萌理賞の疑問に答える

ウィンドバード::Recreation - 第一回萌理賞について語ってみる

萌理賞についての疑問点。

各所でショートショートであることを前提にされている方を見かけるんですけど、規定にはショートショートと書いてありません。「オチに捻りがない」というのは減点対象になるんでしょうか。
というか、「おもしろい小説」と「萌える小説」と、どちらの評価が優先されるのでしょうか。

この疑問、特に後者は核心をついているので、主催者として答えておきます。

オチは重要か

「オチに捻りがない」というのは減点対象になるんでしょうか。

なります。正確に言うと、「オチに捻りがない」作品より「オチに捻りがある」作品の方が評価が高くなります。既存の小説賞が同じような評価をしているかは分かりませんが、少なくとも評価の配点を網羅的に事前に発表していることはないでしょう。


はてな人力検索にしても質問者が回答ポイントの配分する基準を全て発表している例も見かけません。就職活動の学生に対して「積極性(協調性・etc…)がない」と面接で減点対象になるという基準を、事前に全て発表する例もお目に掛かりません。セールスマンに対して笑顔じゃないと減点することを、玄関に貼り紙で出しておく家も見ません。


もちろん、「この賞はこういう作品を求めている」「わが社はこういう人材が欲しい」「来週のテストにはここが出る」「セールスお断り」と教えることはあります。しかし、それは任意になされることで、明示的に示しておかなければならない義務があるわけではありません。(が、美少女が最低一人出ないと減点…というか入賞はないという基準は示しておきました。猫をかわいがるお話のようなものを出してくる人がいるかもしれないと思ったので)


もう少し好意的に解釈すれば、オチだけを重視するのは偏った選考ではないか、といった疑問を含んでいるのでしょう。しかし、単に奇抜なオチがあれば他はいらないのだということでは、決してありません。「設定も展開も平凡」「何も出来事が起こらない」「状況設定だけ」といった作品は、自然と結末が弱くなります。結末は全体の構成と関係しているからです。ちなみに、それが最も端的に現れるのはミステリです。誰が犯人かということは物語全体に関係しています。


ここでもし、非凡な展開でドラマチックだがオチだけが弱い作品と、オチだけが突出している作品があれば、前者を取ります。しかし、ショートショートの定義はともかく、字数が少ない作品では題名や書き出しや結末が重視されるのは、それほど非常識なことでもないと思います。それは例えば、マラソンと100m走でスタートの仕方が違うとか、同人誌が表紙で判断されるのと同じようなことに属するでしょう。


ただし、設定も展開も平凡で、何も出来事が起こらない、状況設定だけのお話でも魅力的であることがあります。つまり、ヤマなしオチなしイミなしでも需要があり、消費されるジャンルがあります。それは例えば二次創作のSSです。もちろん非凡でドラマチックなSSもたくさんありますが。この問題については次で考えます。

面白さと萌え

「おもしろい小説」と「萌える小説」と、どちらの評価が優先されるのでしょうか。

「おもしろい小説」が優先されます。「面白い」>「萌える」>「夏」という順に評価しています。なぜ萌えを一番重視しないかというと、二次創作のSSがどうしても有利になるためです。本文が800字しかないのだから、何時間ものアニメやゲームの記憶があれば有利になるのは当然です。


しかし、その場合の有利不利も、あらかじめ私が知っているかどうかだけで、かなりの部分が決まってしまいます。「○○(という作品・キャラ)の二次創作賞」にすれば公平になりますが、今度は応募者自体がかなり限られてしまいます。(そもそもオリジナルの作品と明示していますが)二次創作を禁止しても、○○をオマージュした・インスパイアした作品を禁止するのは、線引きが難しいところです。


そこで、まず古典的な基準での小説の面白さをベースにして、範囲が広がりすぎないように萌えというテーマと夏というモチーフで限定するわけです。もちろん突き詰めれば、そこでの面白さも私が感じているものに過ぎませんが、他人の面白さを基準には出来ないので仕方ありません。協賛賞が介在することで、その偏りが薄れるのは歓迎です。またアンケートで一位を決めることも考えましたが、ポイントゲッターが作品全部を読むところを想像できず、効率が悪そうなので、今回は見送りました。アンケートにポイントを回して賞ポイントが減ってしまうのは避けたいところです。

オルタナティブ

別にこれまで述べた基準が普遍的だという風には考えていません。基準に不満な人が別の賞を作るのに反対したりはしないわけです。今回の目的は、まず人力検索はてなでこういう催しができるということ自体を実践してアピールする、という部分がかなりを占めていて、誰もが納得のできるような賞の基準を作ることは後回しにしました。これから賞が回数を重ねていくことで、基準が変化していくことも当然あります。


最後に舞台裏を少し言うと、選考途中で入選と佳作の評価の差はそんなに開いてなかったので、200ptが一つよりも、50ptが四つとか、分散したいと思うことはありました。それから、200字と800字では200m走と800m走くらい違うので、「400字程度」とかそういう基準の方がいいかとも思いました。そういう中でオチが強い作品が頭一つリードしたという具合で、最初からオチが弱い作品はみな落とそうとか考えていたわけではありません。


オチが弱い作品が並んでいる中でオチが強い作品があると光ります。これは他が全部無題で一つだけタイトルがある場合でも同様です。他が全部メイドで一つだけ巫女とかでも同じです。そういう他との差別化(TCGのメタのようなものかもしれない)は集めてから判明するもので、事前に配点できないという面もあります。すなわち、単にオチが弱い作品が集まったという見方をしたわけです。といって、もしオチだけが重要なのであれば、イラストは最初から問題外になってしまいます。そこまで偏ってはいません。というか、そもそもオチ以前に800字なのに冗長なのが最大の問題だと捉えています。


これで納得されるかどうかは分かりませんが、主催者としてはだいたいこんな風に考えています。