動機音痴が「好きを貫く」ためには
動機音痴の全体像
そして梅田望夫さん的な「好きを貫け」という話に繋げると、そのとき本当に自分が必要としているものを、「好き」だと感じるように人間はできているのではないかと思う。そして好きを貫くのが難しいのだとしたら、それは自分にとって何がそのとき本当に必要なのか、を見極めるのが難しいということだと思っています。
(そういう考え方がすごくADHD的だという気もするけど・・・)
「ADHD」は医学的概念なので、以下では「動機音痴」の比喩を使いましょう。動機音痴というのは、動機を形成する能力の弱さを、方向音痴に見立てています。迷って目的地に辿り着けない、あるいはそもそも目的地がどこか分からない。これでは抽象的なので、次に動機音痴の具体的なイメージを描いてみます。
動機音痴の人間像
「したいことはできない、できることはしたくない*1」という状態に常にある。そして、本当にしなければいけないことから、いつも逃げているために、大きな目標がなしとげられず、散漫な日々を送ってしまい、いつまでたっても大成しない。
優先順位をつけて作業できないから、嫌だが重要な作業を先延ばしにしてしまい、忙しいのに仕事が遅い。注意力散漫でミスが多い。いつも雑務に追われている。整理整頓ができず部屋が汚い。対人関係に不安がある。飽きっぽくて、何事も中途半端になってしまう。
こうした悩みは、人には相談できない。言ったところで、どうにもならない。努力不足とか甘えていると一蹴されて、社会人としてどうこうとか説教の具にされてしまう。高望みしてるわけではなく、せめて人並みの生活を送りたいと望んでいるのに、それも叶わない。
今年ももうすぐ終わるというのに、やらなければいけないことが山積みで、全然前に進んでない。この一年何をしていたのか。毎日流されたまま時が過ぎ行き、小さい頃の夢を果たせそうにない。空気の抜けた風船のようにしぼんでいく人生。陽も暮れた年末の気忙しい街頭に、独り立ち尽くす…。
動機音痴と動機地図
…というような状況に、全然当てはまらなければ問題ないのですが、「それなんて俺?」と思ってしまうタイプの、つまり動機音痴の人は、それではいったいどうすればいいのでしょうか。答えは単純明快です。
方向音痴でも地図があれば目的地に辿り着けるでしょう。同様に、動機音痴は動機の地図を描いて、常に参照しておく必要があります。例えば、試験前の夜に机に座ったら、気分が乗らなくて、いつのまにか大掃除をしていた*2だとか、その場その時の気分で行き先を決めないで、事前に決めた通りに行動する必要があります。
方向音痴な人ほど地図を嫌がりがちです。しかし、「本当に自分が必要としているもの」を見つけるには、迷うのではなく探す必要があります。ダンジョンRPGでマッピングをするように、道や壁や罠や宝*3の場所を書き込む必要があります。今ならRPGはオートマッピングでしょうが、動機のマッピングの方も、PCやWebでツールが揃っています。
もしかしたら、学生時代に優秀だったり、ある職業に就いていたときは優秀だった、ということもあるでしょう。動機音痴な人は、普通の人より別の感覚が優れているので、適材適所に配置されたり、興味のあることを見つけて、ツボにはまったときは、爆発的に上手くいきます。しかし、人生には迷う時期もあるので、そういうときにビジョンを見失ってはいけません。
疑問
しかし、こういう疑問があるかもしれません。一、スケジュールの管理だとか、そんな堅苦しい型にはめたら、人生がつまらなくなってしまうのではないか。二、だいたい今まで自己管理に成功したことがないから、どうせやってもムダだ。三、独立・起業などして、フリーでやっていくから構わない。
一つ目は、「おのれに命令できないものは、しもべにとどまる*4」という言葉があります。短期的なしたいこと(欲求充足)ばかり優先していると、長期的なしたいこと(自己実現)は達成できず、低水準の局所解にはまり込んで抜けられない、依存状態になりがちです。つまり、その日暮らしでは成長しないということです。逆に、大きな目標を達成している人はストイックです。
二つ目は、人間の身体ハードウェアは簡単に変えられませんが、習慣ソフトウェアの運用でカバーすることは可能です。例えば、方向音痴そのものは仕様がないけれど、方向音痴を自覚し、地図を持ったり早めに家を出たりすることはできるし、するべきだという話です。
三つ目は、フリーで活動するには、高度な自己管理が要求されます。実は動機音痴な人は、自営より会社員の方が向いています。それは、やることが決まっているからです。独立すれば、営業でも事務でも雑務でも何でも、初めのうちは一人でこなさなければなりません。
また、意外かもしれませんが、「ニート的」な生き方にこそ、管理が必要なのです。なぜなら、ニートが優越しているところは自由時間の多さ(だけ)なので、時間管理がずさんで、浪費してしまっては、まるで良いところがないからです。
結論
そういうわけで、「動機音痴は動機地図を描け」というのが結論です。「動機地図」というのは、具体的にはスケジュール管理法になります。lifehacks界で流行しているのは「GTD」とか「マインドマップ」ですが、自分に合った書き方でよく、最初はメモ帳に一日一つ予定を書いて実行するだけでもいいでしょう。スキーは転んで覚えるように、初めのうちは計画倒ればかりでしょうが、それでも、時間を掛けて覚えなければ、いきあたりばったりしかできないでしょう。
なおもちろん、以上は一般論なので、id:pha氏をはじめとして、特定の人に対して言っているわけではありません。pha氏は、開発したWebサービスがメディアに取り上げられ、才能とセンスがあるので、いかにも成功しそうでしょう。そうではなくて、そのように上手くは行かない場合のモデルなのです。最後に、動機音痴という比喩ではなく、もっと専門的な視点で取り上げている、下の書籍(書評)を紹介します。
関連書籍・書評
過去記事
- 「好きを貫く」と「好きを見出す」 - 萌え理論Blog
- 梅田望夫氏の「好きを貫く」についての考察。