萌魔導士アキバトロン(17)

クネクネ動く得体の知れないものがのろのろと近づく。萌は一歩も退かないが、志朗は少し後ずさった。振り返ると、背後にもいる! 教室から次から次へと出てくるそれは、みな白や灰色をしたのっぺらぼうだ。囲まれてしまう。萌はどこから取り出したのか、呑気にモップを構えている。
「この期に及んで掃除でもする気か!?」
「そうだよ。とりゃー」
素っ頓狂な声と共にモップ掛けを開始すると、萌のメイド服を赤いオーラが包む。炎のモップ掛けで、人型の物体を二、三体まとめて吹っ飛ばす。軽自動車に跳ねられた位の勢いで、白人形は壁に叩きつけられる。一体は壁に吸い込まれるように消えていく。間抜けな外見だが、なかなか威力がある技だ。しかし、白人形たちの数も増えてくる。
「萌、こっちも頼む!」
モップを掛けながら萌が廊下の端で折り返す。そのとき、廊下に染みが出来たかと思うと、一回り大きな黒い人形が萌と志朗の間に立ち塞がった。今度は萌の方が跳ね飛ばされてしまう。
「モ、モップが効かないだと!?」
萌を信じきっていただけにショックが大きい。学食の端の方にじりじりと追い込まれる志朗。普通の格闘は効くのだろうか。彼は思い切って殴り掛かる。巨大な消しゴムを殴るような感触。手ごたえがない。たぶん全く効いていない。数にものを言わせて押さえ込まれてしまう。こんなのろくさいやつにやられてしまうなんて。でも、一体何をされるのか。寒気がした。


   (続)