のノリで続いてしまう。しかし、本題は閉鎖空間でのウィルス感染もの。ディスクシステムデッドゾーン」の頃から、閉鎖空間でにっちもさっちも行かず、自己犠牲で助けるパターンは泣かせどころ。最近ネタで使われがちな若本も、イケメン子安とセットでナイスミドル担当と、スタンダードな配役。Fateもそうだったけど、イメージ映像的なHシーン。絵が綺麗なのはいいんだけど、うたわれと違って閉鎖空間ものは、いつ開放感を出すかが構成の勝負どころになる。宇宙には出られないけど、別に回想とかホログラムでもいいわけだし。そういうカタルシスの描き方では大友の彼女の想い出とかがある。どこら辺が違うかというと、Soulは神視点が取れるので壁があって行き来できないとか、そういう基本的な圧迫感が感じられない。後半での人物のナレーションの禁欲が完全に破られる(倒錯して陶酔した悪の語りみたいな)辺りで、閉鎖空間と神視点のバランスの悪さが上手く処理できてない感じがする。

マール王国とか、ああいうノリ。天使と悪魔の善悪が逆転するのはブラックマトリクスとかと共通。コメディとはいえ、恋愛要素でカバーできない分、善とか悪とか愛とかのテーマの弱さが気になった。あの一件落着ラストも中途半端な感じ。それまでの天界もそうだけど、CGまで駆使したラハールの怒りが不発。ラミントンが「魔界塔士SaGa」の神みたいなキャラだとスッキリするけどそうでもない。最後まで天使や悪魔の運用が保守的だったような気がする。ちょっと脱線するけど、ラグナロクのアニメ化で、主人公一団におひねりが飛んできた、あの大陸的な描写の驚きが忘れられない。それに比べると日本人でも感情移入しやすい常套的な天使や悪魔になっている。

4

マリみて。関連に「プリンセス・プリンセス」。白馬に乗った王子様。暴行未遂。とにかく受けに回る女の子が女の子女の子してて可愛い。でもヤミ帽の葉月みたいなツンデレ分が欲しくなる。G'sつながりでは、「フタコイ」とかより成功してる感じ。売上げとかは知らないけど。というのは、フタコイは双子じゃなくてもいい気がしてたんだけど、ストパニは女の子限定じゃないとダメだと思う。例えばシスプリみたいに主人公の妹ハーレムだと全然違ったものになる。箱入り娘感というか、男への媚びみたいなものが一切なくて、といって女の生活感も一切ない純粋さを得られるという旨味。GIRL'S-HIGHと対照的。

OKAMAデザインはおしゃれだが、単に忍者っぽくない。快楽天空間では威力を発揮するんだけど、この場合くのいちへのフェティシズムが発動せず、結果的にちょっと変わった学園もの程度にテンションが落ちてしまう。あんまり関係ないしマイナーだけど、桃井が主題歌を歌った「忍ちっく☆はぁと」もそんな感じだった。なんでみんな、くのいちの服を個性的なデザインにしたがるんだろう。好みもあるけど、そもそもカラフルなファッションは隠密行動に向かないと思うけど。メイド服よりビキニ鎧みたいな捉えられ方なのか。あとクローン的なややこしい設定とかより、「ありんす」喋りが突出して記憶に残ってしまう。なんか落語天女とかだったらいいと思うけど、忍者がそう喋るとおかしい。GUN道の蜘蛛。

ユルニメーション。透明人間とか設定が最後までよく分からなかった。海に人魚とかいたのに、魔界の住人でスクープになる辺りの辻褄もよく分からない。EDの電波ソングは狙ってていいんだけど、玩具だけじゃなくて絵もないと寂しい。また、平面りるは賛否が分かれるところ。妖精帝國の歌も含めて最初のOPは素晴らしいけど、同人誌の表紙的な羊頭狗肉の側面も。ずっとOVAみたいに画面が安定してて作画体力がありそうなので、戦闘を少し入れても良かったかも(戦隊とかあったけど)。正月のビッグ3みたいな英語禁止大会とかは別に魔界は関係ないし。鉄子の起動が萌える。4GBという貧弱な環境で動くシステムは人類にとってのオーバーテクノロジー

5

渋めのアニメかと思わせておいてのロベルタが圧巻。車にしがみつくのはターミネーター2。強いメイドというモチーフは、花右京みたいにお約束で済ませがちだけど、ここまで過剰に迫力があるのは珍しい。アサシンメイドだけでなく、グラサンを掛けたシスターとか、何かソース味の萌えが壷にはまる。煙草の火を移すシーンがエロい。物語の葛藤としては、結局金かという怒りがミソなんだけど「お前が言うな」という気もした。あと「シムーン」がそれほど空を感じなかったのに対して、水辺の情景が物語の綾に良い効果を生んでいる。まあ水はARIAも描いているけど。OPの歌もいい。

西洋風。美少年美少女の恋物語みたいな王道を今やろうとすると、永久アリスの介錯みたいにちょっと倒錯して崩すのが楽だと思う。いや、このアニメでも女装したりそういう雰囲気はあるんだけど。相手の身を案じてわざと冷たく接するとか、絵に描いたような古典的な恋愛設定なんだけど、今流行のツンデレみたいにちょっとデフォルメして、分かりやすくしてもいいかもしれない。ところで主人公の眼鏡はやはりハリポタ系なのか。あるいはみつめてナイトの眼鏡(ネメシスだっけ)みたいな。文科系眼鏡男子萌え?

やや笑うせぇるすまんが入った怨霊退治もの。ディスコミュニケーションもそうだけど、ゴチャゴチャしたアフタヌーン的画面の良さをアニメで出すのは難しい。あと「あそびたてまつる」とか決め台詞でなぜか少し赤面してしまう。ちびまる子的というか、アニミズムに親和性のある世界観を、ジャンプ的なモダンバトル形式に回収するときに、何か齟齬をきたすというか。そこら辺が、人間の欲望を描く系譜としての「巷説百物語」とかに近い「xxxHOLiC」と違う。あと現実と夢の切り替えを鮮やかにしたら格好良くなる。まあパーフェクトブルーとか千年女優みたいにしたらやりすぎだけど。

6

うおっまぶしっ。今期最も笑えた作品。スイカに塩というか、こういう作品によってアニメがより深く味わえるようになる…かも。ハルヒの一話と比較すると面白いかもしれない。コラでひぐらしの三四がエンカボウダンを撃ってるシーンがあって、すごくはまってる。あのニヤケは三四スマイルと共通していたのか。気を取り直して真面目に解説すると、他のまとめサイトが指摘するように、グレネーダーみたいなガンカタがやりたいんだと思うけど、実際は踊ってるようにしか見えない。ヤシガニとかと違うのは、崩れる土台がなくて最初から破綻しているところ。とにかく、あれほど緊張感のない銃撃戦をはじめて見た。後世に残る貴重な映像。簡易まとめサイトもよろしく。