物語の冒頭型構成と結末型構成

モノーキー:二つの書き方


そうですね。小説・シナリオなど物語の書き方は、結末から書くか、冒頭から書くかのどちらかに大別されます。結末型の代表的なジャンルはミステリで、犯人が分かってないと困りますから。ミステリは、作者が探偵かつ犯人であるというのが最大かつ公然のトリックで、天才探偵の舞台裏ですね。犯人を決めないでスラスラ書ける人が本当の天才でしょう。ミステリの源流であるエドガー・アラン・ポーが、やはりこの結末から書く手法の源流でもあって、自ら提唱・実践しています。


冒頭から書く方で代表的なのは、ラブコメとかですね。伏線とかそんな求められてないですし。キャラが立って自分で動くのが魅力で、結末で縛ると自由恋愛になりませんから。犯人は最初から決まってるけど、「運命の人」は違うんです。他にファンタジーはミステリ風にも書けますが、TRPG的に書く(『ロードス島戦記』が最初TRPGのリプレイをやってたとか)のは、冒頭型ですね。(作者の仮想人格の一つである)ゲームマスターは最低限の設定は抑えておくけれど、後は(作者の仮想人格の一つである)プレイヤーが転がしていく。


冒頭型・結末型が2タイプあって、あとこの前言った主題型・方法型の2タイプあって、ミステリは結末・方法型(誰が犯人かという結末と、トリック対推理が小説の主な興味になる)ですね。それから主人公(話者)が一人称と三人称(二人称はなくもない)があって、これもミステリでは選択が重要です。主人公=探偵での一人称は推理がバレて苦しいので、普通は一人称でやるなら助手を形式主人公におきます。三人称でやる場合は叙述トリックに制約がでます。


この前のライトノベルのべからず集では、(初心者は)視点は途中で移動してはいけないと書いてあって、確かにもっぱら主人公に焦点化する一元描写が近代小説の流れです。つまり、神視点(大きな物語とかも)を前提にしにくく、視界が個人に制限されるのが近代の宿命です。ただ、ホラー(殺人鬼が迫るのを眺める)・コメディ(誤解を全体から眺める)・ポルノ(二人の内面を眺める)とか、暴力・笑い・性を扱う近代での周縁的なジャンルは可能です。また映画はカメラがあるので、その流れでマンガとか映像系のジャンルは可能です。


ポルノに関してもう少し補足しておくと鏡裕之が、会話が軽いエロゲでHシーンだけ官能小説みたいではミスマッチで、Hシーンを主人公の視点で書いた方が文章に若さが出る(ヒロインは幼さを強調しているだろうし)と言ってますね。それと特に陵辱系のエロゲではヒロイン視点が取りやすいことが興味深いです。SMでの「御主人様」というのは「奴隷の奴隷」であって、ある意味では快感を得る奴隷が主人なのです。ひぐらしも途中から主人公(視点)が切り替わりますが、圭一はハーレムの主人のように見えて実はスケープゴートだったわけです。