ラノベ「たま◇なま 〜生物は、何故死なない?〜」

たま◇なま ~生物は、何故死なない?~ (HJ文庫)

たま◇なま ~生物は、何故死なない?~ (HJ文庫)

第一回ノベルジャパン大賞受賞。突然やってきた世界征服をもくろむ美少女宇宙人。主人公は、生殖の対象に選ばれてしまう。人間の常識を持たない彼女と、振り回される主人公の前に、「敵」の影が…。

序盤は掛け合い漫才。まるで「寄生獣」のミギーとの対話のような、噛み合わないシュールな会話が連続する。しかし、尊大な態度で露骨に性交を要求する部分は、こういうタイプのキャラの醍醐味ではないだろうか。特に、私を捨てるな、捨てたら女を殺す、というくだりは、無機質な言葉と有機的な感情がすれ違っていて、さりげなく印象に残る。中盤以降、意外とシリアスな展開になる。

率直に言うと、古典文芸的な文章・構成技術では、優秀賞の「SAS」や佳作の「カッティング」の方が上手い。もし私が順位を付ければ「カッティング>SASたま◇なま」のように、賞と順位が逆転する。だが、単に技術的なことだけでなく、荒削りでもラノベ的なけれん味のあるものを、編集部は大賞に選んだのだろう。イラストは、表紙が萌えでとても良いのだが、それに比べると本編中の挿絵は大味な感じ。