萌魔導士アキバトロン(20)

天井の蛍光灯が冷たく白い光を放つ。ベッドの周りはカーテンで遮られている。薬が匂う。もしかしてどこぞの病院に入れられてしまったのではないかと不安になった。カーテンの隙間からそっと外を伺うと、夜の校庭が見える。学園の保健室だろう。そっとつぶやく。
「人の夢で好き放題暴れやがって」
また長い間眠ってしまったのか。午後の授業はないからさほど問題ないが、記憶が飛んでいるのはやはり心配だ。差し迫った危険はないと判断した志朗は、少し心許ないままカーテンの外に出てみる。白衣を着た女性がいた。
「起きたのね、志朗君」
「……どうも」
彼女はスタイルの良い身体をしていた。タイトスカートからスラリと伸びた足を組んで座っている。眼の毒だ。
「この学園の保健医、藤見です」
「こんな時間まで、その」
「宿直よ。この学園には夜間部もあるし」
部屋の時計はもうすぐ深夜零時だ。夜遅くまでここにいて問題ないのかと彼は聞きたかったのだが、普通に応対しているからまあ大丈夫なんだろうと思い直す。
「急に倒れてしまって、お友達が運んできてくれたのよ」
そうだったのか。
「何か具合の悪いところはない?」
志朗が相談したいのは、何よりまず夢のことなのだが、他人に話してどうにかなることでもない。下手をすれば、宇宙人が電波で攻めてくる、というような荒唐無稽な話だ。それでも話して楽になりたいという気分もなくはない。彼は少し迷ったあげく、なるべく差しさわりのないように話しだす。
「最近変な夢ばかり見てて、例えば怪物と戦うんですが――」
藤見は神妙な面持ちで頷きながら聞く。職業上、馬鹿にしたりしないだろうが、変な奴と思われないか。
「分かったわ。そんな悩みを抱えていたのね」
「ええ。夢だから大問題ではないんですけど」
すると彼女は白衣を脱ぎだす。
「ええ!?」


   (続)