映画『犬神の悪霊』 ――玩具箱のようなカルト・オカルト映画
概要
- 出版社/メーカー: 東映ビデオ
- 発売日: 2007/07/21
- メディア: DVD
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物語(あらすじ)
(注意:以下、ネタバレあり)
ウラン技師・加納竜次(大和田伸也)は、同僚の安井、西岡とともに、ウラン鉱探査のため、地方の寒村までやって来た。その際、一行を乗せた自動車が、道ばたのほこらを壊し、犬をひいてしまった。
その道中の川べりで、裸で水浴びしていた村の娘・剣持麗子(泉じゅん)と垂水かおり(山内恵美子)を、一行が見つける。そうして知り合ってから一年後、竜次は麗子と結婚。
だが、東京の被露宴会場で、西岡が錯乱する。その後、彼はビルの屋上から落下して死亡。さらに西岡の葬儀の日、安井が多数の野犬に襲われ死亡した。
ふたつの事件を怪しんだ麗子は、ほこらを壊した件を竜次から聞いた。そして、それが犬神の悪霊の仕業だと勘づくと、彼女は御守りを竜次に渡した。さらに、「犬神筋」である垂水家の娘・かおりからの手紙に、釘を打ち付け呪った。
だが、犬神の悪霊をめぐる悪夢のような事件はそれだけで終わらず、竜次はさらに深く巻き込まれていく。ついに、愛妻の麗子にも異変が起こり……。
解説
玩具箱のようなカルト・オカルト映画
少し昔の映画も取り上げておこう。本作は1977年公開だが、最近までDVD化されず、カルト・ムービー的な位置付けにあった。『エクソシスト』『オーメン』など、70年代当時のオカルト映画の流行を受けて、東映が公開した作品。ちなみに、前年に東宝から『犬神家の一族』が公開されているが、本作の内容とは関係ない。
この映画は、まるで玩具箱をひっくり返したようだ。悪霊というホラー要素、動物によるパニック、犬神筋にまつわる地方の差別問題、原子力開発に伴う環境汚染、横溝正史的な旧家の秘密、などと色々な要素が詰め込まれている。
そのように詰めこみ過ぎた結果、問題が解決しないまま次に進んで、焦点が絞り切れていない印象もある。しかし、次から次へとテンポよく事件が起きるので、最後まで全く飽きずに見られた。
カットされた部分もあって、つながりが分かりにくい場面も多少ある。が、全体的に明快な話だ。そして、サービス精神旺盛で、娯楽性に富んでいる。それは、主人公が変に感傷的にならず、つねに行動的だという点が大きいだろう。
見せ場も多い。いきなり裸で川に登場する麗子とかおり。麗子の身体に赤飯をなすりつけるエロティックな除霊儀式。坑道で踊り狂う殺人ドリル。かおりが悲しみを振り払うために踊るゴーゴー。憑依された少女の肩車アクション。そして、問題のラストシーン。
本作は古い作品だが、いま見たほうが、アナクロな演出と、強引なくらい力強い展開を楽しめる。ユーザの嗜好やマーケティングなどにスポイルされるため、そのような昭和的ダイナミズムを、今の時代に再現するのは難しい。いま見ているから時代錯誤というだけでなく、当時の時点からすでに錯誤していたからこそ、実現した力強さかもしれない。
ホラーとして本作を見たとき、Jホラーブームを経た現在見ると、もはや素直に怖がれなくなっている。ただ、逆の視点で見ると、リアルな恐怖を描くために、Jホラーがどのような演出を取り入れたのかよく分かる。時代を経ているため、同時代のものより、かえって差が目立ちやすい。だから取り上げたのだ。
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