ラスボスを倒すとラスダンも崩壊する件について

概要

不倒城: 世の中にはボスを倒されると丸ごと崩壊する基地やダンジョンが多すぐる

リスク統制がなってないと思うので悪の組織その他の皆さんには早急な見直しを求めたいと思います。


アニメ・ゲームなどで、敵側のラスボスが倒されると、連動してラストダンジョン(ラスダン)も崩壊する、というよくある約束事についての考察です。

なお、こちらの記事では、主にファンタジーRPGを念頭におきます。RPG一般の類型を元に考えていますが、もちろん個々のRPGタイトルの世界観で異なるでしょう。

考察

拠点破壊が意図的である場合

・拠点の破壊が意図的(拠点設営時に「自爆」が機能として考慮されているような場合)なものである場合。そもそもヤバくなったら破壊しなければならないような拠点を作ることに問題がある。

まず、ファンタジーRPGにおける「魔法(魔導・魔力)」というリソースの特殊な性質を考慮に入れる必要がある。魔法は、いったん使用可能になると、ほぼ無尽蔵に使える理想的なリソースになる。その代わり、代替可能性が低く、誰でも、どんな状況でも使えるわけではない。

魔法さえ使えれば、拠点の再建設にコストはほとんど掛からない。実際、魔王の力で一瞬にして魔王の宮殿が出現するようなシーンというのはありそうだ。とすると、建物の崩壊は気にする必要がない。

したがって、魔王がついカッとなって、勇者を巻き込むためにラスダンを崩壊させるとか、気軽に壊してもさほど問題ではない。さらに、矛盾するようだが実は、拠点破壊には、拠点防衛の意図があるという仮説すら可能だ。なぜそんなことをするのか。

新魔王さえ来れば、新魔宮は魔王の魔力で簡単に再設営できる。となると、人間側に陣地として利用されてしまったり、宮殿内の宝物が人間界に流出したりして、拠点が残るデメリットの方が多いのではないか。見た目が豪華なために、拠点の建物自体が重要だと思いがちだが、実は仮設的な建築物に過ぎない。

拠点破壊が意図的でない場合

・拠点の破壊が意図的でない(ラスボスの力でダンジョンが維持されているとか)ものである場合。意図せずして破壊され得る施設を本拠地にするとか、率直にいって正気の沙汰ではない。

ではそもそも、ラスボスの魔力でラスダンを維持していることの是非はどうか。これについては、やはり魔法リソースの低コスト性を考慮すると、合理的だと思える。

だいたい、魔物は破壊こそ得意とすれ、創造は不得意ではないだろうか。いかにもブチ壊すしか能がなさそうな感じの連中が揃っている。魔力に依存しない建物を建てるなら、まともに土木工事をしなければならないが、魔物を使役して建物を建てるのは効率的でない。

したがって、魔力で維持する方が合理的というわけだ。ただし、人間の拠点を奪って再利用するか、人間を奴隷として使役するのは考えられる。その場合、魔王の世界征服が完了するまでの、過渡的な拠点なのかもしれない。

魔王軍の組織論

元エントリでは、魔王に権能が集中し過ぎていることを問題視していた。最後にそれついても考えよう。これもリソースの違いによって説明したい。

まず、魔物側は人間側より、能力格差が大きい。序盤の魔物のHPが10、魔王のHPが10万、と一万倍も離れていることも珍しくない。そして、魔界は裏切りが日常茶飯事でもおかしくないし、そもそも魔物同士の意思疎通すら満足にできないこともありそうだ。

すると、世襲したとか、民主的に選ばれた、というトップはまずありえないはずだ。魔物側の秩序は、力の秩序でしかない。人間の組織ほど、トップの代わりが利かない。

したがって、魔王の権能は、少なくとも人間の組織ほど、委譲できないのではないか。先に述べた力の秩序と魔法の属人性の高さを考慮すると、委譲した者が弱ければ、結局言うことを聞かなそうだからだ。

というよりそもそも、組織に執着する必要が薄そうだ。魔物を召喚するシーンはよくあるので、人的(魔的)リソースを気にしなくて構わない。新魔王はすぐ新組織を作れると考える。したがって拠点同様に、組織すらも過渡的なもので構わない。

従っている魔物は、そのような組織で構わないのか。これについては、おそらく困らないだろう。無生物系モンスターは元から思考しないだろうし、動物系モンスターは野生でも生きられそうだし、悪魔系モンスターは魔界に帰って百年過ごすといった身の振り方もできそうだ。

結論

ここまで見てきたように、一見して不自然なように思えた、魔王軍における拠点や組織の位置づけも、魔法というリソースの特殊性を考慮すると、実はそれなりの必然性を持つ。

皮肉なことにむしろ、拠点だの組織だのに固執しなければならない人間側が、ある面では不自由だとすら思えてくるのである。というよりそもそも、人間が魔法を夢想するのには、自由への憧れがあるかもしれない。