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WEB漫画 「雨のドモ五郎」
たけくまメモ : 『雨のドモ五郎』がスゴイ

この物語は副編集長の針剛二の狂気によって、主人公のドモ五郎が化けるところに核心があります。

ドモ五郎には狂人の針が必要なのであって、まともな編集者ではありません。適切なアドバイスで技術力が高まるというようなレベルを超えて、限度を超えた夢や希望が必要なのです。
(田中実による解説から)

概要

『雨のドモ五郎』は、『まんが道』『編集王』『大同人物語』など、マンガ業界を描くマンガの系譜に属するだろうか。自己言及的に業界やその周辺を描く作品は、鈴木みそのように毒舌的な「銭」への注目、すがわらくにゆきのように「おれさま」日記的な脱力、といった変化球も多いのだが、この作品はひたすら迫力で押し通すド直球なマンガである。岡田斗司夫の提唱する「プチクリ」とは真逆を行く思想であり、竹熊健太郎が絶賛するのは分かる気がする。
*1

視点

登場人物たちがやたら濃い。同サイトの『僕です!』は軽い作風なので、この濃さは意図的なものだろう。主人公は竹中直人、編集者は蟹江敬三で実写化しても良さそうなものだ。女っ気もないし最初から最後まで暑苦しい画面が続くが、それはもうこのマンガの味なので仕様がないだろう。中途半端になってはいけない。


だが、一番最後のコマで話者が、現前している時空(いまここ)を超えて語っており、いわゆる神視点になっているところは違和感がある。物語のテーマにして主人公の目的なのだから、漫画家になったところまで描き切って欲しい。想像させるパターンの結末もなくはないが、漫画家志望一辺倒の主人公に合わない気がする。最後だけ時空を大きく飛ばす常套手段(「そして一年後…」)ではあるが、新人賞の受賞式にいる二人を直接描きトロフィーでも持たせておけば、その方が絵になるし読者の読後感が良い(モヤモヤが残らない)だろう。
*2

他者

精神病院がいきなり登場するのは驚く。精神病院を扱った『サイコホスピダー』という別の作品があって、作者にとっては登場させる動機はあるかもしれないが、予備知識のない読者には強引な印象が残る。もっとも、主人公に霊感をもたらす援助者としての役割を編集者に与えたと解釈できなくもない。上で引用した解説と被るが、99%の努力だけでは画龍点睛を欠くのであり、1%のインスピレーションが必要なのだ。それは自己にとっての他者がもたらす。この作品では業界人ばかりが登場しているので、その役割を精神病者が担うのだが、一般的には、純真無垢な子供とか初恋の女性などを他者にしておくのが無難だろう。
*3

*1:マンガ通なら専業アシスタントの存在では驚かないと思うが、今から二十年前の作品なので、当時の時代背景込みで考える必要はある

*2:神視点の話者は『週刊ストーリーランド』でも使われていたが、話者が透明化するのが近代小説の流れなので、古くさい印象を与える。ただし『ちびまる子ちゃん』『平成狸合戦ぽんぽこ』などは、全体がノスタルジックな話なので成功していた。こうした講釈師的な前景化する話者にはキートン山田がよく似合う

*3:精神病院の描き方は通俗的な気がする。『12モンキーズ』では、まず古いディズニー的なアニメーションが移っているTVを見せる。それ自体には恐ろしいところは全くないのだが、それが置かれている状況のために、不気味な効果がよく出ている