イベントリポート「NEC Lui ブロガーミーティング」

概要

2009年8月29日(土)、都内の「ホテルフロラシオン青山」で、「NEC Lui ブロガーミーティング」を、NECが開催した。同イベントは、同社が提供する「PCオンデマンド」というコンセプトと、それを実現した「Lui シリーズ」のPCについて、理解を深めるため、ブロガーを招待して行なわれたもの。

PCオンデマンドとは、デスクトップPCを自宅に置いたまま、軽量なPCリモータで外から遠隔操作すること。これにより、ネットブックの弱点であるスペック不足の問題を解消できる。さらに、ノートPCとデスクトップPCの間でデータをやり取りする手間や、情報が紛失するリスクもない。

そのPCオンデマンドに対応しているリモータ・サーバの両PCがLui シリーズだ。7月に発売されて注目を集める新型の「LaVie Light Lui」モデルは、PCオンデマンドのリモータの機能に加えて、通常のネットブック同様、オフライン時にもスタンドアローンで動作する。なお、ボードを増設することで、他社製PCもサーバにできる。

イベントでは、「関東地方 あしたのお天気(TBS)」「BSフジ競馬中継(BSフジ)」などで活躍されているフリーアナウンサー西島まどかさんと、NEC・担当者との対談や、実機を使った体験会が催された。さっそく、そのときの模様をお伝えしたい。

レポート

Lui の紹介

イベントのはじめに、NEC・担当者の田中氏が、Lui を改めて紹介した。同氏はまず、Lui 誕生の背景にある、市場動向を解説する。

  • Lui の背景にある市場動向
    • デジカメ・液晶TV・PCモニタ・Web動画といった映像環境の高画質化
    • WiMAX」(高速モバイル通信)に代表されるインターネットの高速化
    • ムーアの法則」で言われているようなPC・CPUの高性能化
    • ノートPCの高性能化・軽量化の二極化

以上のような動向が観察されるという。これを踏まえて田中氏は、Lui シリーズの魅力を説明する。要約すると、軽量なノートPC(ネットブック)と高性能なデスクトップPCの良いとこ取りをして、高性能なCPU・高速なネット・高画質な動画が、自宅外でも手軽に利用できるようになる、といったところ。

さらに、セキュリティ面での利点を強調した。田中氏が挙げた例は次のようなものだ。たとえば、学校の先生が、生徒のテストなどを家に持ち帰って採点しようとして、そのデータが入ったノートPCを紛失すると、情報流出で大問題になってしまう。

しかし、PCオンデマンドなら問題ない。リモートになるPCを紛失しても、デスクトップにあるデータは失われないからだ。たしかに、国民の情報管理に対する意識が高まり、情報流失によって懲戒処分もありうる現状では、うなづける利点だろう。

また、Lui シリーズの利点や利用法を示したデモンストレーション動画が流された。その動画はYouTubeで現在公開されているので、この記事の末尾を参照して頂きたい。

トークショー

NECパーソナルプロダクツ株式会社の田中昇氏

スペシャルインタビュー アスキー総研所長 遠藤諭氏に聞く

次に、ゲストに招かれたフリーアナウンサー西島まどかさんと田中氏とのトークショーが行なわれた。西島さんはデビューしたての頃から、Lui シリーズのレポーターとして関わってきた経緯を持つ。

対談では、先に行なわれたアスキー総研所長・遠藤諭氏と西島さんとの対談の内容を交え、「クラウド」(ネットワーク経由のサービス利用のこと)とLui シリーズの関連性について触れた。


西島さん:クラウドとLui は、どのようにリンクするのでしょうか。
田中氏:「Gmail」も広く言えばクラウドです。家ではなくWebにメールがあるわけですよね。PCオンデマンドもそれと同じです。ただ、データの元がWebではなく家にある点が違います。遠藤氏の仰った「マイクラウド」ですね。


田中氏は、そのような新概念を表現するため、「PCオンデマンド」という言葉に行き着くまでに、相当な試行錯誤をしたらしい。そして、製品の販売に関しても、先駆者ならではの苦労があったようだ。


田中氏:20〜30年前に、家電量販店でパソコンを売ろうとしたら、周囲から大反対されます。営業マンを通さない、今のような売り方は考えられなかった。PCオンデマンドについても、同じようなことを言われました。
西島さん:サラリーマンの汗と涙が感じられるお話です(笑)。


田中氏の興味深い開発秘話と、西島さんの華やかなトークが、和やかな雰囲気で進行した。トークショーの最後では、参加者から事前に寄せられた質問を、西島さんが読み上げて田中氏が回答することに。


西島さん:Lui に用いられた技術は、昔からあったのでは?
田中氏:技術的にはありました。有名なところでは、マイクロソフト社の「リモートデスクトップ」と同じです。でも、決定的に違うのは、お客さんが誰でも使えるようにしたこと。(既存の技術は)初心者にはハードルが高いのす。
西島さん:(既存の技術と)差があるということですね。
田中氏:そうです。たとえば、サーバは「つけっぱなし」じゃなくていいんです。PCを消せないのは、ふつうの(コンシューマの)お客さんには辛い。

西島さん:初心者でも使えますか?
田中氏:YES。メールをセットアップして使える人なら大丈夫です。

西島さん:WiMAXは?
田中氏:対応しました。

西島さん:海外では?
田中氏:インターネットができれば、使えます。

西島さん:(PCオンデマンドは)どの程度使えるものですか?
田中氏:それは……これから、「タッチアンドトライ」で、実際に試して頂きましょう!

Lui タッチ&トライ(体験会)

体験会では、Lui の実機が用意され、実際の動作を試せる*1。筆者も、実際に体験した。

体験した感想としては、まず接続が意外に簡単だった。パスワードを入力して待つくらいで、特に難しそうな部分は見受けられなかった。それから、回線が遅いと生じる、操作の引っかかりのストレスが、ほとんど感じられなかった。

これには、マウスポインタをあえて同期せず、サーバ側のポイントをリモータ側に合わせる疑似同期によって、反応の遅延を感じさせない工夫があるようだ。地味な工夫だが、体感上の効果は大きい。

また、デスクトップの画面を縮小してリモータに表示するため縦が広い。ちなみに、画面は縮小せずに、1対1で表示するなど、モードを自由に選べる。

下写真で分かるように、リモータはコンパクト。なお、写真から分からなくて申し訳ないが、YouTubeの動画がスムーズに動いていた。*2


▲高性能なサーバ側のPC(右)と、小型なリモータ側のPC(左)

▲パスワード入力だけでカンタンに接続できる。

YouTubeで動画を試聴。デスクトップを置き、街へ出よう!

▲Lui は、PC同士が離れていても通じ合う、遠距離恋愛のようなもの!?

質疑応答

イベントの最後では、会場から寄せられた質問に、NECの担当者が答えた。


質問:データ紛失・流出、ハッキングの心配はないでしょうか?
回答:端末が失われても、本体のデータは紛失しません。端末を拾っても、パスワードがあるので、流出しません。セキュリティについては、VPN(仮想プライベートネットワーク)で暗号化しています。

質問:(PCオンデマンドは)他社のPCでもできますか?
回答:(PCIスロットに)ボードを刺せばできます。取り付け作業は簡単ですが、販売店から買った場合は、有料サポートもあります。

質問:回線速度について。
回答:3Mbpsは欲しいところですが、家の中なら(無線LANなどで対応できるので)大丈夫でしょう。外では、ホットスポットがあれば(一部の古いADSLがある店舗を除いて)大丈夫です。

質問:他社で同種の製品が出てくるのでは?
回答:ボードの部分などに手間が掛かっておりまして、すぐには追随されないと考えております。でも、売れすぎれば(マネされるかも)……(笑)。

質問:「Windows7」には対応しますか?
回答:(おそらく出さざるを得ないだろうから)Windows7が出たときに、対応するつもりです。

質問:PCオンデマンドの互換性は維持されますか?
回答:(別時期に販売されたリモータとサーバを)つなげなくするような予定はありません。少なくとも、直近ではありません。


そして、西島さんが締めくくりのあいさつをして、無事終了となった。

西島さん:ブログをしている身としては、Lui もそうですが、皆様のブログを参考にさせて頂きたいと思います。本日はありがとうございました。

コラム「私が考えるPCオンデマンドの利用法」

ここからは、レポートではなく、筆者が考えるPCオンデマンドならびにLui シリーズの利点・利用法を書きたい。「技術が進歩したらこういうことができるのではないか」という、希望的観測がかなり混じっていることをお断りしておく。

まず、デスクトップとノートを持っていれば、普通ならその両方を買い換えていく。それに対してLui では、リモータの端末はそのままで、本体のデスクトップのみ買い換えていくと、長期的にはコストが抑えられるのではないか。しかし、これは途中で互換性が崩れれば成立しない。そこで、質疑応答で実際に伺ってみたところ、規格の対応をなくす予定はないとのこと。

またこれは以前にも書いたが、PCゲーム・オンラインゲーム・フリーゲームをプレイするための、携帯用ゲーム機に近い使い方もアリだと思う。現状でMMORPGは厳しいが、今よりも回線が太く、かつ端末が小さくなったら、より現実味を帯びるだろう。

現在、ボードを増設する形で、他社製PCにもサーバ機能を実現できる。もしこれが、サーバもクライアントもソフトウェアのみで成立すれば、相当に便利そうだ。加えて、ソフト自体は無料で配布して、別の何かで収益を挙げる形にしたら、スムーズに浸透していくと思う。

そしてサーバについて、自分で所有するものだけでなく、外部から提供できないだろうか。そうすれば、自宅に大きなデスクトップを置く必要もなくなる。セキュアな環境にあれば、本体の置き場所は関係ない。ソフトかサーバのどちらか一方が無償(かそれに近い廉価)というのは、いかがだろうか。

イベント全体の感想について、まず、田中氏の「言葉はすごく大事」という発言には、全く同意する。特にIT関連の製品は、理解や使用に時間が掛かる(にも関わらず陳腐化のサイクルは早い)、という厄介な性格がある。だから、情報が非常に重要になる。これは、筆者がライターをしている、ゲームについても当てはまるだろう。

結び

そのような面もあり、今回のイベントで、情報提供の場が設けられたのは、非常に有意義だと感じました。「PCオンデマンド」は、非常に画期的なソリューションなので、この魅力が広く伝わって欲しいです。イベント関係者の方々に感謝いたします。

▲記念撮影した、西島まどかさん(右)と、当ブログの天野年朗(左)


[PR by ブログタイムズ]

*1:ただ、会場がWiMAX圏外であったり、通信関連で多少試せないところがあったのは残念

*2:他にも色々試してみたかったが、時間の関係上、動画だけ見ることにした