萌魔導士アキバトロン(6)

蒼髪碧眼の少女の視線に衝突した。志朗を見つめる意味深長なまなざし。現実世界で出遭ったことは無いはずだが、知っているのか。彼女は横目で睨む。そこには巫女装束を着た絵理がいる。手にしているのはあの日本刀。きらめく刀身は周囲のビル街を映す。彼は後ずさって二人から距離を取った。二人とも味方なのか敵なのか分からない。


絵理は少女に斬りかかる。彼は止めなくてはいけないと思ったが、足は固まって動かず、声も出せない。ただ無力に眺めているしかなかった。絵理の剣戟は残像が見えないほど早い。それを紙一重の間合いで全てかわしている。そのたびに少女のロングストレートの髪が流れるように揺れる。素手で戦うなんて無茶だ。この六冊目を……。


これは現実ではないのか。色彩は豊かだが輪郭はぼんやりしたレモンの夢に比べて、より鮮明にはなっている。しかしまだ現実感に乏しい。思うように身体が動かせないし映像の前後がおかしい。だんだん視界の動きがコマ落ちして飛び飛びに見える。色落ちしてゆく。音が消える。闇に包まれた。


志朗は布団の中で眼を覚ます。眼球の動きだけで周囲を探る。二十畳くらいはありそうな広い和室に寝ている。少し離れたところに絵理が座っていた。今さら騒いでもどうにもなるまい。彼は身を起こす。


「目を覚まされたか。志朗殿」


   (続)