「じゃんけん必勝法」はむしろ必敗法である

「ひたすらパーを出せ」ば負ける

法則1 ひたすらパーを出せ

実験ではグーが出る確率は35.0%。チョキは31.7%。パーは33.3%だった。
グーが多くチョキが少ない。つまりパーを出し続ければ勝率が上がる。

一、初心者にはパー

二、ベテランにはチョキ
初心者なのでグーはない。ならチョキを出しておけという。

1:初心者はグーを出す

2:最初はチョキ
「初心者はグーを出す」ということは、経験豊富な相手の場合は何を出せばいいのかというと、「チョキ」ということになります。

id:kurimax氏のネタにこうもはてブが釣られるとは。もちろん、「ひたすらパーを出せ」ば負ける。「実験ではグーが出る確率は35.0%。チョキは31.7%。パーは33.3%だった」から、100回ジャンケンをするときに、パーを出し続ければ、35勝・32敗・33引き分けになり、3勝分勝ち越す…

わけがない。

当たり前だが、パーを出すことが分かっていれば、相手はチョキを出すだろう。最初の数回は勝てても、90回以上負けて確実に大敗するのではないか。そして、全体の半分がパーを出し続けて負け、残り半分がチョキを出して勝つ、という結果を統計に取れば、今度はパーが50%・チョキが50%になるから、チョキを出すのが必勝法になる。しかし、もうお分かりのように、チョキを出し続けるのも、必敗法にほかならない。

もちろん、これは極端な批判ではある。確かに、実験結果からパーを少し多めに出すと有利だ、ということまでは言える。だが、それを意識し過ぎて、例えば、パーを50%位出してしまうと、手を読まれて、返り討ちのケースが出てくる。「最初にパー」戦法なども、回数を重ねれば、「あいつはいつも最初はパーを出すな」などと結局読まれる。

そして、人間は確率に従って行動するのは、よほど訓練しないと難しい。例えば、100回のうち3回多くパーを出せ、と言われてその通りに出せるものだろうか。というわけで、必勝法で必勝になるほど甘くはない。むしろ、「勝ちを意識し過ぎて負けてしまう」現象が起こりそうだ。統計だけでなく、ヒューリスティックな認知の偏りも、十分考慮する必要がある。

ただし、勝負の決着が付くたびに、相手が変わって二度と戦わず、かつ、対戦相手が前にどんな手を出したかの情報が隠蔽されている、つまり情報が毎回リセットされる場合、最初にパーを出すのが統計的に有利だと、確かに言える。要するに、前提条件が何かが問題なのだ。

乱数型と学習型

人間にはクセがあるので、全くのでたらめの手を出してくる完全な乱数のソフトが一番強いそうです。

だから、これは正しい。ただ、「強い」というより「負けない」という方が適切な形容だろう。なぜなら、先のパー(チョキでもグーでも)を出し続ける戦法でも、勝率約五割のイーブンだからだ。一方その戦法に対して、人間なら手が読めるので、最初の数回はともかく、後は勝ち続けて、勝率十割に近づいていく。

人間に対して強いのは、乱数型よりも、相手のクセを読む学習型のソフトだ。そのソフトに対して、人間がクセを読もうとしても、まあ確実に返り討ちに合うだろう。確率に関しては機械の正確(なランダム)さにはかなわない。だから、クセを読むソフトと人間が戦うと、ソフトの勝率が六割を超えるのだという*1

だから、人間側としては、なるべくランダムに手を出して、勝率五割に近づけるのが最善手だ、というのが、引用先の元発言の意味であろう。それは妥当な結論である。ところで、人間にはこのように偏りがある*2ので、ジャンケンを公平な意思決定の手段に用いるのはふさわしくないかもしれない。選ばれる者の意思では変えられない、抽選的な方法の方が公平ではないかとも思う*3

*1:元記事

*2:ちなみに、チョキが少ないのは、不自然な手の形なので、身体ハードの影響が現れているのかもしれない

*3:ただし、性格上抽選の結果は秘密にされるが、そこに故意の操作が加わる可能性がある。だから、多少偏っても、自分の意思で手を決められるジャンケン方式が採用されるという面もあるだろう