高城幸司「29歳までにやるべきこと」(ジョブナス)
概要
2010年3月11日(木)、東京・赤坂ガーデンシティの会場にて、セミナー「経験者が語る! 今後の人生が180度変わる、29歳までにやるべきこと」が開催された。
同セミナーは、求人情報サイト「ジョブナス」を運営する、株式会社PR TIMESが主催。セミナーでは、キャリアアップするうえで、20代で何をやっておくべきかが語られた。
転職や起業の志望者、仕事や人生の成功を求める参加者たちで、会場は満員だった。そのような熱気溢れるセミナーの模様をお伝えしよう。
講演者:高城幸司
▲セレブレイン社長・高城幸司氏。様々な有名企業の社長と交流がある。 講演の流暢かつ平易な語り口は、さすがのコミュニケーション力だ。 |
講演者の高城幸司氏は、1986年にリクルートに入社。営業部門で6期連続通期最優秀セールス賞を受賞。
96年に独立・起業情報誌『アントレ』の事業部長・編集長となった。また、創業支援プロジェクト「ドリームゲート」の責任者にもなる。現在、株式会社セレブレインの代表取締役・社長。
1兆円以上の借金を完済したリクルート
プロフィールだけではなく、講演中に語られた、リクルート時代のエピソードもご紹介しよう。
高城氏が経験した当時のリクルートには、バブル崩壊の傷痕が残っていた。なんと約1兆数千億円もの負債*1を抱えていたのだという。これは潰れるだろう、と社内で噂されていた。
しかし、さらに驚くべきことに、1兆円以上の借金を、その後十数年で、ついに完済してしまった。これだけ巨額の負債を完済する例は、前代未聞だ。
この驚異的な高利益体質の秘密は、どこにあるのか? それは、新規事業にある。債務を返そうとして始めた事業は、それまでの事業よりも高収益なのだという。
借金を抱えているから、低コストの事業しかできない。だがむしろ、それこそが、高利益の事業を生み出す原因となる。ピンチをチャンスに変えたわけだ。
そのような当時の新規事業の立ち上げに関わり、現場の第一線を駆け抜けてきた高城氏だからこそ、語られる言葉も重みを持つ。
今や大企業でも倒産する、激動の時代。何が起こっても、どんな会社でもやっていくには、自分自身の鍛錬が必要となる。そこで、20代に必要な6項目を挙げた。
講演内容:20代でやっておくべき6つのこと
20代で養うべき、対人力の基礎
- 新規事業
- 人脈
- 営業力
- 多様性
- 教養
- 発信力
講演で語られた「20代でやっておくべき6つのこと」は上の6つ。高城氏が営業マンだったこともあり、どれも人間が関係するものだ。
技術職にとって関係ない話かといえば、たとえばSE(システム・エンジニア)などでも、対人力は必須だろう。
どれも人間のコミュニケーションのベースを築くものだ。では、気になるその中身を、ひとつひとつ見ていこう。
新規事業
20代のうち、会社にいるうちに、新規事業を考えておくことは、後の展開に有利になるという。たしかに、起業してから考え始めるのでは遅いだろう。それに、年齢を増すと、考え方が保守的になりそうだ。
実はこうした企画力は、営業力とも関係があった。いつも面白いアイディアを出す人間には、それを周りが聞きに来る。高城氏は、新しい事業を興すときに、役員に呼ばれて意見を聞かれたという。
「若いうちは仕事が報酬」「(成功した事業も)『やらないか』と声を掛けられてやった。自分では思ってもいなかったことだった」「来た仕事にヒネリを効かせる」「100個考えると1個くらいは当たる」「小さく産んで、大きく育てる」など、高城氏の経験に基づいた、アドバイスも寄せている。
人脈
人脈を形成する上で大事なことは、若手のうちに社長に会っておくこと。高城氏は、自分が社長になってから、社長達と話したことが活きているのだという。
「同じ人と2回会うこと」も大事だと語る。集まりなどで偶然会うだけでは、1回きりで終わってしまう。
(特に社長と)2回会うためには、会うだけの価値が必要だ。それを相手に提供する努力が大切だと、高城氏は強調した。
営業力
もし年を取ってから、それなりの地位についたとして、社外の人物と会う機会が多くなる。また、年を取ると、プライドが高くなる。そのため、営業力を伸ばすのも、若いうちだという。
営業力は、「伝える力」と「聞く力」の両方で構成される。一方的に主張しても受け入れられないし、相手のいいなりでも目的を達成できないからだ。
さらに、聞く力というのも、ただ雑談を聞き流すようなことではない。相手の欲しい価値を洗い出すことが重要になる。
多様性
高城氏は、社内の他部署の人間と、交流を持っていた。これが普通なら、同僚か友人だけでつきあう、ということは多いのではないか。
異分野の人間とのつきあいがあると、会社の全体像が見える。これが独立時に役立つ。そして、同年代のライバルを見つけることも、刺激になる。そこで、定期的な交流会を開き、お互いに近況報告することを推奨した。
自分より年配のメンター(指導者)を持て、とも高城氏は助言した。「上を避けて横だけでつきあう」というのも多そうだが、それでは交流の幅を狭めてしまう。
教養
高城氏の趣味は日本酒をたしなむこと。学習院大学で利き酒の講義も行なっている。ソムリエの田崎真也氏が、酒の師匠だ。
そんな高城氏は、若いうちに教養を養うことを勧める。もちろん、仕事で忙しいかもしれないが、気分転換でストレス解消になる範囲で、ワンテーマで趣味を持てという。
ただし、たとえば食の趣味を持つとき、単にたくさん食べるだけではダメだという。もしイタリア料理が好きだったら、その料理について詳しくなり、さらにイタリアの文化まで興味を広げたい。
そこまでいけば、趣味は教養になり、コミュニケーションの話題となる。これを高城氏は「マジメに遊ぶ」と表現した。
発信力
自分が情報番組のコメンテータになったところを想定し、どんな質問にも答えられるよう、日頃から発信力を高める訓練を積んでいるという高城氏。
情報発信すると自分のことを知ってもらえるため、ブログなどを書くことを勧めた。ただし、ブログが「炎上」しないよう、言葉は選ぶ必要がある。
感想
筆者の感想を述べると、全体的に「無理」がない話だと思う。ひたすら無理をして頑張れ、という中身のない精神論ではない。ささやかな工夫と努力で、頭ひとつ抜けて、微差が大差に結びつきそうなものだ。
今回は営業中心の話だった。筆者はライターをしている関係で、人に会うことの重要性がよく理解できる。多くの人に会い、百人単位で人間を見ると、長所にせよ短所にせよ、人の個性が明確に見えてくる。照らし返して、自分の個性も見えてくる。
個性だと思っていたことは、一人だけなら誤解かもしれない。個性だと思ったことが、世にありふれていることは、よくあることだ。しかし、百人単位で対比すると、違いがハッキリと浮き上がってくる。
講演では特に「多様性」の箇所で、社内の他部署の人間とつきあう社交術に、なるほどとうなずかされた。
日本人は、同質な人間で固まりがちだ。多様な人間と接することは、営業力ばかりでなく、他者の発想を取り込むことで、企画力にもつながるのではないか、と筆者は捉えている。
さて、すでに次回のセミナーの開催も予定されているようだ。このレポートで書ききれない、こぼれ話もたくさんあった。それに、実際に生の声を聞くと、刺激を受ける。受講を希望する方は、下記から申し込んで頂きたい。
リクルートが起死回生した話が印象に強く残った筆者としては、今後の講演テーマで「企画」や「起業」も、ぜひ扱って欲しいと思う。
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「ジョブナス」は、転職情報サイトだ。「サイトオンボーナス」という、転職時にボーナスが支給される。詳細は、以前の紹介記事を参照して頂きたい。
講演者著書
講演の最後では、来場者に講演者著書が、何冊かプレゼントされた。高城氏は、社内論文で最優秀賞に表彰された本を出版。それ以後、40冊以上の著書を上梓し、累計50万部の売り上げを誇る。その一部をご紹介しよう。
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