キャラはメタ消費というよりベタ消費としての利用価値が高まりつつあり、同人によるビジュアルの切り離しがそれを加速する、の続き

「キャラクターがメインの消費でキャラがメタ消費、という時代が終わり、
キャラこそがメインの消費であり、キャラクターはキャラを変換整形した結果に
過ぎないという変化が起こりつつある、ということだ。それはごく限られた
市場での話で、今はまだひぐらしにはまっている一部の同人ジャンキー
ぐらいしか実感していないことだけれども、確実に起こっている流れだ。
キャラクターとキャラの主従逆転が起こっているのである。全体補完
されるようになったSSは、もはや二次創作というよりも零次創作とでも
言うべきものであり、原作の作品から二次創作が派生するのではなく、
二次創作(の可能性)を変換した結果が、いわゆる今見ている原作なのである。」


反響があったのでこの部分をもう少し解説しておこう。

シュレーディンガー猫耳

萌える対象は多重の像である。例えばあるキャラに、
猫耳をつける・つけない、巨乳に描く・貧乳に描く、
と矛盾した記述を同時にできる。虚構の存在だから。
もちろん、作品の登場人物の単位では首尾一貫した
描写をしないと、同人誌であっても矛盾を感じるが。


だから、一つ一つの萌え系作品では薄っぺらいのだが、
ユーザの脳内では記憶が蓄積して多重像を描いている。
これが、萌えは論理的に語りにくい原因になっている。
そもそも一つのキャラの内部で矛盾しているのだから。
そこで、このブログでは可能世界論を導入したわけだ。

猫耳 猫耳
巨乳
貧乳


萌えるときの対象は、必ず複数的である。
ここではそれを情緒的・神秘的なものに
還元せず、マトリックス化してしまう。
例えばある作品のキャラクターが図のD
だとしても、脳内や二次創作ではA〜C
がありえる。更に実際は四通りではなく、
スク水」だとか「日焼け跡」だとか、
多種多様な組合せがありうるだろう。


そして、以前定義したが、萌えとは
可能・好きである。少なくとも一つの
可能世界では好きだろうということだ。
原作のDが好みに合わなくても、Bなら
好きだとか、Cなら好きだとか、萌え空間は
ユーザの多様な価値観を同時に満たしうる。


ここで、近代的で作家主義的な考え方ならば、
原作のDからA〜Cが仮構的に構成された、
とするだろう。が、冒頭に戻って言えば、
キャラがベタ消費されるとは、A〜Dの
萌え要素の集合が先に想定されて、その一部分に
原作が位置づけられる、という事態なのである。

チェシャ猫の笑いとオートポイエーシス

このように萌えにおいては、
Aか、Aでないか、どちらかだ、
という単純な二項対立は成り立たない。


少し大袈裟に言うと、萌えの対象は
運動しながら矛盾を乗り越えていく、
あるいはシステムと外部環境との
境界自体を産出するシステムだと
言えないか。即ちオートポイエーシスだ。


河本英夫は、以前インタビュー(の注)で、
チェシャ猫の笑いを例にしていたが、
対象を横断して概念を物象化する、
そのためのシステムが萌え要素なのだ。

構造を可視化するメタ言語

例えばとほほのWWW入門とは異なり、
W3Cの仕様と理念に忠実なHTMLとは、
論理マークアップのための言語である。
つまり、題やパラグラフなどの論理構造を
タグで明示したものがHTML・XHTML文書なのだ。


HTMLの要素化と萌え要素化は似ている。
例えば二次創作で属性を独自に描くのと、
タグを解釈して整形表示するブラウザは同じだ。
ツンデレタグなら釣り眼で描くだとか。
しかし、HTMLは単一だが、萌えタグは多様だ。
ここで、メタ言語であるXMLの概念が必要になる。
XMLの話で、ようやく冒頭の話題に繋がった。

○○的なモノ

今までの話を、もっと大雑把に簡単に言えないだろうか?
そこで、あえて言うなら「○○的なもの」の話と言える。
冒頭の「キャラクターとキャラの主格逆転」というのは、
「○○と○○的なものの主格逆転」に相当するであろう。


北斗の拳JOJOの奇妙な冒険のパロディは非常に多いが、
あくまで最強に強まった原作の偉大さは揺らがないのだ。
北斗>北斗的なモノ JOJOJOJO的なモノ
いくらネタにしても、それは原作の迫力の否定ではない。


ところが、赤松作品への反応を見ていると、逆転している。
ネギまネギま的なもの
これを更にFateからひぐらしの流れに当てはめられよう。
また、モッコスなどは、モッコス的なものの方しか価値がない。


だから「○○的なもの」の○○に当てはめると、
その物語なりキャラなりの流通価値が分かる。
本当だろうか? 面白そうだから後でやってみよう。


ちなみに「○○的なもの」的なものの例としては、
モーニング娘。」の「。」の使い方だとか、
「VIPクオリティ」の「クオリティ」が挙げられる。