萌魔導士アキバトロン(22)

「志朗。今なら二人っきりやから、何でもゆうてみい」
「べつに……」
夢のことをロンに話すべきか迷う。解決につながる気があまりしない。それに見た感じでは口も軽そうだ。
「そう、レモンのことやけどな」
「!」
「単に食べ物のイメージなんちゃう」
「そ、そうかな。酸っぱいからあんまり食べないけど」
またしてもお見通しか。どうなってるんだろう。明かりに薄く照らされた彼女は、昼間の陽気な印象とはまた違っていた。今は帽子をかぶっておらず、髪は団子のようにまとめて、狭いベッドに腰掛けながらも、ブルマから伸びた健康的に日焼けした足をときどき組み替える。その動作はとてもしなやかで、絵理の優雅な立ち居振る舞いや、Liloの精密な一挙手一投足とはまた違った個性を感じた。
「苦戦してるんやろ」
とつぜん彼女は切り出す。話が全く見えてこない。
「どういうこと?」
「黒い木偶に」
こいつ。夢での戦闘を知っている? もしかして筒抜けになっているのだろうか。後で萌やLiloに確認しようと思っていたのだが、あの夢の中にいない彼女がなぜ知っているんだ。いや、そもそも夢の内容を他人が知っているのがおかしいのだが。謎は深まる。


   (続)