漢字的概念の世界から、記号的デザインの世界へ

全角英数は気持ち悪い

ブログ文章術
コメント欄で「とりあえず全角英数は気持ち悪い」という意見が出たが、
これはモヒカン的なものであるにしても、ネットでよく見かける主張だ。

全角英数を使わない派

ARTIFACT ―人工事実― | 全角アルファベット
アルファブロガーも気にしている様子。


電子納品関連資料(官庁営繕関係)
国土交通省でも全角英数は禁則文字になっている!
(厳密には全角英数を直さなくても通る場合もある?)


JSA Web Store-規格詳細情報(JIS)
また規格の本家JISでも全角英数の使用を認めていなかった、と思う。

全角英数・半角かな・機種依存

結論から言えば、全角英数はなぜ嫌われるかというと、
それは半角かなや機種依存文字と似たような位置にあるからだ。
(半角かなはメールサーバなどで処理する際文字化けした。
 また機種依存は文字通り特定の環境でしか表示されない)


ただし「気持ち悪い」という言い方は美的判断を含んでいるので、
それはプロポーショナルフォントと見栄えの問題になるだろう。
つまり全角英数は横に間延びしているように見えるというのだ。


全角英数と半角英数は別の文字だ。全角英数の実体は、JISX0208の英数字・記号で、
UnicodeではU+FF01〜U+FF5E) 外見だけは似ているが、ASCII文字ではない。
例えば「Japanese Only」という表現は、表現の内容もおかしいが、
そもそも外国人のPCの環境では見えない、化けている可能性が多いにある。


従って入力を要求される場面では、基本的に英数字は半角で書くのがよい。
例えばURLは半角だし、メールアドレスを全角で書いても届かないだろう。
だから全角で書いてしまうとコピペして即貼り付けられないので面倒だ。
またタイピングゲームでも「日本語入力を切ってください」と言われる。


プログラミングでも基本的にソースは半角で書く必要がある。
(ただし、なでしこなど日本語で書く特殊な言語もある。
 またHSPは日本語の変数名が通るので、色々例外はある)
半角でも全角でも通る場合があるが、それは内部で正規表現などで置換しているのだ。


ちなみにそもそも「全角・半角」という言い方がナンセンスだという意見もある。
この呼び方はワープロMS-DOS時代の名残で、現在では縦横比が固定とは限らない。
では1バイト・2バイト文字はどうか。これも3バイト以上のマルチバイト文字があるし、
2バイトの半角文字があったりするので、名称を何と呼ぶのかは難しいところだ。

紙は死んだ―記号的デザインの時代

http://www.asahi.com/
http://www.yomiuri.co.jp/
http://www.sankei.co.jp/
http://www.nikkei.co.jp/


しかし、asahi.comをはじめ、新聞系列のサイトは英数を全角で表示する。
これは新聞の組版CTS)の関係でそうなる。それをサイトでも踏襲している。
ただし日経のサイトは少し別で、これは数字を扱っているからだろうか。


それに印刷関係では文字の位置調整で、数字の一部を全角にしたりする。
奇数字の半角が混じると、行末がずれてしまうからだ。悩みどころだ。
漢字は正方形のマスに収まるが、英字は縦と横で違う(プロポーショナル)。
印刷関係の人から見れば、webでの文字にも、また別の気持ち悪さを感じるだろう。


だから全角と半角の対立は、紙文化と電子文化の軋轢でもあるのだ。
しかもそれは米光が改行によって活字文化とブログ文化を対比する
のと同じ構図だ。漢字的概念の世界から、記号的デザインの世界へ。
神経質になる必要はないが、文化の衝突は細部でも生じているのだ。

補足

冒頭に戻って、では全角英数は完全にいけないかというと、私も使いたい。
なんだそりゃ、と思われるかもしれないが、半角では表現が弱いという
すごい文系的な理由で使う。特に、「NHK」など大文字で数文字の
略称は全角で表記したい気分になる。それに、ふつうのブログではよく
顔文字やAAを使っているから、もともと表記の意味の同一性なんかないし。


顔文字やAAは文化だと思うので、認めたい。だから表記の揺れは気にしない。
(このブログで顔文字を使わないのは、情緒的に書きたくないという理由)
半角英数が正書法ではあるが、PGみたいに工学的に文字を使う場面以外では、
別にいいんじゃないか、という脱力的な地点を落としどころにしておこう。
というのは、今見ても記述がいい加減な箇所が残っているが、推敲が疲れる。
しかも、ほとんどの人にとってどうでもいいことで、アクセスに繋がらない。


あとこれは蛇足だが、森博嗣が「ミステリィ」と呼んだり、
「コンピューター」を「コンピュータ」と表記するのも
JISから来ていたと思う。なぜ最後の「ー」を取るかというと、
ハイフンや漢数字と見間違える可能性があるからではないだろうか。