瞳の法則

http://acuvue.jnj.co.jp/health/structure/structure01a.htm
以下の記述での瞳孔と虹彩については上ページの図を参照のこと。
ここでは瞳孔と虹彩を合わせて黒目、他の眼球部分を白目と呼ぶ。

瞳の大きさと形状

なぜ大きく表現されるかは今回は省いて、制御方法だけ示す。
一般に、幼く表現したければ大きくする。顔の中に占める眼
の比率とデフォルメ率は比例し、頭身の大きさと反比例する。
これはさんざん各所で既出なのであらためて言うまでもない。


また、眼に対する黒目の大きさは、主体の純粋さを示す。
驚いて瞳が点になるのは、「自らを失っている」からで、
また意地悪するときに点で描かれるのも、不純さを表す。
(猫眼も派生。瞼の半開きは相手への疑いでやはり不純)


幽遊白書の飛影やエヴァのゲンドウ等の三白眼もそうだ。
ただし三白眼は上を見ている(反抗・嫉妬)のも大きい。
DQNのガンのつけ合い・飛ばしあいも上目遣いが基本)
一般に(一時的な)意地悪化は三白眼と点の黒目で示す。


では三白眼の逆の操作はどうなるか考えてみよう。
眼の下側は直線で上は曲線を描くという形になる。
これは、善意的なキャラを示す。分かりやすい。


三白眼萌えキャラはないこともないが(ガンパレ石津萌)、
よくある手法としては、眼の下側を瞼の直線で抑えると、
悪意がないような通常の萌えキャラを作れるはずである。


ちなみに、平行四辺形になると、信念の強いキャラを描ける。
北斗の拳から奇面組の一堂零まで、またうたたねひろゆき
描く妖艶な女性のように、様式的な言動をするキャラに向く。
また、あらいずみるいは台形型に分類される。情緒的である。


ここでの締めくくりに、エロゲ・同人における白目の剥き方を考えよう。
直接的には、性的絶頂を迎えて失神しそうだということの表現なのだが、
上で述べた不純さと関係ある。即ち主体を「汚した」ことの表現である。

直線と曲線、男と女

大別すると、四角い瞳と丸い瞳がある。四角には平行四辺形なども含む。
エロゲの絵は一見して見ると少女漫画に似ているようで、実は似てない。
大雑把に言うと、男性がターゲットの、エロゲのヒロインの眼は四角い。
対して少女漫画のヒロイン(主人公)は丸く、脇役よりも一回り大きい。
(ちびまるこは分かりやすい。フルーツバスケット(アニメ版)も)

対象\描き手 男が描く 女が描く
男が描かれた絵 男らしい 中性的
女が描かれた絵 中性的 女らしい

なぜそうなるか。一般に上図に示すように、
異性を中性的に描く傾向が見られるからだ。


やおいに描かれる男を、男が受け付けない、
ひいては腐女子自体を受け付けないのも、
そのような男性像を受け入れられないからだ。


一方で、特に戦闘美少女は、女がイメージする
自己像とはかけ離れるだろう。メカのモチーフとか。
要するに、サクラ大戦は男にとっての宝塚なのだ。


ではなぜ異性を中性的に捉えるのか。それは弁証法になる。
性的な欲望によって美化された異性の理想像というものは、
男(正)に対する女(反)に見えて実は中性(合)になる。


もっともCLAMP以降、少年漫画と少女漫画を分ける意味も
薄れてきてはいるが、男の百合が801程盛んでないように、
男女の非対称性は、いまだに維持されているようである。


ただし例外はいる。後藤圭二はたまに正円の目を描く。
インタビューで、眼球は丸いから丸く描いた、そうだ。
(瞼があるので、正円に近くなることはないとは思う)
下側を瞼の直線で抑えないと生命力の強い表現になる。

瞳のハイライト

マンガやアニメでは、黒目にハイライトを入れる。
イラスト系以外必ずといっていいほど入れられる。
黒目のハイライトが多いキャラはコメディに向く。
しかしなぜか。まず、逆の方向から考えてみよう。


黒目からハイライトが消えて瞳が一様になると、
主体の統御に遊びが完全になくなって硬直する。
それはしばしば、狂気や憑依として表象される。
ひぐらしにおける竜宮レナの豹変を思い出そう。
現実と虚構のようなある種の境界の消失である。
(ここで斎藤環の『文脈病』での考察は参考になるだろう。即ち、
「電波」な人は妄想を冗談かもしれないと考えることが全くない)


バブル時代のアニメはハイライトがデカく内容も軽いが、
今のエロゲは、ハイライトが控えめで、内向的な表現だ。
純愛系エロゲが「泣きゲ」と呼ばれることとも関係ある。


ここで、コミカルなシーンだけ、デフォルメキャラに
入れ替えるという手がある。その際ハイライトがなく、
単純な丸の、黒目か白目のSDキャラが、よく登場する。


白目か黒目かは好みだが、あえて分けるならば、
白目はギャグだということを明示したギャグで、
黒目はあくまでも真面目さを装うギャグに向く。

応用編

【猿漫】相原先生の萌えキャラ
コメント欄釣られ杉。この絵はネタとして計算されているので、
これはこれとして直す必要を感じないが、萌え流行という視点
から言うと、古くさい表現である。今は瞳についてだけ考える。


PLATINUM PENGUIN BOX
ここはやはり最強に強まっている萌え絵師をお手本にしよう。
この神によるトップ絵と、先程の相原画伯の絵を比較しよう。
サルまんはあくまでパロディだが、萌え絵の変遷が分かる。


トップ絵の女の子は片目を瞑っているので、左目に注目しよう。
男性向けなので四角い形をしている。更に台形型に分類される。
ただし、曲線も入ってきて微妙な中性感を醸し出しているのだ。


眼の下部を直線で抑えて、悪意がないキャラであることを示す。
黒目の割合が大きく、純粋さを示し、一方ハイライトは抑えて、
軽々しくならないようにしている。合わせてポーズも控えめだ。


ところで今回は触れなかったが、眼鏡はそれ自体テーマになる、
萌え小道具である。この絵では、よく見ると微妙にずれている。
しかも、瞳と同じ形をした眼鏡のフレームが瞳を横切っている。
これは、単なるズレ眼鏡ではなく冗語的修辞によるドジ表現だ。
(四角い眼鏡など他の形ではたぶんこう上手くいかないだろう)


この神の絵に対して画伯の絵は、まず散々指摘されたように線が太い。
アニメ塗りからエロゲ塗りへの進化と合わせ萌え絵の線は繊細化する。
イラストレーターでベジェ曲線を使用したりすることが、輪を掛ける。


アホ毛が頭頂部から生えているなど突っ込みどころは多いが既出なので、
顔の方に注意を向けると、鼻や口が大きいし、顎の角度が平べったい。
いよいよ眼について言うとまず、上では触れなかったが睫毛はつけない。


円形の瞳も少数派だが、それはさておき眼の下部に注目すると曲線で、
大袈裟なポーズとあいまって、媚びているのではないかという疑問が湧く。
三角の鼻も気になるが、瞳のハイライトのデカさが気になって仕方ない。


ハイライトが瞳の半分を占め、瞳孔を侵食してるし、虹彩下部まで来ている。
このキャラでは内向的表現に向かないので、たぶん泣きゲは作れないだろう。
というわけで色々な面を総合して、やはり現代萌え絵には向かないのである。
(もちろんサルまんだからわざとの面があるが、萌え理論だから仕方ない)

追記

今自分で書いてて本当か気になったので、PCゲーム攻略雑誌を一冊見てみたが、
少なくとも「相原先生の萌えキャラ」ほど下瞼が丸いキャラは殆ど見なかった。
(ただし、下瞼が省略されていて、瞳のカーブしかないものは含めない。)
当たり前だが現実の人間の下瞼はカーブしているので、やはり何かあるだろう。
もったいぶらずに言うと、現実の人間が持つ、「下心」のようなものだろうか。


泣きゲはリーフ(東京)よりKeyかもしれないが、いたる絵にも大体あてはまる。
どちらかというと、泣きゲは縦長台形より横長長方形が向いているかもしれない。
なお正円の眼は、綾波の見開いた眼のように、強すぎる印象を与える場合がある。
鳥や魚は正円の眼をしているので、本能的な強い生命力を表現してしまうのだ。