ヤマト発動機(ボート工場)・桐生ボートレース場・見学レポート

概要


桐生ボートレース場での一場面。選手は、遠心力に負けないよう腰を浮かせた「モンキーターン」というフォームでコーナーを曲がる。(※写真はクリックで拡大)

 2010年11月3日(水)、センバツ・CyberBuzzの企画で、「ボート工場見学バスツアー」が開催された。

 このイベントは、公営スポーツであるボートレース(旧名称:競艇*1)を広く理解してもらうため、ボートレース振興会の提供で行われた。ボートレース振興会・広報部広報課係長の平山氏が、引率と説明のために、現地まで同行されている。

 ボートレース用のボート工場「ヤマト発動機」と、桐生ボートレース場を、筆者は実際に見学したので、以下で詳しくお伝えしたい。

ヤマト発動機」見学

競艇ボート&モーター [ヤマト発動機 株式会社](公式サイト)


▲写真左:ヤマト発動機の広大な工場敷地/右:下の丸太が、上のボートの原材料になっている。

 ツアーではまず、新宿からチャーターバスに乗り、群馬県ヤマト発動機・工場に向かった。ヤマト発動機に着くと、同社・専務からあいさつを受けた後、工場内を見学した。ちなみに、日本のボートレース用のボートを製造しているのは、日本でここだけだ。


▲写真:小さな木材を削る大きなロボット。微妙な曲線を仕上げることが出来るという。他にも塗装用ロボットなどがあり、ベテランから動きを学習しているという。

 工場内では、まずボートの製造ラインから見て回った。ラインでは、作業員とロボットによって、船体を構成している木材の加工・塗装などの作業が行われている。


▲写真左:/右:組み立てられたものと、塗装された製造途中のボート。

 公営競技に用いる性格上、公平性はとても厳しく検査される。ボートの全長約300ミリメートルに対して、納品するボートの最大と最小で±3ミリ、重量約70キログラムに対して、±100グラムの誤差しか許されない。

 船ごとの性能差が出ないように、組み立て途中で、部品ごとに各種の検査が行われている。こうした精度が求められる製造現場のことを、工場内を案内してくれた同社の営業・広報の方は「ミクロの世界のものづくり」と表現した。


▲写真左:モーターエンジンの組み立ては手作業で行う。/右:画面の機械は、ヤマト発動機の社員の方が手に持っている、小さな部品を検査するためのもの。人の出入りによる気流の影響を与えないため、この部屋は二重扉になって気密されていた。

 金属製品の加工では、大きさがミクロ単位で変化してしまうため、室温や湿度が一定に管理されている。検査に失格した部品は流出しないように管理されているが、そもそも廃棄量が問題になるほどの不具合品は出ないという。


▲写真左:プールでモーターの試運転を行う。水流の影響の関係で、プールの深さは4メートルある。環境に考慮して、排水は濾過して再利用し、定期的に業者が処理する。/右:倉庫で出荷を待つモーター群。

 全国24のボートレース場に、それぞれ仕様が異なるボートを納入する。1レース場につき、1年で60〜70台、全体では約1600台ほど出荷される。モーターが付いたボートの値段は、一台100万円台。ただし、競技用のボートは一般に販売されない。


▲写真左:ボートの完成見本。思ったよりも薄く、大きなサーフボードにモーターがついたような印象。/右:ボート後部のモーター部分。騒音対策もあり、スクリュー部分の後ろの水中へと、自然排気するようになっている。

 レース用のボートは、一般のものより高速になるよう、様々な工夫が施されている。たとえば、バックギアや全体を覆うカバーなど、「ムダなものが一切ない」という話だ。また、搭載した専用燃料で10分しか走れない。まさにボートのサラブレッドだ。

 ボートやモーターには性能差がほとんどないということだが、使用されているうちに微妙な違いが出てくる*2。後述のように、ボートとモーターの勝率となって現れる。

 特にプロペラは選手の持ち物*3なので、試合中は叩いて調整している*4という。調整による違いは、紙一枚のわずかなものだが、それが勝負を左右するのだという。

 案内してくれた同社・社員は、試運転するために操縦もできるそうだ。慣れないと曲がろうとするだけでも難しいらしい。その方がボートレースを見ていると、「ボートの動きを見てしまう」という。普通の人は勝敗に注目するところだが、さすがボート造りのプロだけあり、エンジニア的視点で見ている。

桐生ボートレース場」見学

BOAT RACE 桐生 Official Site -(公式サイト)


▲写真左:桐生ボートレース場のゲート前。/右:桐生ボートレース場の南ウィング側面。屋内には、無料席と有料席がある。

 ツアーでは次に、同じく群馬県にある桐生ボートレース場に向かった。ここ桐生のほか、東京なら平和島や江戸川など、公営ボートレースは全国24のレース場で開催される。レース場によって、気候やボートの仕様などが微妙に異なり、勝敗を左右する。


▲写真左:レース場内の競争水面。/右:コーナーを曲がるレース選手たち。エンジンの爆音を立て、水しぶきを上げながら、迫力のあるコーナリングを見せる。水しぶきなどで前が見えず、選手は手探りでコーナーを曲がるのだという。

 プロのレース選手はボートレーサーと呼ばれる。全体で約1500人いて、うち女性が1割=約150人。ほぼ同条件の男女混合で試合が行われるプロスポーツは珍しい。また、10〜60代と幅広い年齢層の選手がいるのも特徴らしい。

 レーサーの平均年収は約1600〜2000万円。レースの優勝賞金は最大で1億円。A1〜B2まで成績によって4クラスに別れており、トッププロのA1は約300人いる。代表的なレーサーのひとりが松井繁氏で、通算獲得賞金・史上1位を記録。

 レーサーになるには、福岡県のやまと学校に入学して、1年の訓練を受ける必要がある。入学には年齢や体格の制限があり、試験は20倍の競争率と難関になっている。ただし、アマチュアのボートレースも存在する。


▲写真左:インフォメーションでは、各種の案内をしてくれる。初心者は、まずここでパンフレットをもらい、舟券の買い方から学ぼう。美人のお姉さんもいた。/右:広々とした食堂。定食、ラーメン、カレー、鉄板焼き、たこ焼きなど、メニューも豊富だ。

 舟券は、マークシートに記入して自動で購入できる。入場料が100円、舟券が100円から購入可能と、手軽に楽しめる。無料で配布されている出走表でデータを確認しながら、勝つ船を予想。ここで、選手だけでなく、ボートとモーターにも勝率があるのが面白い。

 2連単(1位・2位を順番通り当てる)、2連複(上位2位の組み合わせを当てる)など、舟券の種類によって、倍率も異なる。いずれにしろ、出場が6艇だけなので、他の公営競技に比べて当たりやすいというのが特徴。


▲写真左:一部のレース場では、ナイターレースも開催している。そのナイターレースを、日本で初めて開始したのが、ここ桐生のレース場。ライトに照らされて揺らめく波など、夜景も見どころ。/右:電光掲示板には、レースの情報が映し出される。

 場内では照明がこうこうと照らされて、夜でも明るい。ちらほらとカップルや家族連れの姿も見かけた。思っていたより明るい雰囲気で、レジャースポットにも向いていそう。


▲写真:コーナーを曲がる選手たち。船の性能差が少ないため、直線で抜くことは難しく、最初のコーナーが最大の勝負所となる。第一コーナーに差し掛かると、場内は歓声に包まれた。

 予選の目玉の第6レースが開始される。筆者は1-2の2連単を買ったが、結果は1位が3番・2位が1番で、惜しくも外れてしまった。しかし、先にボート工場を見学しているため、勝負以外でも楽しめ、文化の日を充実して過ごせたので、良しとしよう。

 そして、バスは新宿まで戻り、ツアーは無事終了した。

感想

 最後に、全体を通しての感想を述べたい。じつは、筆者は、ギャンブルの面があるため、ボートレースに近寄りがたいイメージを抱いていて、レース場に行くこと自体が初めてだった。

 しかし、この日の見学で、スポーツとして奥が深い面があることが分かった。たとえば、競馬のシミュレーションゲームがあるように、ボートレースもゲーム性やエンターテインメント性があると思う。

 勝敗だけにこだわらず、スポーツ観戦やテーマパークに行く気分で、カジュアルに楽しんでもいいかもしれない。それに、ボートレース界にも、イケメン選手や美人選手がいるとのこと。純粋にレーサーを応援してもいいだろう。

 そのように、気軽な参加できるということを、未経験のライトユーザにお伝えしたいと思ったしだいだ。

関連サイト

 この記事を読んで、ボートレースに興味を持たれた方は、下記の情報サイト「ボートレース初心者サイト『ビギナーズボイス』」「みんなのボートレース場体験談(PC/携帯サイト)」を、ぜひご覧頂きたい。


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*1:2010年4月から、公式名称が変更された

*2:ただし、使用するボートとモーターは、抽選で決められる。また、定期的にボートとモーターは新調されるので、そこで差はリセットされる

*3:ボートとモーターはレース場のもの

*4:公正のために試合中の選手は外部との接触が禁止される。たとえばケータイも使えない。また、自主整備がルールで、他の選手は助言はできるが、調整を手伝うことはできない。そのため、ずっと調整に専念するらしい