ラノベ「携帯電話俺」

携帯電話俺 (ガガガ文庫 み 1-1)

携帯電話俺 (ガガガ文庫 み 1-1)

第一回小学館ライトノベル大賞佳作。主人公は目が覚めると携帯電話になっており、主人公の偽物(?)に持ち歩かれて、友人たちのいる大学へと向かうのだった…。

カフカの「変身」のような、不条理な設定で始まる物語。受身系の主人公は、携帯電話になってしまっても、カブトムシと話しても、あっさり受け入れる。最初は斬新な印象がしたが、ファンタジー的な後半の展開はあまり納得がいかない。結末も実質的にはノーマル〜バッドエンドくらいに終わった印象。イラストは悪くはないが、やはりケータイが主人公だと描きにくいか。

これは「ケータイ少女」もそうなのだが、魔法のような超越的な力を出して解決してしまう。それよりも、携帯電話の視点でしか分からないような――例えば他人の携帯の通話やメールが分かり、そこから人間の裏表が分かるだとか――人間関係の現象を繊細に描いてほしい。ポケットの中に入れられたり、女の子に見詰められたりするシチュエーションは面白いと思う。