株式市場は再分配するか?

発端

株式市場は、パチンコ屋のゲームバランスが適正なんじゃなかろうか - 世界のはて

色々誤解があるのですが、発想が興味深いエントリです。

株式市場は再分配するか?

  1. 金持ちが株式を買う。
  2. 企業に金が流れ込む。
  3. その企業の金を労働者が労働を通して受け取り、
  4. 労働者の生活によりモノが売れる。

という循環があるわけで(たぶん)、株式市場は、浮いた余剰資金を実経済に戻す再分配の機能を担っていると思うのね。

株式市場・株式資本に、労働者へ金を流す再分配機能というのは、基本的にありません。むしろ、労働生産によって企業に生じた利潤が、投資家へ配当などの形で流れていきます。

つまり逆です。「再分配」という言葉が何のイメージを担っているかですが、金融市場によって資金がだんだん均等にならされていくことなら、それはありません。

むしろ、金があるところに金が集まります。これは、聖書の「富める者はますます富み」という言葉からマタイ効果と呼ばれます。システム論的には、正のフィードバックですが、ランダムウォークのモデルもあります。

投資・投機ですから、わざわざ潰れそうなところに金を出す人はいないでしょう。そもそも「東証一部上場企業」という時点で、かなり有力な企業なのではないでしょうか。

信長の野望で考える金融市場

ゲームでたとえると、歴史戦略SLG信長の野望』は、金・米・兵などの資源が増えると、国が大きくなって、ますます資源が集まって、余裕で勝てるバランスを経験するでしょう。

信長の野望』の世界に株式があっても、やはり強い大名に金が集まるのではないでしょうか。すぐ滅びそうな姉小路に虎の子の資産を預けないでしょう、常識的に考えて。

だから、資金配分・資源配分が偏ってしまうために再配分が必要なのだとしたら、基本的に市場の外部から政府が再配分する必要があります。

たとえば、累進的な課税は所得を再配分します。問題は、公共事業などはあまり再配分になっておらず、利権化によってむしろ搾取になっていることです。

利権化しない再配分の方法には、消費税を財源にしたベーシックインカムはありうるかと思います。月額1〜2万の少額から始めれば財源的には可能でしょう。政治的には無理かもしれません。

会社は株主のもの

なんか最近、日本企業は株主を優遇する方針のところが多いみたいだけど、株主の利益が大きくなりすぎると、株式市場の再分配機能は機能不全を起こしてしまうのではないか。

株式会社は株主のものです。社長のものではありません。社長という役職はあだ名のようなもので、その実体は(代表)取締役ですが、取締役(会)は株主(総会)が決定します。

本来、株主が主で、社長は取り締まる役です。ただ実態としては、社長が筆頭株主を兼ねている場合も多いのですが、この場合も形式上は社長と株主は別の存在です。

社長らの取締役が内閣(総理大臣)だとすれば、総会は国会(議員の投票)にあたります。しかし、日本の株主総会は、総会屋のシャンシャン締めで形骸化しています。これでは、国民不在の政治のように、株主不在の経営です。

だからむしろ、日本では株主が優遇されていません。社長たちのものにしてしまうのは私物化なのです。そのことが海外の投資先から閉鎖的であると問題視されています。

株式市場とパチンコ

株式市場がパチンコ屋と同じような神バランスになり、金持ちがそれと気付かぬうちに下流に進んで金を落としているような仕組みが出来れば、金持ちと庶民でwin-winの関係が構築できて、良いんじゃないかと思う。

実際には、ギャンブルで下流が進んで金を落としているわけです。もし上記のように、株で儲からない仕組みを作ったとして、上流の資金は別の投資に向かうだけでしょう。

いや、日本全体で投資をパチンコ化したとしましょう。そのときは海外ルートの投資に金が回ると予想されます。だいたい現在でも様々な形の海外への資本移転が問題になっています。

いやいや、何もかも規制したとしましょう。とにかくあらゆる投資は儲からない。しかしその場合、金利はゼロより下がらない法則があるように、インフレリスクが上回らない限り、単純に現金で持つのが最適解です。

ちなみに、元記事の参照記事で、年収の上限を決める案がありましたが、それだとその年収額を上回ったら海外へ移転します。また経営者の場合、給与を抑えるかわりに会社経由で何とかするように思われます。

理想のゲームバランスを実現するには

このように元エントリのアイディアには色々問題があります。しかし、極端に偏らないゲームバランスが必要だという根本の思想には同意します。

そのとき、株式市場をパチンコ化するより、シンプルに寄付する仕組みを作ったらどうかと考えます。海外では寄付で設立された大きな組織があります。

資本家も人間なので、死ぬ間際には金を増やす意味がなくなります。そのとき金より名を残したいでしょうから、税制で優遇して、教育関連などへ資金が回るようにすればよいでしょう。

例えばの話ですが、Masao_hateさんがゲーム会社の社長として大成功したら、ゲーム専門学校を設立しよう、みたいなことです。

また、コンテンツ・ファンドには可能性があるかもしれません。ゲームではときメモファンドがありました。たとえば試写会・試作会などのイベントに招待されるなどの優待によって、投機目的よりファン寄りのファンドというのも可能でしょう。

儲け方ではなく使い道を賞賛・批判せよ

最後に一つ。私は以前から生産論から消費論への転回ということを言っております。どういうことか。

かつてホリエモンの成金ぶりが叩かれましたが、儲けた段階で嫉妬によって批判するのではなく、使う段階で使い道(あるいは使わないこと)を批判すべきです。

ネットでは無償の行為が賞賛されて、それはそれでいいのですが、投資が賞賛(批判)されて、投機目的だけではない有意義な投資が行われるようにならないかと思っています。

成金は成金趣味で、服や家を金ぴかにしますが、あれはださい。金をつぎ込んでこんな組織や人材ができていった、という部分をリスペクトすることによって、そちらに金が流れていくべきです。

俗な興味は偏差値的な年収だけに注目します。しかし、いくら稼いでも下らないことに使うとバカにされる、コミュニケーション・バランスになればいいと思います。

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