なぜニュースサイトはアクセスが多いのか

まえがき

各種ランキングを眺めると、上位に入っている個人サイトは、大雑把に言ってテキストサイトより(羅列型)ニュースサイト*1の方が多い。そこで、なぜニュースサイトはアクセスを集めやすいのかを考える。

テキストサイトvsニュースサイト

まず、更新量が多い。ニュースはネタ切れの心配がないので更新も安定しており、サイトが長続きするのも平均を上げる理由だろう。更新一回辺りで考えれば、例えばイラストサイトもかなりアクセスが多いジャンルだと思われるが、単純にカウンタの数だけで考えると、やはり毎日更新するニュースサイトの方が有利である。イラストサイトもブログや絵日記で毎日更新するタイプは多くなる。

次に、ニュースサイトはニュースサイトを紹介する。紹介というのは、サイドバーに入っていたり、情報の入手先として併記されることを指す*2テキストサイトもイラストサイトもニュースサイトを紹介する。「○○に載りました」と、紹介されたことを紹介したりする。またテキスト・イラストサイトと異なり、リンク先に読者を誘導するので、アクセスランキングやリンク元の表示によってアクセスを返される。

しかも、ブラウザのブックマークに入る。ブログでRSSの全文配信から購読した場合カウンタが回らない。SBMでクリップしただけでは、そのブログが毎日読まれる場合が少ない。users数を稼いではてブ・はてダ・はてなのトップページ全てに出ても、まだ大手ニュースサイトが流すアクセスの方が全然多い。現状の個人サイトではWeb2.0がカウンタをあまり回さない。

今まで述べてきたようなことは既出だろう。それを踏まえて、更に考察を進める。よく、羅列型ニュースサイトは機械に置き換えられるという趣旨の主張を目にする。例えば、RSSリーダが登場したから無意味になったのだという。述べたようにアクセスはまだニュースサイト経由の方が多いが、それはネットのリテラシーが低い過渡期の既得権益的なもので、徐々に移行していくものだと解釈される。

だが、ここではそうは考えない。

RSSリーダvsニュースサイト

RSSリーダを使えば、例えば数百件の登録先から数千件の記事を並べることができる。ニュースサイトの管理人がどんなに頑張って更新しても、人力では及ばない。だが、先に述べたようにアクセスはニュースサイトの方が多いし、私自身RSSリーダよりニュースサイトを読んでしまうことがよくある。なぜか。これには、やはり「人間が手作りでやっている感」を求める心理もあるだろう。一行コメントもある。しかし、単純に情報の質が高いと考える。しかも、それは個々の管理人を超えたニュースサイトの情報ネットワークにある。どういうことか。

  • 大ニュース
    • 中ニュース
      • 小ニュース

上記のように単純化したモデル*3で考えよう。小規模ニュースサイトは、100サイトのテキストサイトなどの記事を読んで、そこから選択して載せる。中堅ニュースサイトは、100の小規模ニュースサイトの記事を読んで選択して載せる。大手ニュースサイトは、100の中堅ニュースサイトの記事を読んで載せる。そうすると、大手ニュースサイトの記事は100×100×100=100万記事から選抜されているので、非常に高品質*4なのである。

RSSリーダの数千件は、この階層構造による自然淘汰のシステムがないため*5、勝っているのは量だけだ。実際すぐ未読がたまってしまうし、無理して読んでも思ったほど面白くなかったりする。ここでPlaggerはある。これは普通のRSSリーダよりはるかに強力だ。しかし、その情報の取得先はやはり大手ニュースサイトだったりする。RSSリーダ単体の数千件よりも、ニュースサイトネットワークの潜在的な数百万件の方がはるかに広大だ。だから、ニュースサイトはアナログだがハイテクなのである。

ソーシャルブックマークvsニュースサイト

では「集合知」を売り物にしているソーシャルブックマーク(SBM)はどうか。これは大勢の投票機能がある*6。しかし、はてブのホットエントリなどを見ていると、実はニュースサイトより身内の話題が多い印象がある。「id○○がid××をDisった」のように。

これは、例えばコメントによる掲示板的側面があることや、ブクマを保存できるので個人的動機が強いなど、色々な原因が考えられるだろう。とにかく、個人ニュースサイトよりモダンに情報が得られるかと思ったら、かえってテキストサイトの閉じた輪に先祖返りしていたりする。歴史が素朴に直線的に進歩していくとは限らない。

あるいは、はてブの各人のページが、個人サイトを公開するのだという意識を強く持つなら、既存のニュースサイトに、追いつき追い越していくかもしれない。だが現状だと、「これはひどい」のタグをつける場合などは、ニュースサイトより2chに近いノリだったりする感が今ひとつ拭えない。

まとめサイトvsニュースサイト

最後に、まとめ形式のニュースと比較してみる。まとめ形式(テーマがある)と羅列形式(毎日の時系列)という違いはあるが、ある意味ニュースvsニュースという同種の対戦になる。

私は当初、カテゴリ・ジャンル・テーマの統一性があるところに、羅列型に対するまとめ型のニュースの情報集約の優位性を見ていた。しかし、既存の羅列型ニュースサイトは、先に見てきたようにニュースサイト同士のネットワークを持っている。だから、まとめが羅列と対等に勝負できるようになるには、まとめを互いに参照し合うネットワークが必要になる。

これは私としては、先入観と逆の結論が出たのが興味深い。私は最初のうち、まとめが流行しだしたら、すぐ水脈を掘り尽くして、枯れてしまうのではないか、と危惧していた。しかしそういう独占的な図式ではなくて、逆に色々なサイトがまとめている拡がりが出てくることで、使えるようになっていくのかもしれない。「YouTubeに流れることでかえって売れるようになる」的な何か。

ではまとめサイトネットワークはどういうものになるのか。私がまとめ記事を書いているうちに、いくつかメタまとめ的なエントリが出てきた*7が、ブクマ数も伸びないし、まとめの水脈を枯らす力は全然持っていなかった。それはなぜかというと、実は「まとめのまとめ」ではなくて、「まとめの羅列」だからだろう。例えば「PCまとめ」と「健康まとめ」とか、全然違うジャンルのものを一緒にして、さあこれをブクマすれば一網打尽、ということにはならない。先のニュースサイトの階層構造を適用すると、理想図は下のようになる。

  • 大テーマ
    • 中テーマ
      • 小テーマ

あとがき

まとめ理論を考えているうちに、そもそも既存の羅列型ニュースが、なぜアクセスを集めているのか気になって考察してみたのだが、こうして見てみると、羅列もまとめも、エントリ自体はただニュースを並べるだけなのだが、意外と奥が深いのが面白い。単調作業だからレベルが低いとか、機械が人間より勝っているとか、羅列だから散漫だとか、こうした漠然とした先入観を振り払ってよく観察すると、実はある種の合理性を持っていることが分かる。

*1:ここでは最近盛んなVIP・2ch系ブログは転載型と分類するが、自分で記事を書かない点でやはりニュースサイトだろう。また動画紹介系についても、羅列がリンクから動画貼付に変わっただけで、基本的に同じ形式と見る

*2:特に大手ニュースサイトが巡回しているニュースサイトは、そのサイト自体のアクセスは少なくても、そこを経由して大手ニュースサイトで紹介される、確率変動のチャンスがある。これを私は「旗本」ニュースサイトと呼んでいる

*3:もちろん現実はもっと複雑な関係だろう。例えば小ニュースが大ニュースを参照するなど、一方向的とは限らないし、経由する際の記事の重複もあるだろう

*4:ただし多くは専門的なことではなくネタとして面白いというようなことだが

*5:最初に登録する時点で濾過されてはいるが

*6:ここで、2chの「age」も一種の投票と捉えられ、「集合知」を先取りしている

*7:もちろん、「Saafまとめ」などまとめ系サービスやまとめサイトは既に存在する