「キモイ」は空気病の症候

キライとキモイ

Something Orange - 「キモイ」「ウザイ」は王様病の症状。

 ところが、「キモイ!」という言葉は、「私は気持ちが悪い」ということしかあらわしていない。主語が「私」なんですね。

いや、実は「キモイ」の主語はないと思いますよ。省略しているとか曖昧にしている、位の捉え方でもいいんですが、いわば形式主語なのではないかと思います。「It rains.」は「雨」が主語ではないでしょう。同様に「It is キモイ」*1なのではないかと思います。この「It」はその場の「空気」です。すなわち期待された主体、「世間一般の人」のようなものです。「キライ」と言った場合は必然的に「私」が主語になりますが、「キモイ」と言った場合は、現象の発生に還元しようとしている心理が働いているような気がします。

 結局、何かというと「キモイ」「ウザイ」と言って済ますひとは、世界のすべてが自分にとって心地よい形であって当然だ、そうでないものはそのように変わるべきだ、と信じて疑わない「王様病」なのではないか?

だからそれは「熱い」とか「狭い」と同じように、私「でなくても」みんなそう感じるんだよ、という責任回避の姿勢を言外に漂わせていて、「王様」というより「ムラビト」の態度である、というのが相応しいと思います。「キモイ」というのは自己中心的に発せられた言葉なのではなくて、むしろ他者の視線(場の空気)と同一化しており(「みんなキモイと思うはずだ」)、だからこそ陰湿な言葉なのです。もし「私はキライ」とはっきり主語を明確にしたら、一人位嫌われても別に構わないと割り切れば、さほど気に障らないのではないかと思います。そうではなくて、「キモイ」は空気中を感染して増殖しうる(昼休みに「誰々ってキモイよね〜」)ところが嫌なのではないでしょうか。

*1:これはひどい」みたいに「これはきもい」という感じかも