日本語の構造

日本語の構造

「おはよう。」「はてな?」「水!」のように例外はありますが、基本的に一つの文は一つの述語を中心として成り立っています。英語などの言語とは違い、述語は必須ですが主語は必須ではありません。*1倒置法など例外はありますが、基本的に述語が最後に来ます。そのほかの語順の位置は比較的自由に決められます。


「わたしはケーキを妹にあげる。」
「わたしは妹にケーキをあげる。」
「ケーキをわたしは妹にあげる。」
「ケーキを妹にわたしはあげる。」
「妹にわたしはケーキをあげる。」
「妹にケーキをわたしはあげる。」


いずれも可能でしょう。「あげる」という述語は木構造でいう「根」に相当し、他の文節が最終的に係る地点です。だから、上の文は「わたしはあげる」「ケーキをあげる」「妹にあげる」と三つに分解でき、同じ意味を表していることが分かります。

文章の構成法

語順は原則的には自由ですが、より読みやすい語順があります。また文頭での強調など、特定の位置に単語を持ってきたい場合があり、そのときは読点を打って読みやすくします。語順の原則は、長くて複雑なものが前に来ます。それが同等か逆順になるときに読点を打ちます。


もう少し理系的にアルゴリズムを考えます。句・節がAで述語がPだとすると、前述のように文は「A1,A2,A3,…An,P」のように並びます。ここで「A1≧A2」「A2≧A3」のように、前の方に長く複雑な句節が来るように語順をソートすると分かりやすくなります。


「長く複雑」の基準をもう少し詳細に見ると、「節>句」や「大状況>小状況」など色々あります。節と句の違いは、前者は述語を含むことです。状況の大小というのは、どちらがどちらを包括するかということです。例えば「東京秋葉原」が「秋葉原東京」とか、「2006年5月」が「5月2006年」のようにひっくり返るのは、なくもないですが不自然です。


上の基準を具体的に見てみましょう。「私は華やかに着飾って見違えるように変身した妹を見た。」よりも、「華やかに着飾って見違えるように変身した妹を私は見た。」の方が分かりやすくなります。「私は華やかに着飾って…」という出だしでは、着飾ったのが私であるかのようにも受け取れるからです。


「○○は〜」という形で題目語として文頭で強調したい場合があります。そのときは逆順になるので読点を打つことになります。「私は、華やかに着飾って見違えるように変身した妹を見た。」とすれば、見たのが「私」であることを、誤読を避けつつ強調できます。

長文でも読みやすい文章はある

ブログ文章術 米光一成 一文を短くって言うけどさ1


文章術の本は、一つ覚えのように短文・単文の方が分かりやすいと述べています。それは平均的には無難なアドバイスではあります。ただ、以上のような事情を考慮していないので、短くしか書けないという側面もあるような気がします。今まで述べた要点を押さえれば、格闘ゲームでコンボが繋がるように、長くても意味が通る文章を書けるようになるでしょう。


日本語の作文技術 (朝日文庫) 参考書籍

*1:ここらへんは議論の余地が大いにありますが、簡潔に記述するため他の主張を検証することは省きました。また今回の話は学校文法に基づいていないので、テストの答えに書くと×をもらうかもしれませんので注意しましょう