涼宮アリーナの憂鬱
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「ただの人間には興味ありません。この中に勇者、魔王、天空人がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
アリーナ姫は喧嘩でも売るような目つきでゆっくりとエンドールの闘技場を見渡し、最後に大口開けて見詰めている俺をじろりと睨むと、にこりともせず対戦相手に身構えた。
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「ブライ殿は姫にお仕えして、すでに長いと思いますが――今、お歳はいくつで?」
「禁則事項でぇす☆」
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それはどこからどう見てもバニーガールの衣装なのだった。
スレンダーなくせして出ているところが出ているアリーナ姫とチビっこいのに出るべきところが出ているブライ殿の組み合わせは、はっきり言って目に毒だ。
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「と言うわけで、調達に行くわよ」
「調達って、馬車を? どこでですか。馬小屋でも襲うつもりですか」
「まさか。もっと手近なところよ」
ついてきなさい、と命令された俺とブライ殿を引き連れてアリーナ姫が向かった先は、ホフマンの宿屋だった。なるほど。
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そしてアリーナ姫は、いきなり勝ち誇った声で言った。
「あたしたちSOS団は、モンバーバラの劇場で演劇をおこないます!」
・製作著作……SOS団
・総指揮/総監督/演出/脚本……アリーナ
・主演女優……マーニャ
・主演男優……勇者
・脇役……ミネア、ブライ*1、ライアン、トルネコ
・助監督/大道具/小道具/照明/荷物運び/小間使い/パシリ/ご用聞き/その他雑用……クリフト
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――サントハイム城は静寂と薄闇に支配されていた。閉鎖空間。アリーナ姫と俺の二人しかいない。
「元の世界に戻りたいと思いませんか? 一生このままというわけにはいかないでしょう」
「んー、なんかね。不思議なんだけど、全然そのことは気にならないのね。なんとかなるような気がするのよ。自分でも納得できない、でもどうしてだろ、今ちょっと楽しいな」
「SOS団はどうするんですか。姫様が作った団体でしょう」
「いいのよ、もう。だってほら、あたし自身がとっても面白そうな体験をしているんだし。もう不思議なことを探す必要もないわ」
「俺は戻りたい」
「俺はサントハイム城の連中ともう一度会いたい。まだ話すことがいっぱい残っている気がするんです」
思い出せ。ブライ殿は何と言ったか。その予言を。それからミネアが最後に水晶玉を通じて伝えたメッセージ。「sleeping beauty」。
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*1:さすがに主演女優は無理があった