魔法の名前はゲームにとって「本質」的か
吹風日記 - 「ぱふぱふ」はなぜ消えたのか、聞こえない音、エロい日本のドラクエ
お前ら全員、死んでしまえ。
これはひどい。無意味に差別的である。
日本の言語は特殊か
だいたいエロの本質は視覚ではなく、聴覚ですよ。
無根拠に断定するが、これは本当だろうか。エロマンガやエロ同人誌には音がない。ライトノベルにも音がないし、フィギュアやコスプレにも音が(目的では)ない。声のないエロゲギャルゲの方が画像のないエロゲギャルゲよりも圧倒的に多い。この事情は例えば視覚の方が受け取る情報量が多いからかもしれない。もちろんだからといって、それをもってただちに聴覚より本質的とするわけでもない。
例えばマンガのフキダシの台詞は本来は音声言語だとか、「ドカーン」「ゴゴゴ」などと擬音が使われていることをもってして、音声が本質的だというような論理展開はありうる。だが、フキダシの形が四角ければナレーションであるというようなことは、音に還元できない約束事であるし、擬音は書き文字として形を持つことで、受け手のイメージを変える。こうしたケースで一方的に音声が本質的にイメージを決めているというのは不当だろう。
お前らの知能は牛レベルか? これはまさに文化の破壊。
洋画の吹き替えの訳語がおかしいことももちろんあるだろう…。
最強はやはり手塚治虫が考案したと言われる無音を表す擬音「シーン」です。まさに神の仕事です。
「しんとした」。
この、音のもつイメージの喚起力、というのは、実は英語より日本語のほうが上なのではないでしょうか?
「cock-a-doodle-doo」より「コケコッコー」に鶏のイメージを喚起させられるのは、日本人なら当然である。擬音語・擬態語は有契性を持つから、他の言語でもその国の言葉が一番イメージを喚起させるだろう。「oink」「squeak」「neigh」など日本人には感覚が分からないだろうが、それをもってイメージ喚起力がないとすることはできない。それはずるい。
当初は日本的な要素などまるでないように見えたRPGの世界ですが、実は隠れた日本的価値観に支配されていることが分かります。
台詞は日本語の文章で書いているのだから、日本的価値観が隠れていてもおかしくないだろう。日本語に擬音が多い、といった指摘もよくある凡庸なものである。しかし、それが日本特殊言語(文化)論から自国中心主義的なナルシシズムへと至るのは警戒しなければいけない。
ファンタジー系RPGの舞台が欧米中世になっているというようなレベルだけではなく、そもそもRPGがアメリカで生まれて、さらにそもそも、コンピュータもアメリカ生まれである*1。プログラム言語も英語がベースになっているものが多い。「インターネット」も「ブログ」も日本で生まれたわけではない。もし日本語にイメージの喚起力があるとしても、イメージできないような論理的な領域は不得手かもしれない。
言語の特性を考えるまでは構わなくても、どんな言語が優れているかというのはつまらない。もちろん違いはあるが、それは言語が指し示す対象の違いも考慮に入れないといけない。例えば、雪の降る地方であれば雪に関する言葉が豊富である、といったことだ。言語はある種の普遍性を持つだろう*2。
もし、少しでも「自由」へと近づく方法があるのなら、それはきっと「学ぶ」ということ、「知る」ということであるはずだ、と私は思います。
従って、そのように主張するのであれば、「日本的な要素などまるでないように見えた」世界に、「隠れた欧米的価値観に支配されていること」も指摘できるだろう。例えば、「自由」も訳語である。「自由」という言葉自体はあったが、それも仏教用語経由であるし、自由の意味の「本質」をなす「個人」「社会」といった喚起される他の概念も欧米社会のものだ。
魔法の名前は「本質」的か
アメリカ人には、説明書を見て呪文の効果を確認する瞬間の、あの何ともたまらん胸のトキメキ感が理解できないと見えますw
(記事のコメント欄より・文章の作者とは別)
断っておくと、私自身は別に英語もできるわけではない。ドラクエが好きだし、ウルティマやウィザードリィの影響が強い(というかパクリ)としても、それらより面白いと感じる(ほんの少しだけ触ってみたが、難易度が高く不親切な感じですぐ投げてしまった)。またアローンインザダークよりもバイオハザードの方が面白いと思う。また元の記事も、人を乗せるのが大変上手い文章である。われわれ日本人の読者が良い気分になり、だからはてブでたくさんブクマされたのだろうし、コメント欄も賑わっているのだろう。しかし、だからこそ、自国語が慣れ親しんでいるというレベルで優越感を感じるのは、一番安易な方法であり、その誘惑に甘えて飛びついてはいけない。
だいたい、ドラクエの魔法の「ギラ」「メラ」あたりは擬音だろうが、「バイキルト」「アバカム」辺りは「倍斬ると」「暴かむ」といった意味のつながりではないだろうか*3。それに、ファイナルファンタジー(やスクウェア系RPG)は「ファイア」とか「ブリザド」だが、名前が日本的でないからつまらないといった経験は全くない。「ファイア」でも炎のイメージが喚起される。この前「ポーション」がコンビニで売られていたが、日常では全く使わない単語にも関わらず、あの青い瓶で回復のイメージが喚起される。
もっと言うと、「ギラ」からギラギラしたイメージが、「メラ」からメラメラしたイメージが喚起されたかというとそうでもない*4。ドラクエシリーズの初期は呪文は画面が光るだけだったので、あまりイメージが喚起されなかった。対して、ファイナルファンタジー(その後のドラクエ、特に5から)では「ファイア」が起こす炎が見れたので、イメージが喚起された。またどちらかというと、音声によるイメージ喚起で言えば、言語に還元できない効果音の方が印象的だと思う。スーパーマリオのキノコを取って成長した電子音は日本語で(英語でも)表現しにくいが、あの音を聞くとマリオだとすぐ分かる。プレイしていれば恐らく外国人でも分かる。
そもそも、ゲームにおいては魔法のダメージの数値といった要素が「本質」的とも考えられるではないか。パラメータによるゲームバランスというのは数字に過ぎないから、国による特殊性もないし*5、何かイメージや情緒が喚起されたりもしないが、日本のゲームが優れているのはそこだと思う。そしてまた、そこに言葉の壁を超えて流通させる力があるのだと思う。
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